発見された地球。それは恩人である勇者の母星だった。なぜか起こった攻撃。両者は手を繋ぐ道を模索するにゃ。

久遠 れんり

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第四章 世界は戦乱へ

第35話 まだまだぁ

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 じいちゃんは、崩れた所を見に行った。

 杏だが、現在のシステムにリンクしている為、船には連れて行けない。
 テントを張り、中で脱がして、塩をまぶしてみる。
「黒い霧が出ない。駄目だな」
「それは…… それなら、入った所。お尻から光魔法で浄化する?」
「脱がしたし、まあ良いか」
 シーヴとアデラに足を抑えていて貰い、杏の体内に向けて浄化魔法を流し込む。
 そして、徐々に強さをあげていく。

 ガクガクと痙攣をし始め、口や目。ありとあらゆる穴から、煙が吹き出す。

 あわてて、シーヴとアデラが周りを浄化し始める。

 痙攣はひどくなるが、角がコロンと抜け落ちる。
 爪や、牙も……

 やがて、痙攣が治まり、おとなしくなる。

 治癒魔法で、抜け落ちた跡を治療をして行く。

「まあ、こんな物かな」
 すると、以外とすぐに目が開く。
 目の色も普通に戻っていた。

「あれ、もう終わり?」
 なぜか、そんな質問を投げてくる。

「なんだ? 夢でも見ていたのか?」
「あーうん。なんか、欲望を解放せよとか、頭の中で声が聞こえて……」
 そう言ったまま、杏は口ごもる。

「受け入れろって。見た感じ聞いてきているのが、息吹だったからつい。限界までの耐久エッチを望んだのよ。受け入れちゃった」
「あー実に、平和でよろしい」

「でー。この粘ついた感じと、かゆいのは何?」
「塩。光希様が穢れを祓うのは塩だと言って、全身にまぶしたの」
「へー」
 そう言っているが、シーヴが写真を見せる。

 角が生え、牙が生え、真っ黒い目と、口から黒い煙。
「格好いいけれど、いまいちかわいくない」
「そうだな」

 そう言って、体はお湯で流し吹き上げる。外は氷点下だが、テントの中でするのは随分無理がある。外に出たときが怖い。湿気がバシバシだと、凍りそうだ。
 素直に体の外に向かい、浄化をすれば良かった。



 地上で何とか杏が落ち着いた頃、杏がなりかけた魔人どもが地下にも湧いていた。

 コンピュータその物は勝手に動いても、管理者は必要だったらしく、結構な人数が光希に向かい攻撃をして来る。

「面倒だな。浄化するか?」
 強力な浄化魔法の光が、周囲全体を包む。

 その強力な光は、柱となって、上空までを白く染める。

「なんか、派手にやってんな。行くか」

 大穴を、ひょいひょいと降りていく。

 すると、炭になった人達だった物が倒れている。
 ただし、爪や角が生えている。

「変化すると、人間じゃ無くなるのか」
 息吹は軽くそう言ったが、それを見て、杏は引きつる。

「もしかして、手遅れになるとモンスターになるの?」
「そうみたいだな」
 フロアごとに、かなりいたようだ。

 光希は、何かに導かれ、下へ下へと降りていた。

 ずっと頭に響く誘い声。

 幾度か体へもぐり混もうと、黒い煙がやって来る。
 当然体の周りには、常時聖魔法のシールドが張り巡らされ、届くことはない。

「来るが良い。力を与え望みを叶えよう」
 そんな事を言ってくる何か……

「さて特に願いなどは無いが、お前が死ねと言ったら、願いは叶うのか?」

 そんな事をぼやきながら、システムの下層へ来ると、大穴が開いていた。

 まるで星の中心にまで届きそうな穴。
 だがそこには、闇が溜まっていた。
 何処までも続く、深い闇。
 見ているだけで引き込まれそうになる。

「これは、力なき者は、魅入られるな」
 単なる大穴に、黒い霧が溜まっているのだが、不思議なことに飛び込みたい誘惑に駆られる。

「ほんじゃあ、まあ。浄化」
 いい加減、幾度も撃って、いい加減疲れてきた。
 周囲魔力を使い、非常に省エネで魔法を使っているが、以外と疲労感が来る。
 魔法は撃つときに、自己の魔力も使うが、その時に何かが抜ける脱力感を感じる。

 実際連発すれば、疲れて動けなくなる。

 少し考えたが、ぶちかます。
「逝けやぁー」
 光が、再び柱となって降りそそぐ。

 息吹達も下っていたが、隙間という隙間から光が湧き上がってくる。
「じいちゃん。連発かよ。大丈夫か?」

 大丈夫じゃ無かった。
「あーだる。腰に来る」
 闇の本体は見た目よりも巨大で、うごめき、這い上がってくるときに、構造物を食い荒らしているのが判った。

「たく。スライムかよ。しかしあれだ。年は取りたくないな。若ければ、三日くらいぶっ続けで放出できたが、二発で終わりか。あーやだやだ」
 そうぼやくと、いきなり逃げ始める。

 それを見たのか、ゆらゆらと表面が湧き上がり、追いかけ始める闇。

「げっ。あの姿で意識体かよ」
 光希はあわてて上に向かうが、やはり無理をすると足腰に来るようだ。
 省エネで最小限の身体強化。

「ちとまずいかな」
 下を見ると、途中にあった床が消えてなくなってきている。

 あわてて走る。
 無理でも何でも走る。
「一人で来るんじゃ無かった」
 その時、上から声と足音が聞こえる。

「バカヤロー来るんじゃねぇ。逃げろ」

 下に向かっていた、息吹達達だが、声を聞いてあわてて止まる。
 息吹の頭に何かがぽよんと当たる。

「じいちゃんだ。やばそうだ逃げろ」
 あわてて、振り向くが、また声がかかる。

「息吹。逃げる前に下に一発撃ち込んでくれ」
「どっちだよ、全く」
 息吹だけ下に向けて走る。

 さっきまでのフロアは、意外と普通だったが、下の階は闇だった。

 光希を見つけて引き上げ、そのまま光魔法をぶっ放す。
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