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第2章 周辺国との和解へ向けて

第27話 佐々木 慶子、ラブストーリーは突然に

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「初めて国外へ出たけれど、どこも田舎だし。野良野盗は出てくるし、散々ね」

 のんきなことを言っているが、慶子達はパリブス王国をすでに出て、メリディオナル王国へ行くために、オリエンテム王国を通過中であった。

 少し時は帰り、再び彼はやって来た。
「佐々木 慶子殿。あなたの仰る通り、我が家の愚行が原因でありました」
 そう言って会うなり、頭を下げるアルトゥロ=パチェコ男爵。

 再び顔を上げた彼の瞳には、わずかに涙が光る。
 再び王に対して、愚を犯さずに済んだ安堵と、それを指摘してくれた 慶子に、多少気持ちが高ぶったものである。

「まあまあ。それが分かれば良かったわ。お疲れでしょう」
 そう言って、慶子は自身の興味に、素直に従う。

 意外とこの世界の人、男も女も、外でだろうが肌を晒すのに禁忌感がない。
 道のすぐ脇。井戸の横で、綺麗な若いお姉さんが水浴びをしていたりする。

 ただ、興味。
 鍛え上がった、欧米系の人の体。
 今まで、父親とか秀明の体しか、まじまじと見たことがない。

 自分の記憶の中で構築された、王子様の裸。
 夢の中で、アルトゥロと秀明の絡みを、想像したことも幾度かある。

 現在、各家庭に設置されているお風呂。
 そこへ、速やかに案内し、慣れていないアルトゥロを、入浴の仕方を教えると言って自ら洗ってあげる。
「泡立たないわね」
 多少文句を言いながら、髪を洗い。お湯を掛けて流すとそこには、オス○ル様かライン○ルト様がいた。

「ふあっ」
 思わずのけぞってしまう。
 もろに、夢にまで見た王子様が目の前に。
 それも、警戒心もなく裸体を晒す。
 その体は、ダビデ像のよう。

 秀明との経験で、多少慣れてしまっていた慶子。
 舞い上がったことにより、これ以上は浮気という意識が吹っ飛んでしまった。
 ただ興味と欲望。つまり好奇心が、慶子を支配する。

 最初は確かに、欧米系の体がみたい。
 そんな知的好奇心だった。
 だが、結んでいた髪を下ろすと、どう見ても夢見た超美形の王子様。

 念入りに、体を洗い。疲れた体をマッサージしたりして、そのでろんとしたモノが多少おっきするところも見た。

 ついに、歯磨きまでしてあげて、どこかの嬢のよう。

 だがさすがに、慶子でも風呂場で襲ったりはしない。
 ゆっくり浸かって貰った後。間近で見ながら体を拭き、バスローブもどきを着せて、ダイニングへ案内をする。

 簡単な食事で、アルトゥロに褒められまくり、さらに舞い上がる。
 秀明は、当然あまり人を褒めるタイプではない。
 ところがアルトゥロは、慶子への感謝が基本にある。それは、気持ちの中で何十パーセントレベルで占めている。

 それが、会いに来た自分に対して、ねぎらい。さらに尽くしてくれた。
 当然評価は上がる。
 アルトゥロ達の回りは、狩猟民族特有の利己主義が多い。
 むろん女性もだ。

 こんなにも、愛おしむ様に自分に尽くしてくれる人は見たことがないし、前回の指摘により、非常に優れた女性であることは分かっている。

 飲まされている、日本酒の勢いもあり。
 アルトゥロが、慶子を求めたのは自然な姿だろう。

「慶子殿。私と国へ来て、妻となって頂けませんか?」
 慶子の手を取り、超美形王子様からの求婚。

 慶子は、とっさに頭の中で考える。

 行政関係、いける。
 アルトゥロの妻となり、知識チートで領地経営。
 領地を切り盛りして、王国内で成り上がり。
 どこかの、ラノベタイトルのような考えが頭に浮かぶ。

 その瞬間。秀明は慶子の頭の中でポイされて、過去の男という記憶の谷底へ突き落とされた。
 そう、同級生と初めての男というだけでは、王子様に勝てなかった。
 もともと、秀明は愛情表現が下手で、多少女性には色々してもらって当然。そんな思いを持つ男子。

 大体同棲をしてしばらくすると、世の男達は女性から、『私は召使いじゃない』と言う言葉を頂く。

 これは家で、お母さんが共稼ぎの忙しい中、旦那はどうでも良いが、子供達には手料理を食べさせたい。偏った栄養では駄目よ。
 そう言って頑張った姿を見せた結果、家庭では女の人が料理をして当然という価値観が出来上がる。
 それでなくても、数十年前には『男子厨房に入るべからず』と言う言葉が実践されていた。

 素直に、自分したことを褒め称え、あまつさえプロポーズ。

 彼女のことは、責められないだろう。

 彼女は、アルトゥロに握られた手に導かれ、唇を重ねた。
 ついでに体も。
 承認欲求と、知的興味を満足させる良い夜となった。

 さて、いざとなると、彼女自身がこの国のVIP。
 抜け出すのは容易ではない。

 アルトゥロの共と一緒に、夜半に逃亡を決行する。
 だが王都では、執拗なオリエンテム王国の間者により、夜間でも警戒はある。
 結果、王都から出るには、慶子の顔により、研究所へ行くだけ。護衛もいるし大丈夫と言って抜け出した。

 そこからは、大きく街道を外れ、山脈側へと迂回をする。
 道中で、狩猟をして飢えをしのぎ、夜間は、山賊や野盗達の火を避けるように道を急ぐ。

 それすらも、慶子の知的欲求を満足させる。

 経験値、爆上がり。
 そう考えて、一人喜んでいた。

 回りの兵達は、必死だったが。

 そうして、今。
 すっかり、周りを囲まれている状況。

 敵は、四方から我らを包囲しております。
 いかがなさいますか?
 そんな脳内アナウンスが、慶子の頭の中で流れていた。
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