集団転移から始まる、非現実な日常。-人間死ぬ気になれば、何とかなるかもな。-

久遠 れんり

文字の大きさ
27 / 55
第2章 周辺国との和解へ向けて

第27話 佐々木 慶子、ラブストーリーは突然に

しおりを挟む
「初めて国外へ出たけれど、どこも田舎だし。野良野盗は出てくるし、散々ね」

 のんきなことを言っているが、慶子達はパリブス王国をすでに出て、メリディオナル王国へ行くために、オリエンテム王国を通過中であった。

 少し時は帰り、再び彼はやって来た。
「佐々木 慶子殿。あなたの仰る通り、我が家の愚行が原因でありました」
 そう言って会うなり、頭を下げるアルトゥロ=パチェコ男爵。

 再び顔を上げた彼の瞳には、わずかに涙が光る。
 再び王に対して、愚を犯さずに済んだ安堵と、それを指摘してくれた 慶子に、多少気持ちが高ぶったものである。

「まあまあ。それが分かれば良かったわ。お疲れでしょう」
 そう言って、慶子は自身の興味に、素直に従う。

 意外とこの世界の人、男も女も、外でだろうが肌を晒すのに禁忌感がない。
 道のすぐ脇。井戸の横で、綺麗な若いお姉さんが水浴びをしていたりする。

 ただ、興味。
 鍛え上がった、欧米系の人の体。
 今まで、父親とか秀明の体しか、まじまじと見たことがない。

 自分の記憶の中で構築された、王子様の裸。
 夢の中で、アルトゥロと秀明の絡みを、想像したことも幾度かある。

 現在、各家庭に設置されているお風呂。
 そこへ、速やかに案内し、慣れていないアルトゥロを、入浴の仕方を教えると言って自ら洗ってあげる。
「泡立たないわね」
 多少文句を言いながら、髪を洗い。お湯を掛けて流すとそこには、オス○ル様かライン○ルト様がいた。

「ふあっ」
 思わずのけぞってしまう。
 もろに、夢にまで見た王子様が目の前に。
 それも、警戒心もなく裸体を晒す。
 その体は、ダビデ像のよう。

 秀明との経験で、多少慣れてしまっていた慶子。
 舞い上がったことにより、これ以上は浮気という意識が吹っ飛んでしまった。
 ただ興味と欲望。つまり好奇心が、慶子を支配する。

 最初は確かに、欧米系の体がみたい。
 そんな知的好奇心だった。
 だが、結んでいた髪を下ろすと、どう見ても夢見た超美形の王子様。

 念入りに、体を洗い。疲れた体をマッサージしたりして、そのでろんとしたモノが多少おっきするところも見た。

 ついに、歯磨きまでしてあげて、どこかの嬢のよう。

 だがさすがに、慶子でも風呂場で襲ったりはしない。
 ゆっくり浸かって貰った後。間近で見ながら体を拭き、バスローブもどきを着せて、ダイニングへ案内をする。

 簡単な食事で、アルトゥロに褒められまくり、さらに舞い上がる。
 秀明は、当然あまり人を褒めるタイプではない。
 ところがアルトゥロは、慶子への感謝が基本にある。それは、気持ちの中で何十パーセントレベルで占めている。

 それが、会いに来た自分に対して、ねぎらい。さらに尽くしてくれた。
 当然評価は上がる。
 アルトゥロ達の回りは、狩猟民族特有の利己主義が多い。
 むろん女性もだ。

 こんなにも、愛おしむ様に自分に尽くしてくれる人は見たことがないし、前回の指摘により、非常に優れた女性であることは分かっている。

 飲まされている、日本酒の勢いもあり。
 アルトゥロが、慶子を求めたのは自然な姿だろう。

「慶子殿。私と国へ来て、妻となって頂けませんか?」
 慶子の手を取り、超美形王子様からの求婚。

 慶子は、とっさに頭の中で考える。

 行政関係、いける。
 アルトゥロの妻となり、知識チートで領地経営。
 領地を切り盛りして、王国内で成り上がり。
 どこかの、ラノベタイトルのような考えが頭に浮かぶ。

 その瞬間。秀明は慶子の頭の中でポイされて、過去の男という記憶の谷底へ突き落とされた。
 そう、同級生と初めての男というだけでは、王子様に勝てなかった。
 もともと、秀明は愛情表現が下手で、多少女性には色々してもらって当然。そんな思いを持つ男子。

 大体同棲をしてしばらくすると、世の男達は女性から、『私は召使いじゃない』と言う言葉を頂く。

 これは家で、お母さんが共稼ぎの忙しい中、旦那はどうでも良いが、子供達には手料理を食べさせたい。偏った栄養では駄目よ。
 そう言って頑張った姿を見せた結果、家庭では女の人が料理をして当然という価値観が出来上がる。
 それでなくても、数十年前には『男子厨房に入るべからず』と言う言葉が実践されていた。

 素直に、自分したことを褒め称え、あまつさえプロポーズ。

 彼女のことは、責められないだろう。

 彼女は、アルトゥロに握られた手に導かれ、唇を重ねた。
 ついでに体も。
 承認欲求と、知的興味を満足させる良い夜となった。

 さて、いざとなると、彼女自身がこの国のVIP。
 抜け出すのは容易ではない。

 アルトゥロの共と一緒に、夜半に逃亡を決行する。
 だが王都では、執拗なオリエンテム王国の間者により、夜間でも警戒はある。
 結果、王都から出るには、慶子の顔により、研究所へ行くだけ。護衛もいるし大丈夫と言って抜け出した。

 そこからは、大きく街道を外れ、山脈側へと迂回をする。
 道中で、狩猟をして飢えをしのぎ、夜間は、山賊や野盗達の火を避けるように道を急ぐ。

 それすらも、慶子の知的欲求を満足させる。

 経験値、爆上がり。
 そう考えて、一人喜んでいた。

 回りの兵達は、必死だったが。

 そうして、今。
 すっかり、周りを囲まれている状況。

 敵は、四方から我らを包囲しております。
 いかがなさいますか?
 そんな脳内アナウンスが、慶子の頭の中で流れていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...