神の都合と俺の都合

久遠 れんり

文字の大きさ
46 / 55
第二章 異世界暮らし

第46話 逃げる魔王

しおりを挟む
「またあの光だ」
 魔王達は、逃げ惑う。

 火と違い、森の中に逃げても容赦なく降ってくる光。

 獣人族のような力押しなら対応できる。
 人間達の道具に対してでも、強靱な体で跳ね返すことができる。
 だがあの光は、少しの隙間から入ってくる。
 魔人族にとって、毒のような物。

「卑怯者め、正々堂々と勝負をしろ」
 そんな事を言い始める。

「おい、どうする」
 などと話し合っている間に、魔王は、後を四天王に任せて逃亡をする。

 獣人国の町に着くと、防具を探す。
 そして見つけた、キンキラキンのフルアーマー。

 そして戦場へと戻る。

 そこには、体中から煙を噴き上げ、それでもなお戦う四天王の姿があった。
 周りの魔人族は、倒され、それでも立ち上がり、人間達に立ち向かう姿に涙をする。

 キンキラキンで戻ってきても、魔王には目もくれない。
 魔王は、涙を流しながら、例の魔法を放つ。

 究極、火焔魔法。

 ノリノリで攻撃をしていた人間達の上に、光が一つ降ってきた。
「まずい。シールド」
 悠人が叫ぶ。

 だが人間は多く、全員をカバーする事が出来ないと感じて、光のすぐ側に分厚いシールドを張る。

 魔王にとって、最強の技。

 周囲はまばゆい光に包まれ、衝撃波遅れて音がやって来る。

 そう、悠人はシールドを張りに行ったとき、壺のような形状で魔法を囲み、出口を魔人族側に向けた。

 魔王の、切り札は魔人族に向けて牙をむいた。

 その威力は強力で、森から木が消えた。
 先ほどまで踏ん張っていた四天王も、撃った本人の魔王も、魔人族の兵達も。
 自らの強力な技で、すべてが吹っ飛んだ。
 本来上空に抜けるはずだったエネルギーまで、すべてを喰らったのだ。

 そうまるで、その場所に隕石でも降ったかのように、地面すらえぐっていた。

「ほう、まるで隕石の落下みたいだな?」
 悠人は平気だったが、周囲にいた普通の人達は急激な気圧の変化で、それどころではなくなっていた。そう、耳から血が流れ、かなりの人数は鼓膜を破壊されたようだ。

 それを見て、治癒魔法の光が舞うことになる。

 惨劇の中、土の中からひっそりと金色の何かが這い出してきた。
 着込んでいた金属が潰れ、体に食い込み、かなり悲惨な状況。
 だが生命力が強いらしくまだ動く。
 それは人知れず、森のほうへと這いずっていく。


 そんな中で、たまたまなのか、生きている魔人族が発見された。
「鬼だ」
「鬼だな」

 ざわざわと周りは騒ぐ。
 実は関わりが少なく、現地の人間でもあまり魔人族と関わったことがないのだ。
 
「怪我をしているし治すか」
 そう言って、少しぐちゃぐちゃだが、おそらくメス個体に修復を掛ける。

 聖魔法の光が当たると、苦しみ始める。
 仕方が無いから、浄化魔法はほどほどにして、治癒魔法を掛ける。
 だが聖属性なために、煙が上がり苦しみながら再生される拷問状態。

 生き残っていた魔人族は、ゲルデ十七歳。
 女の子。
 魔法は強力で多彩。だが、自信がなく引っ込み思案。

 それは親が悪かった。子供の頃から親に馬鹿にされて育ったためだ。
 そう親父さんの求める、一発の力。
 それは弱かったが、まだ子供の頃のこと。当然だが一発一発の力は大人に劣る。

 だが素直だった彼女は、多彩なコントロールと様々な属性を扱うようになった。

 今回神木の異常により大移動をして、その途中で軍の人間に見初められて付いてきた。

 その初となる戦いで、地獄を見ることになった。
 とっさに、土魔法でシールドを創り、その中に潜り込む。
 だが魔法は強力で、壊されてしまう。
 すぐに次をと思ったが間に合わず、吹き飛ばされた。

 だがそんな状態でも諦めず、ガードをして、致命傷は避けた。
 そして、半分地面に埋まっていたところを発見された。

 意識が覚醒をする。
 痛みはない、だが何か……
 体から力が抜けていく。
 根源と言える何かが……

 目を開けると、黒髪黒目の変わった種族。
 その目は、どこまでも暗く、奥の方で似た感じを感じる。
 だから人間だと思わなかった。

 まあ、人間の形を取っているが、前職は死に神。
 ああいや、記憶と力が戻ったから現役か?

 そりゃ瘴気に馴染んだ魔人族、引かれるのも分かる。

 体が治るにつれ、痛みが襲って来始める。
「動くな。まだ途中だ」
 そう言われて、彼女はじっと我慢をする。
 治ったところの痛みがなくなり、今度はむずがゆくなっていく。

「まだ動いちゃだめ?」
 最初は、手足も千切れ、顔も半分すりおろされていた。
 だけど、治ってくると女の子。
 実は治しながら困っていた。

 そこに八重がやって来た。
「どう生きてる? 死んでるなら生き返らせるわよ…… あれ鬼が、美形のダークエルフになったの」
 そう言って、八重は彼女の胸の先を突っつく。

「感覚も大丈夫そうね」
 だが流石に、彼女も胸を隠す。

 服はないので、野営用のマントを渡す。
 八重が服を持ってくるまでだが……

 なかなかの美形。
 いやな予感しかしない……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...