泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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繰り返される苦痛と悟り

第3話 行動あるのみ

 最大の失敗を見られた。

 彼女は、今の状態を理解して、すがりつく男を振る。
「まさか、彼女がお姉さんだったとは……」
 実際には従姉妹なのだが、どうでも良いこと。

 それなら、花火大会の時に見た距離感も納得出来る。
「彼女じゃなかったんだ……」
 彼女は歓喜をして舞い踊る。
 そして、見られたキスシーンを思い出す……

「ああっ。なんと言う悲劇」
 彼女は絶望をする。

 幸い、夏休みは終わり、学校が始まる。
「きっちりと、言い訳をしよう」
 彼女は決意をする。
 だが、彼氏持ちのレッテルを恐れて、彼に声をかけられない。

 そんなときに、一人の女。
 そうクラスメイトである、女が一人、彼の周りでうろうろし始めた。

 そいつは、身長はほぼ同じ。胸はちょっと負け。成績は…… 私よりもよく、運動も出来る。
 キャラのかぶる、かわいい系で、面倒見も良い。
 そう。すべての点で…… 僅かに…… 私は敗北をしている。

 あの時、手を上げなかったのが敗因だとは……

「では体育祭の委員を、うちのクラスからも出します。男女一名ずつね」
 担任の土御門つちみかどあや先生がそう言ってクラス内を見回したとき、全員が顔を背けたり顔を伏せたりという反応を見せる。

 当然と言えば言える光景。
 結構面倒なのだ。

 当日の、天気確認から始まり、来賓のテント張り。
 前日だってコースの線引きから用具の準備。
 適当だと、体育の鬼走きばしり先生が何度でもやり直しをさせる。

 当然だが、誰もやりたくなどない。
「誰も居ないわね。そうだ、秋山さん。この辺りは加点になるから、推薦をとりやすくなるわよ」
「えー。はいします。もう一人は選んでいいですか?」
「良いわよ」
「じゃあ、二宮くんて、帰宅部だよね」
 突然振られて、おろおろしてしまった。

「あーうん」
「しよ。一緒に」
 そう言って彼女は右の手の平を差し出す。
 そうは言っても間に机が二個そこから後ろに三個という距離があるため手は届きはしない。だがその姿は俺の何かに訴えた。

「うん。お願いします」
「やったぁ」
「じゃあ、二人よろしくね」
 先生はそう良ってご機嫌で帰って行った。

 その後彼女は、数人の女子に囲まれて、俺の方を幾度かチラ見する。

 俺の方は完全に野郎どもからガン無視だ。
「睨むなら、やりたいんだろう。代わってやる」
 そう言うと、皆の目が明後日の方向へと向き直る。
「ちっ」

 それから、二人は仲良く準備委員会に行ったり、用具の点検に行ったり、コース図の確認をしたり、仲よさそうな姿が散見された。
 私は、それを横目に、ため息の日々を過ごすことになった……
 委員の仕事じゃあ、しないでとは言えないじゃない。
 そもそも今は、ただのクラスメイト…… それも、少し訳ありの……


「予報では晴れだが、テントは建てておけ。濡れると先生の給料が減るからな」
「はーい」
「後は何?」
「平均台とフラフープ? それにハシゴとスプーン。卓球のボール? あっバトンもないのか?」
 準備物のメモを見ながら俺は首をひねる。

「それ先生達の、冬のボーナス査定用徒競走でしょ」
「そうなんだ」
「何年か前から、能力給? とかが始まって、先生の給料に差をつけないと叱られるとか聞いたわよ。だから、目に見える能力比較で、障害物とか、女性の先生は少し距離も短いとか?」
「そうなんだ。先生もたいへんだなぁ」
「そうね。用具室へ行こう」
「おう」
 他のクラスの連中とかは、向こうで直線が歪んでると言って怒られている。

 徒競走用トラックや、ダンス用のフォーメーションのマーク。
 書き込まれた線は、魔法陣のようだ。


 そんなのを横目に準備室に行くと、さっきすれ違った一年生が最後だったらしく、彼女と二人きり。
 ほこり臭い準備室。
 何かを探すかわいいお尻が目の前で揺れる。

「ナニを探しているの?」
「バトンの箱とか」
「その辺りは向こうで確認しないと、見当たらないなら、すでに行っている可能性がある。とりあえず皆がパスをした平均台を運ぼう」
「えー。私もパスしたいわね。うわ重っ」
 もろに嫌そうな顔。

「そりゃそうだけどね。なんで男女ペアなんだろ」
「そりゃぁ、青春を謳歌しなさいと言う、学校の計らい?」
 そう言って彼女は笑う。

「そんなわけ無いだろ」
「そうかなぁ?」
 そう言って、彼女は目の前に来た。

「二宮君のこと、前から気になっていたのよ」
 そう言って彼女は、俺に軽くキスをした。
 真っ赤になりながら一歩下がり、聞いてくる。

「私のこと嫌いじゃないなら付き合わない?」
 その時、体育館内に誰かが入ってきた音がした。
「返事は急がないから」
「判った」

 入ってきたのは三年生だった。
「あっ先輩。バトンの箱知りません?」
「バトンは向こうにあったな」
「やっぱり。二宮君。私の代わりに先輩と二人で平均台を持っていって。先輩すみません。私じゃ持ち上がらなくって」
「ああ、いいよ。そっち持って」
 今の一瞬で切り替えたのか。
 俺はまだキスの余韻で心臓がバクバクなのに……

 彼女達に見送られながら、俺達は平均台を運び始める。

「なあ、あの子かわいいなぁ。彼氏はいるのか?」
 背後から声が聞こえる。
「居るんじゃないですか?」
 なぜかそう答えてしまった……
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