泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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美樹と大和 はっぴぃ

第4話 歪んでいた元彼

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 寝ぼけているようなので、そっと寝かせ、悩む。
 すると、目が合う。

「目が覚めたか? 薬。飲み薬と座薬どっちが良い。効き目は座薬の方が早いが、自分で尻に入れられるか?」
「ありがとうございます。入れてください。お願いします」
 そう言って、いきなりこっちにお尻を向けると、躊躇無くズボンと下着を脱ぐ。
 そのスムーズな動きに驚く。
 母さんが言った、つんつるてんの意味も分かった。

「いや、思いっきりが良いなあ。ちょっと冷蔵庫に行って、取ってくるから」
 そう言って、部屋を出て行く。

 戻ってきても、そのままだった。
 まじまじ見るのは良くないが、気がつく。お尻に無数にある。何かで叩かれた傷跡。
 まあ。いつまでも、この格好をさせるのはあれなので、座薬を入れる。
 すると、するっとはいる。
 押し出されもしない。
 普通は、熱で少し溶かしながら押し込み。
 そのあと少し、押し込んだ状態を保持しないと、押し出すものだが、それがない。

「うん? 慣れているのか。もう良いよ」
 下着と、スエットを戻し、声を掛ける。
 すると、布団から顔を出し、首をひねっている。
「どうした。お休み」
 そう言うと、やっと布団へ潜り込む。
「お先に失礼します」
 そう言って、眠り始めた。

 少しして、38度まで、熱が下がる。

 安心をしたが、熱が下がれば、汗をかく。
 自分で出来るかな。


 夢を見ていた。
 いつものこと。
 こちらの体調などは関係ない。
「何故だ。どいつもこいつも、どうして馬鹿なんだ。人の足を引っ張ることしかしない」
 彼は機嫌悪く酔って帰ってくると、いつもはけ口を私に求める。
 
「おい尻を出せ。トイレが汚れていたぞ」
 すぐに、反応しないとお仕置きが、キツくなる。
 躊躇無く、お尻を出す。
 初期は、手の平だったが、いまは革製のパドルという物や物差しなどの時もある。

 彼が必ず、その時に言う台詞。
「これは君のためだ。ミスをミスとしてその時に教えないと駄目だからね。他の奴らは、君のことなど、どうでも良いから救ってくれないし、教えてくれない。僕も辛いんだよ。分かるね」
 そう言われ、彼が望む言葉を答える。
「ありがとうございます。私が至らないばかりに。申し訳ありません」

 彼は元々、取引先の係長だった。
 私は、幾度かの先輩との営業。つまり研修を終わらせ、1人で営業をして初っぱなにミスをする。
 単純な、納品物品の個数間違い。
 後で調べると、初期の発注後。個数変更が来ていた。
 それも、急な追加発注で、急ぎのタグが付いていた。
 私は少しあわてて、対応をした。言い訳だが、それでミスをして、そのフォローを彼にして貰った。

 彼はその時から、ずっと私のフォローをしてくれている。
「お礼。そんな物良いよ。どうしてもって言うなら。居酒屋で良いから、食事でも行くかい?」
 その後すぐに、男と女の関係となった。
 取引関係があるから、無論秘密。

 そして。
「同じミスを繰り返すのは、社会人としてどうだ? そうだな。そういうときには躾だ。お尻ペンペンをしてあげよう」
 そこから、この教育が始まった。

「おまえは、本当に駄目な奴だ。屑だな。役に立たない」
 そんなことを日々言われ、私は彼の言うことに、ただ従うようになっていった。
 変なプライドなど捨て、彼に従えば楽になった。
 
 ただ、容赦なく始まる、躾。
 それだけは、怖い。
 寝ていても、すぐに反応し、従わなくてはいけない。
 そう。私は従っていたのに。

 そしてあの日。
「おまえ。もう良い。つまらん。別れよう」
 彼はそう言い残すと、家を出て行く。
 一瞬。何を言っているの? 理解ができなかった。少し思考も出来ず固まっていたが。一応、追いかける。

 廊下に出て、下を。マンションのアプローチ側を、のぞき込む。
 すると、見たことのない若い女と、私の住むマンションの玄関先から、腕を組んで出て行ってしまった。

 その瞬間に訪れる安堵。
 もう、お仕置きを受けなくてすむ。
 それと同時に、やって来た恐怖。

 わたしは、これからどうすればいいのか? という疑問。この数年。彼の言うとおりに行動をしていた。

 翌日。友人2人を誘い。飲みにでる。
 飲んで忘れようと思ったが、酔うほどに襲ってくる恐怖。

 さらに、この酔った状態で、部屋に帰り。
 もし、彼がいれば。
 きっとフルコースで、折檻を受けなければいけなくなる。
 冷たい浴室。流れ続ける冷たいシャワー。
 あれは、真冬で死にそうだった。

 きっと。その恐怖から、実家の方に足が向いたのだろう。

「おい。美樹。分かるか?」
 うん? 呼ばれている。誰?

 目を開けると、大きくなった大和が、心配そうにこちらをのぞき込んでいた。
「うん。ああ大和。どうしたの? もう夕方?」
「いや。心配だったので休んだ。さっきの熱冷ましが効いたから、熱は大分下がったが、動けそうなら体を拭いて、着替えた方が良い。きっと汗で、濡れているだろう?」

 そう言われると、ぼうーとした感じ減ったが、節々の痛みと頭痛。そして、言われたとおり汗びっしょり。

「あれ。熱冷まし? 飲んだっけ?」
 ふと、記憶になく聞き返す。
「いや。座薬を入れるとなったら、躊躇無く尻を出したから、悪いが入れたぞ」
 それを聞いて、固まる。

 寝ぼけて、彼からの折檻を受けるため。勘違いをして出したんだ。
「あー。何か。ごめんね」
 大和に見られた。恥ずかしい。

「いや。何かおかしいとは思いながら、薬を入れるのを優先した。意識がなかったのか? 目も開いていたし、しっかりしていたから、分からなかった」
「あーうん。別れた彼が。私がミスをすると、叱るから。きっと勘違いをしちゃったのね」
 そう、言葉を濁したつもりだが、大和が食い下がってくる。

「見る気は無かったが、尻の傷。それが、やられた傷か?」
「あーうん」
 そう答えると、大和は短く言葉をかけてくる。
「言っちゃあ悪いが。別れて良かったな」
 そう言うと、大和は清拭シートと着替えを残し、部屋を出て行く。
 自分では見ないけれど、お尻。そんなにひどいの?
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