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第一章 始まりとサバイバル

第2話 お話し合いと、製造計画

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 良いのか分からないが、どんどんレベルアップしていく。
 その快感で、ついズムズムとビートを刻んでしまう。
 絵面的には、凄く悪い。

「すみません、ノリノリでいるところ申し訳ありませんが、バスドラム用のキックペダルじゃないので、いい加減にやめてもらえます」
 足の下から、声が聞こえる。
「あっ。失礼」
 足をそっと避ける。

 むっくりと上半身を起こし、俺の方を見るマガツヒ。
 がっくりと肩を落とし、ため息をつく。

「調子よく踏んづけていると思ったら、一気に一垓分の一も力を持っていって、亜神レベル。もう少しで天部に届きそうになっている」
「それって凄いの?」
「はんっ、天部など凄くは無い。修行中の雑魚よ雑魚。小指でプチッといけるわ」
 そう言ってマガツヒは、中指を立てる。

「まあ段々と、踏まれるのが気持ちよくなってきて、止めるのが遅れたのも原因ですが。…… この、足蹴にされて、罵って貰うと、お尻の辺りがきゅっとして、むずむずする。これは、初めての体験」
 そう言って、ほっぺを両の手で挟み、ぽわわとした顔を上空に向ける。
 その状態で、目だけがこちらを、ぎろっと向く。

 怖えぇよ。

「さて、それはそれ、これはこれ。そんなに階位が上がった魂を、輪廻に乗せるわけにはいけない。すなわち、全身全霊でもう魂に合う器を創ります。私の全能力を掛けて。……まあ掛けても、行く世界が世界だから、たいした物は創れないけどね。物理社会の三次元でしょ。まあ魔法が使えるし、それに対する適応と魔力量は、物理限界だし。異世界転生したらレベル九千九百九十八だったみたいな感じ?」
「どうして、九千九百九十八なんだ?」
「そこは、日本人の謙虚さで。多分現世なら、一生掛かっても最後の一は上がらずに、一生悔し涙を流せば良いわ」
 そう言って、にまにまと嬉しそうにこちらを見る。思わず、頭をぶん殴ってしまった。

「悪い。なんかムカッときた」
「良いけどさ、どうして平気なのかが分からない。よく考えれば、これだけのレベル差、触れた瞬間に、あんた、はじけ飛ぶはずなんだけど。おかしいわね。まあ良いや、基本の体はこれね」

 ぽいっと、体がでできて、床に転がされる。
 なんか結構な勢いで、頭が床にぶつかった音が聞こえたけれど大丈夫か?
 うーん。出てきた体。つい最近までのなじみのある物だが、若い。高校生くらいかな?
「さぁ入って、下へ送るから」
「ちょと待て、裸でいきなり送るのか?」
「駄目なの?」
「駄目だろう」
「ちぇー。面倒」
 ぽむっと、服が着せられる。詰め襟の白い服。
 ボタンでは無く、服に取り付けた木の棒に、輪っかを引っかけるタイプ。中国憲法の道着みたい。
 靴も、ソールは何かの革っぽい。

「ついでに力も強くして。それに、夜目も利くように。それに下半身もビッグにして、なんだかんだと注文を付けると、見たことはないが、多分オーガになった」
 うん。これは違うな。意識中で否定すると、ふっと音も無く消滅した。

「はっ? 何するのよ。せっかく創ったのに」
 またぽんと、体が出てくる。

 創っては消し。消しては創って、そこから、多分七十二時間くらいは掛かったと思う。
「もう、いい加減。良いわよね」
「ああこれで、チートオブチートだろう。使い方はしっかり覚えたし、魔術の方もこれでオーケーだ」

「じゃあ入って」
「ほいよ」
 寝ている体に重なる。

 魂が入ったところで、体を動かしてみる。
「まあ、こんなものかな」
「じゃあ行くわよ」

 ふわっと、体全体が光に包まれる。
「それじゃあ。行ってくる」
 マガツヒが俺に向かい。消える瞬間、凄く嬉しそうに伝えてくる。
「ああ。最初に言ったけど、此処での記憶は無くなるからね。がんばれー」

 その言葉を最後に、気を失う。

 ちなみに、耐久七十二時間の間に土下座をしていた理由が分かった。因果をいじり、事故は起こす予定だった。しかし、それをぶち壊す着信が、トラックの運ちゃんにあり、それに気を取られてそのまま突っ込んできた。予定では、トラックが俺の車に気がつき、急に車線変更し、マガツヒの予定通り隣の車線に入れば、歴史に残る大事故になる予定だったらしい。当然俺はマガツヒを踏んづけたが、奴がぽつっと言った、生かしておいてはいけない奴が、生き残った。その一言が気になった。


********


「馬鹿野郎。ふざけんなぁ」
 そう叫びながら、目が覚める。
「あれ? おれ、車で事故って、 エアバッグが…… 投げ出されたにしては、トンネルから? いや無理があるし」
 周囲は鬱蒼とした森。

 どこかで、ギャアギャアと鳥なのか、獣の鳴き声なのか、声が響いている。
 キョロキョロと周りを見回し、よくわからんが、傾斜を見て上り側へ向かって歩き始める。
 太陽の感じからすると、まだ夕方では無い。

 進んでいる方向は、太陽の感じから、丁度南に向いているのだろう。

 どんどん歩き、途中で涸れ谷があったが、無視して進んでいく。
 谷に沿って行けばきっと、川があるだろうが、野生動物も多いだろう。

 理想的なのは、断層崖などの湧水。
 断層崖は、地震で断層が出来て、隆起または陥没したところ。

 天然ろ過された、水が良い。
 流れ出した周りの変化で飲めるか判断する。湧き出した水たまりに、細かな虫がいること、そして、流れに沿って苔が生えていることなどが判断材料。
 無論、崖上での生物が生活をした影響により、多少の汚染があるかもしれない。
 この辺りは、自身での線引きが必要になる。

 まあpHが中性近くで綺麗な湧水なら、沸かせば完璧。
 ちなみに、有名なリトマス紙は、アフリカに生えているリトマスゴケから作られる。日本なら、ウメノキゴケから、同様のものが作れるようだ。
 他にも、紫キャベツや赤じそ、紅茶や、有名なあじさい。ブドウの皮やその他諸々。意外と多い。

 さて、沸かすと言ったが、無論サバイバル状態で、沸かすことが出来ればの話。

 木の皮や、紙。竹、時間があれば土器を作成。
 キャンプ程度なら、紙皿をそのまま鍋に使うことが出来る。


 それはさておき。
 今、俺の目の前には、日本にいないはずのゴブリン三匹が、俺に向かって棍棒をかまえていた。
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