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第二章 人? との交流
第27話 改革
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現在ポストオピティウムの町を管理しているのは、ヤロミール・コビール男爵と言う男。
小物感が強く、アバルス子爵に取り入り出世してきたようだ。
「お疲れ様です。遠い所、よくぞおいでくださいました。各種資料はこちらにまとめられております」
そう言って、セバスティヌに挨拶をすると、視線をこちらに向けて怪訝そうな顔をする。
今俺は、十五歳から十六歳の容姿となっている。
あからさまな態度。
目が合うと、フンという感じで視線をずらす。
相変わらず歳は不明だが、狐の獣人。
立派な尻尾が、ハエでも払うように振られている。
資料をざっと見て、セバスティヌがこちらに話を振ってくる。
「神乃様。さてどういたしましょうか?」
その瞬間、コビール男爵の尻尾が膨らむ。
分かりやすくて良いな。
「まず、資料を見させてくれ。改善なり廃止なり見てから決めよう」
そう言って、資料の束に手を出す。
パラパラと捲り、気がついたところを紙とペンを取り出しメモを取っていく。
何故か、コビール男爵は直立不動で、固まったままになっている。
この世界、基本的に町は、城郭都市構造。
つまり、生活場所は限られた範囲内となる。
そして重要なのは、この町自体の役割は王都から、ハウンド領への宿場町という意味合いが強い。
宿と、飲み屋、そして色街。それが主な収入源。
そのため、子爵は領への出入りに税を掛け、荷物の多さに税を掛け、町の出入りに税を掛け、宿泊、食事、馬車預かり、何でもかんでも税がかかっている。
あっいや、こう見ると多そうだが、消費税の税率三十パーセントくらいか?
税金に税金がかかる、揮発油税に比べればましかも。ふと思ってしまった。
客観的に見れば、すべてが半公営だが、営業に対しての補助は無し。
おまけに、所得税や人頭税が年間かかる。
他に、土地の貸借料。
生活するのに、なかなかに大変だ。
さてと、支出だが、修繕関係が街道に、城郭。それに人件費。
だが、表の帳簿に明細の載っていない、雑費がものすごく大きい。
次に消耗品費。
守備隊関連にも雑費があり、よく見ると、色々なところに雑費が存在。
すべて、それに対する細目が書かれていない。
「コビール男爵。聞いて良いかな?」
「はっはい。なんでございましょう?」
コビール男爵の焦った顔。
「このすべてに対して、雑費が計上されているが、この細目はどこだ?」
そう聞いた瞬間、男爵の尻尾が膨らんだのが、こっち側でも分かるくらいになる。
「あの。雑費は雑費と言うことで、子細を出すと膨大になるため一項目になっていまして」
「把握をしていないと?」
「いえ。そんなことは」
「では出して」
「えーとあの、その…… ありません。すべて現場判断となっております」
「予算申請もそうなのか?」
「はい。前年踏襲なら、子細を出す必要はありません」
そう言って、目があっちこっちに走り回っている。
「セバスティヌさん。聞いて良いかな?」
「はい。なんでしょう?」
「この国、王家への上納みたいなのはないのか?」
「ございます。その領で得ることのできる収入見込みから、王家側が判断をして年に一度請求されて、年末の舞踏会に参加する折に運びます。ですので、基本王家の請求よりも祝い分多く上納をいたします」
「どんぶりか」
「はっ?」
「いや、なんでも無い」
維持管理の工事費と、兵達の給料。文官の給料を加えて住民で割ると、平均的収入から負担額。
「うーん。五パーセント以下だな」
「何がでございましょう?」
セバスティヌさんが聞いてくる。
「必要経費の住民一人当たりの負担額。余剰分が細目不明はやはり駄目だろう」
さて、今まで生きて来た中で、経費関係は事務担当者がいたし自分がしたのは、何の因果か科研費が当たった時のみ。
だけど見る感じ、この町の会計は子どものお小遣い帳よりひどい。
下手に改善をするより、支出の枠を決めて収入を決め…… 逆か、収入から支出? ……やっぱり支出から収入にしよう。
「王への献上費用。それと、各方面について支出を纏める必要があるから、各部門に概算で要求を出させて。早急に」
そう言ったが、誰も動かない。
「コビール男爵」
「はっ。はい」
「ハイじゃない。各方面について支出を纏める必要があるから、各部門に概算でいいから早急に要求を出させて。出せるなら根拠の明細も付けて」
「ええと、そこに確か請求分がありますが」
「この子どもがお小遣いをねだるような陳情書か? 防具の新型が出ました。兵の安全のために装備を購入します。それならそれで、古い方の引き取り価格並びに新型の価格。それに性能について、どのくらい差があるのか。随意契約では無くて必要性能を明記して入札でもしろ」
そう言うと、かわいくないがかわいく小首をひねるコビール男爵。
ちっ、獣人は卑怯だな。チャチャもそうだったが、仕草でかわいく思えてしまう。
「随意契約とか、入札とはなんでございましょう?」
「購入時に、相手を指名するのが随意契約。入札は性能を示して、対応できるいくつかの企業。いや、ここなら職人に依頼を出し、価格を適正な価格内で安く受けるところに発注をする。安ければ良いなんてすると、実績を作るため馬鹿をする奴らが出てくるから、材料費や人件費から適正値を出せ」
そう言うと、毛の感じがへにょっとなる。
「大変な仕事になりますけれど」
「給料は労働に対する対価だと思っている。仕事に応じて変えるから仕事を減らすならそれに応じて給料を減らすよ」
また毛が立ち上がった。分かりやすい。
「その事を伝えて、仕事を割り振れ。以上だ」
そう言うと、コビール男爵はとぼとぼと部屋を出て行った。
小物感が強く、アバルス子爵に取り入り出世してきたようだ。
「お疲れ様です。遠い所、よくぞおいでくださいました。各種資料はこちらにまとめられております」
そう言って、セバスティヌに挨拶をすると、視線をこちらに向けて怪訝そうな顔をする。
今俺は、十五歳から十六歳の容姿となっている。
あからさまな態度。
目が合うと、フンという感じで視線をずらす。
相変わらず歳は不明だが、狐の獣人。
立派な尻尾が、ハエでも払うように振られている。
資料をざっと見て、セバスティヌがこちらに話を振ってくる。
「神乃様。さてどういたしましょうか?」
その瞬間、コビール男爵の尻尾が膨らむ。
分かりやすくて良いな。
「まず、資料を見させてくれ。改善なり廃止なり見てから決めよう」
そう言って、資料の束に手を出す。
パラパラと捲り、気がついたところを紙とペンを取り出しメモを取っていく。
何故か、コビール男爵は直立不動で、固まったままになっている。
この世界、基本的に町は、城郭都市構造。
つまり、生活場所は限られた範囲内となる。
そして重要なのは、この町自体の役割は王都から、ハウンド領への宿場町という意味合いが強い。
宿と、飲み屋、そして色街。それが主な収入源。
そのため、子爵は領への出入りに税を掛け、荷物の多さに税を掛け、町の出入りに税を掛け、宿泊、食事、馬車預かり、何でもかんでも税がかかっている。
あっいや、こう見ると多そうだが、消費税の税率三十パーセントくらいか?
税金に税金がかかる、揮発油税に比べればましかも。ふと思ってしまった。
客観的に見れば、すべてが半公営だが、営業に対しての補助は無し。
おまけに、所得税や人頭税が年間かかる。
他に、土地の貸借料。
生活するのに、なかなかに大変だ。
さてと、支出だが、修繕関係が街道に、城郭。それに人件費。
だが、表の帳簿に明細の載っていない、雑費がものすごく大きい。
次に消耗品費。
守備隊関連にも雑費があり、よく見ると、色々なところに雑費が存在。
すべて、それに対する細目が書かれていない。
「コビール男爵。聞いて良いかな?」
「はっはい。なんでございましょう?」
コビール男爵の焦った顔。
「このすべてに対して、雑費が計上されているが、この細目はどこだ?」
そう聞いた瞬間、男爵の尻尾が膨らんだのが、こっち側でも分かるくらいになる。
「あの。雑費は雑費と言うことで、子細を出すと膨大になるため一項目になっていまして」
「把握をしていないと?」
「いえ。そんなことは」
「では出して」
「えーとあの、その…… ありません。すべて現場判断となっております」
「予算申請もそうなのか?」
「はい。前年踏襲なら、子細を出す必要はありません」
そう言って、目があっちこっちに走り回っている。
「セバスティヌさん。聞いて良いかな?」
「はい。なんでしょう?」
「この国、王家への上納みたいなのはないのか?」
「ございます。その領で得ることのできる収入見込みから、王家側が判断をして年に一度請求されて、年末の舞踏会に参加する折に運びます。ですので、基本王家の請求よりも祝い分多く上納をいたします」
「どんぶりか」
「はっ?」
「いや、なんでも無い」
維持管理の工事費と、兵達の給料。文官の給料を加えて住民で割ると、平均的収入から負担額。
「うーん。五パーセント以下だな」
「何がでございましょう?」
セバスティヌさんが聞いてくる。
「必要経費の住民一人当たりの負担額。余剰分が細目不明はやはり駄目だろう」
さて、今まで生きて来た中で、経費関係は事務担当者がいたし自分がしたのは、何の因果か科研費が当たった時のみ。
だけど見る感じ、この町の会計は子どものお小遣い帳よりひどい。
下手に改善をするより、支出の枠を決めて収入を決め…… 逆か、収入から支出? ……やっぱり支出から収入にしよう。
「王への献上費用。それと、各方面について支出を纏める必要があるから、各部門に概算で要求を出させて。早急に」
そう言ったが、誰も動かない。
「コビール男爵」
「はっ。はい」
「ハイじゃない。各方面について支出を纏める必要があるから、各部門に概算でいいから早急に要求を出させて。出せるなら根拠の明細も付けて」
「ええと、そこに確か請求分がありますが」
「この子どもがお小遣いをねだるような陳情書か? 防具の新型が出ました。兵の安全のために装備を購入します。それならそれで、古い方の引き取り価格並びに新型の価格。それに性能について、どのくらい差があるのか。随意契約では無くて必要性能を明記して入札でもしろ」
そう言うと、かわいくないがかわいく小首をひねるコビール男爵。
ちっ、獣人は卑怯だな。チャチャもそうだったが、仕草でかわいく思えてしまう。
「随意契約とか、入札とはなんでございましょう?」
「購入時に、相手を指名するのが随意契約。入札は性能を示して、対応できるいくつかの企業。いや、ここなら職人に依頼を出し、価格を適正な価格内で安く受けるところに発注をする。安ければ良いなんてすると、実績を作るため馬鹿をする奴らが出てくるから、材料費や人件費から適正値を出せ」
そう言うと、毛の感じがへにょっとなる。
「大変な仕事になりますけれど」
「給料は労働に対する対価だと思っている。仕事に応じて変えるから仕事を減らすならそれに応じて給料を減らすよ」
また毛が立ち上がった。分かりやすい。
「その事を伝えて、仕事を割り振れ。以上だ」
そう言うと、コビール男爵はとぼとぼと部屋を出て行った。
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