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第三章 王家との対立

第36話 ドラゴンに守られた、奇跡の町爆誕。絶賛分譲中。

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 目の前に、ひれ伏しているでかい図体。
「もう良いのか?」
「もう良い。分かった」

 這いつくばっているドラゴンを見ていると、脇から声が掛かる。
「そのくらいにしておいておくれ、精霊を司るものよ」
「精霊? 司る?」
「しばらく前に、世界にざわめきが広がった。おぬしだろう。若い者には見えないようだが、わしには見える。おぬしの非常識な魔力が」
 頭の中に、樹の精霊桜が浮かぶ。

 ああ、契約をしたからか?

「桜と契約をしたなあ」
「それもある。じゃが、それだけではない。この世界の安寧を保つ、守護。ご神木に力を与えてくださった、はず。周囲に流れる魔力に、おぬしを感じる」
「そうか、それであんたはやるのか?」
 そう言うと、ビクッとする、でかいドラゴン。

「おぬし、話を聞いておったのか? 何故そんな話になる。此処に村を造るなら許可をしよう。そして、此処に生きる者達を守ろう」
「おおっ。良いのか? それはありがたい」

 皆に、適当に焼き肉パーティをさせて、俺は街道部分をはさみ、農地部分と居住部分を造っていく。

 ここは盆地になっており、土地も悪くはなさそうだ。
 周囲から、沢がいくつか流れ込んでおり、水害時は少し怖いが、それは何とかしよう。用水路と区画整備をしなければ。

 ええい。町と農地は橋で繋ぎ、街道の両側には壁を造ろう。
 王都から、共和国側。双方に往来があるから、関係ない奴は、通り過ぎて貰おう。

 真ん中にある山の上は、頂上部分をごっそり平らにして、避難所兼領主の館を造ろう。そうだな、ついでに要塞化もして、天守閣も造ろう。

 そう言えば、うちの教室に居た先生が、城は良いと言って褒めていたな。
 攻防用のトラップと、狭間(さま)も作り、通路はかくかくと折れ曲がる様にして。途中行き止まりをいくつか作る。

 農地の方に結構大きな岩があったが、ドラゴンに撤去を頼んだ。
 あの王が、何時までも尻尾を巻いているとは思えない。
 それまでに、形を作っておこう。

 楽しく、町作りを行っている頃。王都。

「恐れながら、意見具申を申し上げます」
 宰相が、困った顔で言ってくる。

「此度の布告。あの通りに従えば、荘園が立ち行かなると、上申が来ています」
「やかましい。従え。そうでないと、月が来るのだ」
「はっ?」
「いい。どうせ普段から、亜人など半人前以下だと申しているではないか。なら問題はあるまい。もう約束は成された。文句を言う奴は兵を向かわせろ」
「よろしいので?」
「良い。行け」

 宰相は、困惑していた。
 おかしな布告が出された朝。
 王に謁見をすると、一晩で二十歳から三十歳ほど、一気に老け込んでいた。
 一体何があったのだろう?

 そして各地の荘園では、いつもと真逆な状況が展開されていた。
「お待ちください。亜人を連れて行かれると、荘園の管理が」
「やかましい。王のご命令だ。自分たちで何とかしろ」
 そうして連れて行かれる。
 
 そして、訳も分からず解放された亜人達。少しばかりの食糧を持たされ、山へ行けと命令される。各地から集められ、解放された亜人達が歩いて行くのについて行く。

 そんな中。
「これはひどい」
「粗相をした、亜人を教育しただけでございます」
「これが全部おまえの持ち物だと?」
「左様です」
 ちっ、さっさと始末をしておけば良かった。

「隊長。周辺の荘園から亜人が消えると、申し立てが来ていたようです。逃亡だろうと、思っていたようですが、違うようですね」
「話が聞きたい。ヌフ・コンストリュイール殿、ご足労願おう」

「隊長、ルポン・コンストリュイール男爵から、証言が出ました。息子の悪行は知っていた。申し訳ない。とのことです」
「良し。亜人とはいえ、窃盗だな。この数。覚悟なさってください。連れて行け」

 奇妙な巡り合わせで、罰が下る。
 その後、廃棄場所から、おびただしい数が出て、周囲の貴族への弁済でコンストリュイール男爵家は消滅することになる。
 周囲の貴族も、亜人解放令が出たため、それに対応するための原資を、賠償に乗せたようだ。


 さて、峠を3つほど越えた頃。亜人達は、見たことのない町を発見する。
 こんな山間で、いきなり町? それも、きっちりと防壁が巡らされ、よく見れば全員亜人。

「おい。夢じゃないのか?」
 口々にそう言いながら、疲れ切っていた体で走り始める。
「ここは、怖い貴族がいないの?」
 小さな子どもは、父親の手を握り聞いてくる。
 荘園では、引き離されていたが、今回の解放で巡り会うことができた。
「まだ分からないが、亜人ばかりのようだ。きっと今までとは違うさ」

 中には、その時だけの番で、良かったというパターンもある様だが。

「はーい。受付はこっち。名前がある人は書いて、書けないなら言ってくれれば良いから。ない人は、適当に付けて。それが終われば、家に案内をする。体の具合が悪い人は言ってね」
 猫獣人のロマナや、サーラが走り回る。

 彼女達は、道照に助けられてずっと見てきた。
 意地悪だった貴族が、謎のパンチ一つで倒される。その後、領主の館があっという間に深い池の真ん中に残されるのを見た。
「橋は別料金だ、必要なら言ってくれ」
 そう叫んだ後、さっさと踵を返し、叫んでいる貴族の声を無視して、亜人達を連れて、領内を出る。

「先ほど、領主様が橋がいると仰っていましたが、よろしかったのですか?」
「そうか? 皆の喜んでいる声で聞こえなかった。君は耳が良いんだね。まあ、領主は池の中で頭を冷やして貰おう」
 そう言って嬉しそうに、皆を見回し歩いて行く。

 その後も、頼れる人だが、たまに怖い事がある。
 怒らせなければいい人。怒るのは、理不尽を見たときだけ。
 怒った時の理不尽さは、ちょっとあれだけど、皆感謝をしている。

 ただ、年寄りは彼のことを、ヒューマンと言って恐れている。
 ヒューマンて、なにかしら?
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