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第四章 経済共和制の国

第61話 2つめの自治領と3つめ

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 何とか山を越え、谷を下って街道に出る。

 するとだ、周りの獣人の目がもう、やばい物を見たという感じ。
 何なら、子どもに石を投げられる。

「裏切り者め、クイオディット州から出ていけ」
 そんな感じ。なので聞いてみる。

「どうして、亜人が裏切り者なんだ?」
「ヒト族のてさきで、うらぎりものなんだぞ」
「ヒューマン族を連れてきて、みんなころしたんだ」
「あの戦争さえなければ、おうちはおかねもちだったんだぞ」
 それは、田舎のじいさんばあさんが孫に言うほら話だな。
 田舎に遊びに行くと、昔この辺りは全部うちの土地で、人の土地を通らず隣の町まで行けたと。

 近所のガキどもも、そんな話をしていたから、皆、随分細長い土地を持っていたのかと子供心に思ったものだ。

 まあ、そんな事はいい。
 実際、あまり状態がよくないと言うことだ。
 兵士にでも捕まり、処刑にでもされそうな雰囲気なので、さっさと抜けることにした。
 だが、正直に街道を行ってもきっと関所があって、通れないだろう。

 再び、山側へ移動する。

 途中で、野盗の村を一つ潰し、二つ潰し、三つ潰す。
「なんだこれ?」
 今4つめの、村が見える。
 どう見ても、野盗達だ。

 それに、襲われている女の人が、村に帰してと叫んでいるし、つまり野盗なのだろう。

 こそこそ忍び、順にぶん殴り縛っていく。
 捕まっていた人を解放し、後を任せる。


 そして、次を発見。
 この州の主要産業? が野盗なのか? そう思えてくる。
 産業じゃないよな。ちょっと反省。主業務? 主労働? まあ良い潰そう。

 都合国境までに、一ダースは潰した。

 でだ、山を越えようとしたら、こっちを警戒する、軍隊。
 山の稜線に沿ってびっしりと櫓が組まれて、獣人の這い出る隙間もない。

「さて、これは困ったな」
「あの野盗たち、わざわざ隣の州へ忍び込んで、悪事をしていたのでしょうね」
「見張りに立っている、兵達の殺気がやばいことになっている」
「うーん。あの人など、ずっと弓を引き絞っているけれど、大丈夫なのかしら?」
「さあなあ。でも、気を付けて下がらないと、俺達もやばい。いったん戻ろう」

 少し戻り、どうするかを相談をする。

「戻って、野盗に抜け道を聞きましょうか?」
「そうだな、素直に言ってくれれば良いが」

 そう考えて、少し戻る。
 だが、ちょっとズレてしまったようで、また新たな村を発見。

 すると都合よく、出撃前のようだ。
「ラッキー。あれを追いかけて、戻ってくるのを待とう」
「戻ってくるのを? 何故ですか」
「向こう側。出口で見張られていて全滅すると、面倒だ」

 そういう事で、休憩しながら山裾に開いた洞窟を見張るお仕事に従事。

「ほら、道照とテレザ。いちゃついていないで、出てきたわよ」
「ちっ、やっとシルヴィから奪ったばかりなのに。シルヴィずるいわよ」
「野党に言って。ほらほら、戦利品の獣人達もいるわよ」
 指さすシルヴィの指示に従い、見てみると、ロープで結ばれた獣人達が十人ほど出てくる。服装から、女ばかりのようだ。

 荷車が通れるようだな。
 三台ほどの、荷車まで出てきた。

「ようし行こう、ざっと五十人」
 そう言うと、山を下る。
 崖と言うほどでもないが、急勾配を身体能力でごり押しをして、下る。

 テレザが、雄叫びを上げる。
「きゃっほー。おとなしく縛に就ききやがれ」
 冗談で教えた言葉を、高らかに叫ぶ。

「おとなしく、捕まりなさい。成敗よ」
 こっちは、シルヴィ。シルヴィは今、鞭を振り回している。
 混戦では不利だと教えたのだが、何か気に入ったらしい。

 うん。おもしろい。
 ニヤニヤとしながら、周囲を見て、ボスっぽい奴から攻撃を始める。

 順に倒していると、左から風切り音が聞こえる。
 あわてて躱す。
「ごめんなさい。はじかれちゃって」
「武器をを変えろ。この混戦じゃ危ない」
「はーい」

 流れるような動きで、鞭からナイフへ持ち帰ると、これまた流れるような動きで、手の筋や、足の筋を切っていく。

 適当に野盗どもを縛り転がす。

 捕まっていた人たちを解放すると、一目散に穴の中へ帰って行った。
 向こう側も、亜人が嫌われているのかもしれない。
「行くか」
 彼らが先にたどり着き、見張られても面倒なので、速やかに追いかけていく。


 暗く、見づらいが明かりは点けない方が良いかもしれない。なんかそんな気がする。

 するとやっぱり、向こうから松明がやってくる。
「もう来た」
 そう言って、脇道へ入る。
 通り過ぎた奴らは、ガシャガシャと、鎧の音が響く。
 やり過ごしていて、背後からも風が抜けるのを感じる。

 二人の手を取り、枝道の奥へと進んでいく。
 入り口は一つだったのに、幾つも向こう側に穴が繋がっていたようだ。

 兵士達の声が聞こえない方へと、どんどん曲がり、静かなところへ抜け出す。

 左の方をみると、住人や、兵士が大量に騒いでいるので、見つからないように林の中へ紛れ込んでいく。

 途中、足下にロープが張り巡らされていることに気がつく。
「これは、侵入探知用の鳴子かな?」
「鳴子って何ですか?」
 テレザが聞いてくる。

「これを引っ張ると、多分見張り小屋かどこかで、音がするはず。面倒だから迂回しよう」
 そう思ったが、すでに遅かったようで、周囲に気配が湧いてくる。

「テレザ達と同じ、暗殺者の気配だな」
「そうですね。どうやったのでしょう。囲まれました。ねっ」
 そう言って、シルヴィは飛来した矢をつかみ取る。

「亜人か? 何故こんな所に」
 緊張が緩み、兎の獣人が一人出てきた。
 


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