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第四章 経済共和制の国
第62話 トラテイト州
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「港に向かう途中で、道に迷った」
適当に答える。
「道に迷っただと? どこから来た」
「あー。ベネターデビラから」
「ふむ。するとクイオディット州を抜けてきたのか、難儀なことだ。あそこは亜人を嫌っておるからの」
「嫌う? なぜ」
「ふむ。来るが良い。茶でも出そう。罠は避けて来い」
そう言うと、兎の獣人はひょいひょいと、ロープの奥へと向かい始める。
足跡を追い、たどっていく。
きっと、落とし穴があるのだろう。
ちょっと、探知してみると、きっちり周りは穴だらけだし、塹壕かな。
人が地下を移動している。
少し行くと、粗末な掘っ立て小屋が建っている。
開けるときの動作を確認し、取っ手の下側を持たないようにドアを開ける。
下側にはきっと、毒針でも出ているのだろう。
随分とやばい集落だ。
ドアも、開けすぎるとやばいのだろう、わずかに重さが変わった。
閉めること無く、二人を入れる。
最初、外で待たしておこうかと思ったが、眠り薬の散布でもされればまずいので、中へ入って貰う。
「ふむ、なかなか。神経質な御仁じゃな」
獣人だから分からないが、年寄りなのか?
「これだけ、色々神経質な罠があれば気を付けるだろう。それに、この周囲、思ったより人数も多いし、地下へは案内してくれないのか?」
そう言うと、わずかに反応をする。
「そっちは、もっと親しくなってからじゃな」
「親しく? ねえ。なれるのか?」
「わしは、おぬしのような男、嫌いではない。用心深く、隙が無い。ただその二人になにか…… あったら、この里が無くなるのう。恐ろしい」
『二人になにか』と言われた瞬間。ちょっと殺気が漏れた。
「すまない。二人にどうこうという言葉が聞こえて、ちょっとむかっときた」
「ちょっとで、あれか? 恐ろしい事じゃ」
そう言いながら、竈の方へ移動していく、うさぎさん。
「まあ良い。すわれ、約束通り茶を出そう」
失礼だが、自分たちの机と椅子を出す。
「失礼、その椅子や机に生えた棘が気になってね」
そう言うと、ニコッと笑い、軽やかな感じで笑い出す。
「大丈夫じゃ、小一時間程度、動けんだけじゃろう」
「それを、大丈夫と言えないんだよ。こっちはずっとやばい状態でね」
「まあ、亜人なら。仕方あるまい」
そう言って、うんうんと頷く獣人。一瞬じいさんなのかと思ったが、筋肉が若そうだ。
「同じ物を入れるから、安心せい」
確かに水瓶も、茶葉もポットも同じ、カップも同じだが、左手でカップを扱うじいさん風獣人。
「飲み口に毒か?」
そう言うと、ピクッとする。
「普通に飲んどるじゃろ」
器用に片目だけ、大きく見開き、戯れ言を言う。
「左手でな。右手で飲め。俺達の取っ手は右側だ」
「そりゃ、礼儀として取っ手を、右側にしただけ。わしは左利きでな」
「さっきまで、全部右手で操作をしていた気がするが?」
そう言うと、やれやれという感じで、頭を振る。
「細かい男は、嫌われるぞ」
こちら側、三人のカップを浄化する。
これで、水に毒でも入れて解毒剤を飲んでいても、俺達の分は、浄化された。
御茶の色が無くなったのは、お茶っ葉がやばいものだったのか。
「お茶っ葉も、毒だったのかい」
そう言うと目を見開き、かなり驚いたようだ。
「参ったのう。何者じゃ」
「一応、金級ハンターだ」
「ほう。亜人なのに」
「そうだ、亜人なのにだ」
「やれやれ」
そう言って、ちゃぶ台返しをしようとしたが、持ち上がらなかったようだ。
「固定してあるからな、無理だ」
逃げようとしたので掴もうとしたら、襟や肩には見えにくいが針が出ている。
背後から腎臓へ、パンチを一発。
「ぐえっ。このお」
何か筒を咥え、転がりながら吹き出そうとしてくるが、当然筒を、掌で突き込む。
喉の奥に入り、盛大にむせ込んだようだ。
「ぐっ。この」
体の周りに、ナイフを突き刺していく。
後ろの隠し扉から出てきた奴は、テレザの蹴りを食らう。
薄い壁をぶち破り、外にあった落とし穴へはまったようだ。
叫び声が聞こえる。
「じいさんのふりをしたおっさん。俺は、何故亜人が嫌われているかを、聞きたいだけだ。その場所その場所で、話が違うからな」
「あー。分かった。話そう」
当然、体位は変えさせない。
「昔戦争があった、その時に人、ヒューマン達は、亜人を見つけて交配ができることを発見した。そして奴隷として、道案内として先頭に立たせた。そのため、亜人がヒューマンを連れてきたと思われておる。実際は、生き残るためだが、目の前の事実の方が記憶に残る」
「道案内をする亜人か」
「獣人もおったかも知らんが、亜人の方が目立つ。それに、戦後。大部分の亜人達はヒューマン達に連れ攫われた」
「そうか。それで。ついでにあんた達は何者だ?」
「忍びよ」
景気よく出てきた、獣人。こいつも兎だが、シルヴィが体を躱し、首の後ろに攻撃をする。意識が飛んだのか、そのまま椅子に座りテーブルに突っ伏する。
「忍びね」
翻訳のエラーかな。
「まあいい。なんとなく分かった。今まで聞いたのと変わらない話だ。さて帰るか」
「そうはいかん。うぬらを捕らえ、州長様に渡せば、きっと礼がもらえるはず」
その声と同時に、わらわらと、そこかしこから獣人が出てくる。
どんどんと、倒していく。
都合三十人ほどかな。
全員縛って、放って行く。
「どこもかしこも、亜人が嫌われていますね」
「そうだな」
結局、3つめの州も、ほとんど関わることなく、通り過ぎることにする。
適当に答える。
「道に迷っただと? どこから来た」
「あー。ベネターデビラから」
「ふむ。するとクイオディット州を抜けてきたのか、難儀なことだ。あそこは亜人を嫌っておるからの」
「嫌う? なぜ」
「ふむ。来るが良い。茶でも出そう。罠は避けて来い」
そう言うと、兎の獣人はひょいひょいと、ロープの奥へと向かい始める。
足跡を追い、たどっていく。
きっと、落とし穴があるのだろう。
ちょっと、探知してみると、きっちり周りは穴だらけだし、塹壕かな。
人が地下を移動している。
少し行くと、粗末な掘っ立て小屋が建っている。
開けるときの動作を確認し、取っ手の下側を持たないようにドアを開ける。
下側にはきっと、毒針でも出ているのだろう。
随分とやばい集落だ。
ドアも、開けすぎるとやばいのだろう、わずかに重さが変わった。
閉めること無く、二人を入れる。
最初、外で待たしておこうかと思ったが、眠り薬の散布でもされればまずいので、中へ入って貰う。
「ふむ、なかなか。神経質な御仁じゃな」
獣人だから分からないが、年寄りなのか?
「これだけ、色々神経質な罠があれば気を付けるだろう。それに、この周囲、思ったより人数も多いし、地下へは案内してくれないのか?」
そう言うと、わずかに反応をする。
「そっちは、もっと親しくなってからじゃな」
「親しく? ねえ。なれるのか?」
「わしは、おぬしのような男、嫌いではない。用心深く、隙が無い。ただその二人になにか…… あったら、この里が無くなるのう。恐ろしい」
『二人になにか』と言われた瞬間。ちょっと殺気が漏れた。
「すまない。二人にどうこうという言葉が聞こえて、ちょっとむかっときた」
「ちょっとで、あれか? 恐ろしい事じゃ」
そう言いながら、竈の方へ移動していく、うさぎさん。
「まあ良い。すわれ、約束通り茶を出そう」
失礼だが、自分たちの机と椅子を出す。
「失礼、その椅子や机に生えた棘が気になってね」
そう言うと、ニコッと笑い、軽やかな感じで笑い出す。
「大丈夫じゃ、小一時間程度、動けんだけじゃろう」
「それを、大丈夫と言えないんだよ。こっちはずっとやばい状態でね」
「まあ、亜人なら。仕方あるまい」
そう言って、うんうんと頷く獣人。一瞬じいさんなのかと思ったが、筋肉が若そうだ。
「同じ物を入れるから、安心せい」
確かに水瓶も、茶葉もポットも同じ、カップも同じだが、左手でカップを扱うじいさん風獣人。
「飲み口に毒か?」
そう言うと、ピクッとする。
「普通に飲んどるじゃろ」
器用に片目だけ、大きく見開き、戯れ言を言う。
「左手でな。右手で飲め。俺達の取っ手は右側だ」
「そりゃ、礼儀として取っ手を、右側にしただけ。わしは左利きでな」
「さっきまで、全部右手で操作をしていた気がするが?」
そう言うと、やれやれという感じで、頭を振る。
「細かい男は、嫌われるぞ」
こちら側、三人のカップを浄化する。
これで、水に毒でも入れて解毒剤を飲んでいても、俺達の分は、浄化された。
御茶の色が無くなったのは、お茶っ葉がやばいものだったのか。
「お茶っ葉も、毒だったのかい」
そう言うと目を見開き、かなり驚いたようだ。
「参ったのう。何者じゃ」
「一応、金級ハンターだ」
「ほう。亜人なのに」
「そうだ、亜人なのにだ」
「やれやれ」
そう言って、ちゃぶ台返しをしようとしたが、持ち上がらなかったようだ。
「固定してあるからな、無理だ」
逃げようとしたので掴もうとしたら、襟や肩には見えにくいが針が出ている。
背後から腎臓へ、パンチを一発。
「ぐえっ。このお」
何か筒を咥え、転がりながら吹き出そうとしてくるが、当然筒を、掌で突き込む。
喉の奥に入り、盛大にむせ込んだようだ。
「ぐっ。この」
体の周りに、ナイフを突き刺していく。
後ろの隠し扉から出てきた奴は、テレザの蹴りを食らう。
薄い壁をぶち破り、外にあった落とし穴へはまったようだ。
叫び声が聞こえる。
「じいさんのふりをしたおっさん。俺は、何故亜人が嫌われているかを、聞きたいだけだ。その場所その場所で、話が違うからな」
「あー。分かった。話そう」
当然、体位は変えさせない。
「昔戦争があった、その時に人、ヒューマン達は、亜人を見つけて交配ができることを発見した。そして奴隷として、道案内として先頭に立たせた。そのため、亜人がヒューマンを連れてきたと思われておる。実際は、生き残るためだが、目の前の事実の方が記憶に残る」
「道案内をする亜人か」
「獣人もおったかも知らんが、亜人の方が目立つ。それに、戦後。大部分の亜人達はヒューマン達に連れ攫われた」
「そうか。それで。ついでにあんた達は何者だ?」
「忍びよ」
景気よく出てきた、獣人。こいつも兎だが、シルヴィが体を躱し、首の後ろに攻撃をする。意識が飛んだのか、そのまま椅子に座りテーブルに突っ伏する。
「忍びね」
翻訳のエラーかな。
「まあいい。なんとなく分かった。今まで聞いたのと変わらない話だ。さて帰るか」
「そうはいかん。うぬらを捕らえ、州長様に渡せば、きっと礼がもらえるはず」
その声と同時に、わらわらと、そこかしこから獣人が出てくる。
どんどんと、倒していく。
都合三十人ほどかな。
全員縛って、放って行く。
「どこもかしこも、亜人が嫌われていますね」
「そうだな」
結局、3つめの州も、ほとんど関わることなく、通り過ぎることにする。
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