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第五章 混沌の大陸

第69話 悲劇の幕開け

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 早朝から、寺社や教会で悲劇が始まる。
 この頃、寺社や教会は信者からの寄進により力を蓄え。僧兵達の力もあって各国を治める家に対して、遠回りではあるが、命令を出し始める。その結果、あちらこちらの国と軋轢を生んでいた。

 すべては、自分たちの既得権益を確保して守るため。
 寺社は宗派により、教えが違うと他の寺社に対して排除へと乗り出し、それに教会も参戦。
 国以上に、ドロドロとした争いを行っていた。

 これに手をこまねいていたテクセレアーグロ家だが、今回の武器は圧倒的なアウトレンジからの一方的虐殺が行える。

 寺などの周りを囲み。
 バーストモードで、撃つだけ。
 簡単なお仕事。

 最後はきちんと、焼いておきましょう。
 火魔法の魔道具が振り回されると、あっという間に、作業が終わる。

 その報告を屋敷で聞き、ほくそ笑むノーブル=ナーガ。
 昨夜から一睡もしておらず、怪しく輝く目は、ギラギラとした光を放つ。
 まるで、その目に狂気をはらんでいるようだと、家臣達が噂をする。

 数日後、その話を聞いた周辺国は、新型武器の恐ろしさを耳にする。
 あわてて、魔王国に連絡を取ろうとする者。
 国内の寺社と協議し、協力を確約させる者。
 様々な、対応が取られる。

 その頃、ある一団がヌークフルーメンに向けて、街道を移動し始める。
 
 その情報を受けて、ヌークフルーメン家当主。ヨシュー=モートは血相を変える。
 周辺国へ手紙を送り、連合と救援を求める。

 だがその回答は芳しくなく、現れたのは各国の間者達。
 新型兵器の力を見ようとする者ばかり。

 そこへ、力を見せつけてくるようにゆったりと現れる軍団。

 国境で、停止もせずヌークフルーメンへ踏み込む。

「そこに居るのはヌークフルーメン家当主。ヨシュー=モートではないか。丁度良いところに。この、テクセレアーグロ家当主ノーブル=ナーガが、この地すべてを貰って修めてやる。それで、動乱は収まる。良い考えだろう。ああ゛っ?」
 馬上で、胸の前で腕を組み、高らかに宣言をする、ノーブル=ナーガ。
 その姿は、本大陸での魔王という噂そのもの。

「ふざけるなぁ。あの痴れ者を撃てぇ」
 ヨシュー=モートが、真っ赤な顔をして叫ぶ。
 先を取ったのは、ヨシュー=モート達の攻撃であったが、ノーブル=ナーガの軍勢の一〇メートルほど前ですべてはじかれる。
 どうも魔導シールドまで、用意をしていたようだ。

 すぐに、シールドは解除され、そこからは反撃と言うには語弊のありそうな、一方的な虐殺が幕を開けた。

 従来品は、一発撃てば次弾構築のための魔力が魔力回路へ流れ、数秒のインターバルが必要となる。
 そのため、最初の一発から次の発射までの間に射手は全滅をした。

 対して新型は、魔導回路が三路並列タイプ。
 同時に、三発まで作成できる。
 連射時には、一から三まで順に発射され、発射の間に次弾が作成されていく。
 圧倒的速度差。その隙間に、火焔が容赦なくヨシュー=モートの軍勢を焼き払っていく。

 一時間も掛からず、ノーブル=ナーガを、阻む者は居なくなってしまった。
 そこで、興味が無くなったようで、ノーブル=ナーガは代官を決めてそのまま進軍させる。そして、自身は城へと帰っていった。


「と、いう感じで、何もできずと言う感じでした」
 地獄の虐殺を見学し、情報を持ち帰った間者。
「ぬおうぅ。ノーブル=ナーガ。何という物を。と言う事は、ヌークフルーメン家は滅んだか」
「はい」
 それを聞いて、フィーデ=ヨーシュは考える。

「周りを固めるとなれば、次は西方進出を図るじゃろう」
「おそらくは、そうでございましょうな」
「うむ。昨日の今日だが、神乃殿の居場所は掴んでおるか?」
「今だ、鬼の湯に逗留されておるご様子」
「よし連絡しろ。それと、ノーブル=ナーガの動きは随時知らせろ」

 そんなこんなで、使いがきて、魔族の拠点で誰かがいないかを探す。

「何者だ?」
「ラウラか、炎呪に連絡を取りたい。俺は、神乃道照と言う」
「人間のくせにお二人を呼び捨てとは、無礼な奴」
 向こうじゃ散々亜人と呼ばれたのに、今度は人間のくせにか。

「まあ良い。確認をしないと、後でお前が困るぞ。魔族ではない俺が、この拠点を知っているのはおかしいだろう?」
 そう言うと、あからさまに困惑をする魔族。
「ちっ、そこから動くな」

 そう言って彼は消えたが、一人で監視? この国そんなに重要ではないのか?

 少しすると、血相変えてさっきの奴が帰ってきた。
 二人を連れて。
「「おう。久しぶりだな。困りごとか?」」
 二人は、きっちりとハモった。

 そして、振り返ると命令をする。
「「表を見張っておれ」」
 またハモった。
「はっ」

「先日は、妹が世話になり、土産まで頂きまして申し訳ありません。本来、命を助けて頂いた私が礼を尽くすところなのに」
「いやまあ、良いさ。原因はこちらにもある。それで聞きたいのが、こちらに魔道具。主に武器を輸出している奴を止められないか?」
「それはできるが、個人的な商売だからな。何か、理由がないと厳しいな」
 二人が同じ格好。顎の下に拳を当て悩み始める。
 立ち姿まで、そっくり。

「二人とも、行動が同じだな」
 そう言うと、二人は顔を見合わせる。
「「そんな事はない」」
「良いじゃないか。姉妹で仲良くて、素敵なことだ」
「「素敵? そうか」」
 そう言って、二人そろって赤くなる。
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