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悪魔の囁き(一)
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昔、私がまだ分別の付かない子供であった頃の事の思い出。
私は大学で美術を教えていた叔父に、裸婦のデッサン会へ連れて行かれた。
あらゆる所に大きな照明が備え付けられて、ひどく明るいその部屋は、周囲の壁を、油絵やら、木炭画やらに囲まれていて、何処からか金木犀の香りが漂っていた。その香りは、性の芽生えていない子供の私でさえ、頬が紅潮し、恍惚としてしまう程に、甘美なものであった。
五つ、六つと立てられたイーゼルの前には、個数と同じだけの大人が座り、皆が一同に、部屋の中央を見つめ、筆やら、鉛筆やらを走らせては、頭を捻らせている。
彼等(絵描きの中には、女性も居たかも知れぬが、どうしてか、私は、男の姿以外には思い出せない)が凝視するのは、中央でポーズを取る、美しい大人の女性である。彼女は、恥かし気も無く、惜し気もなく、その恵まれた裸体を男達に公開し、時には笑みすら浮かべていた。ポーズを変更する毎に、彼女の柔らかく膨れた乳房は、上下に揺れた。私は、彼女を見るうちに、躰の中心が熱くなるのを感じた。
「どうだ。美しかろう」
叔父は、私にそう言った。私はそう言う叔父の瞳に、恍惚とした何かを感じ取った。
「うん。」
私は応えながら、その股間の隆起を叔父に見られまいとした。しかし、その気遣いはまるで無用のもので、叔父は私が其処に居るのを忘れてしまったかの様に、目の前の裸体に魅入っていた。そして、次の間には、イーゼルを取り出して、熱心に彼女を描き始めた。私は、恥じる必要の無い事を悟ると、唯叔父のキャンバスに、彼女の裸体が写し取られていくのを眺めた。
デッサン会は、それから数時間続いた。
これだけの男を一度に魅了する彼女を私は無意識の中に恐れた。同時に、他の数多の男どもに例外なく、彼女の魅力に取りつかれた。叔父のすぐ後ろに立ちながら、私は何度も絶頂に昇っていった。殊に、絵を通して写し出される彼女の裸体に、無性に惹きつけられた。
デッサン会の終わった後、私は叔父の書いた彼女の絵をねだった。叔父は、悪戯な笑みと共に私に絵を渡してくれた。
それ以来、私は絵の中の彼女に何度惚れた事だろう。私は幼いながら知っていたのだ。世に類なき美しきものに対しては、我々、愚かなる者どもは、ひれ伏す他に無いのであると。
彼女は、挨拶をすべて済ませると、私の元に来た。そして、その温かな手を私の股間にあてがわせた。
「私、そんなに、綺麗だった?」
私はどうして好いかわからず、唯立ち尽くしていた。
その時の彼女の魔性なる笑みを、私はいまだに忘れる事ができないでいる。
私は大学で美術を教えていた叔父に、裸婦のデッサン会へ連れて行かれた。
あらゆる所に大きな照明が備え付けられて、ひどく明るいその部屋は、周囲の壁を、油絵やら、木炭画やらに囲まれていて、何処からか金木犀の香りが漂っていた。その香りは、性の芽生えていない子供の私でさえ、頬が紅潮し、恍惚としてしまう程に、甘美なものであった。
五つ、六つと立てられたイーゼルの前には、個数と同じだけの大人が座り、皆が一同に、部屋の中央を見つめ、筆やら、鉛筆やらを走らせては、頭を捻らせている。
彼等(絵描きの中には、女性も居たかも知れぬが、どうしてか、私は、男の姿以外には思い出せない)が凝視するのは、中央でポーズを取る、美しい大人の女性である。彼女は、恥かし気も無く、惜し気もなく、その恵まれた裸体を男達に公開し、時には笑みすら浮かべていた。ポーズを変更する毎に、彼女の柔らかく膨れた乳房は、上下に揺れた。私は、彼女を見るうちに、躰の中心が熱くなるのを感じた。
「どうだ。美しかろう」
叔父は、私にそう言った。私はそう言う叔父の瞳に、恍惚とした何かを感じ取った。
「うん。」
私は応えながら、その股間の隆起を叔父に見られまいとした。しかし、その気遣いはまるで無用のもので、叔父は私が其処に居るのを忘れてしまったかの様に、目の前の裸体に魅入っていた。そして、次の間には、イーゼルを取り出して、熱心に彼女を描き始めた。私は、恥じる必要の無い事を悟ると、唯叔父のキャンバスに、彼女の裸体が写し取られていくのを眺めた。
デッサン会は、それから数時間続いた。
これだけの男を一度に魅了する彼女を私は無意識の中に恐れた。同時に、他の数多の男どもに例外なく、彼女の魅力に取りつかれた。叔父のすぐ後ろに立ちながら、私は何度も絶頂に昇っていった。殊に、絵を通して写し出される彼女の裸体に、無性に惹きつけられた。
デッサン会の終わった後、私は叔父の書いた彼女の絵をねだった。叔父は、悪戯な笑みと共に私に絵を渡してくれた。
それ以来、私は絵の中の彼女に何度惚れた事だろう。私は幼いながら知っていたのだ。世に類なき美しきものに対しては、我々、愚かなる者どもは、ひれ伏す他に無いのであると。
彼女は、挨拶をすべて済ませると、私の元に来た。そして、その温かな手を私の股間にあてがわせた。
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その時の彼女の魔性なる笑みを、私はいまだに忘れる事ができないでいる。
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