87 / 166
第五章 夏休み、宙色市歴史探訪
第79話 この父親、ノーガード戦法すぎる
しおりを挟む
ドアの向こうで、お袋の話し声が聞こえる。
「ええ、こっちは大丈夫だけど、どうかしたの? 何か――」
すげぇな、親父。
よくもまぁ不倫して自分を捨てたお袋と電話で会話できるな。
もう二年が経って、互いに状況も落ち着いてるとはいえ、タフな神経してやがる。
お袋も普通に受け答えしてるが、これは単にマヒしてるだけ。
親父が一言でも不倫の件を言い出せば、途端にごめんなさいマシーンと化す。
そうならないってことは、親父がそれを話に出してないからだろうけど。
「アキラ~」
という声と共に、俺の部屋のドアがノックされる。
「集さんが、あんたと話したいって」
「あ~? わかった、受話器貸せ」
お袋から受話器を受け取り、俺は自分の部屋へ戻る。
そして、何となく、特に意味もなく音漏れ防止の防音結界を部屋に張り巡らせる。
「……もしもし」
声の調子を整えてから電話に出ると、向こうから少しの沈黙。そして、
『あ~、アキラ、か?』
ややぎこちない、でも、聞き慣れた声。
その声を耳にした瞬間に、俺の中に『懐かしさ』がブワッと溢れ出てくる。
「そうだよ、僕だよ。……パパ」
っとぉ~! 演技じゃなく素で口調が『僕』になっちまったぁ~!?
クソ、何かものすげぇ恥ずかしい。こっ恥ずかしいッ!
『ああ、アキラの声だ。懐かしいなぁ。久しぶりだなぁ……』
ちょっと、ちょっと親父、涙声になるのやめてくださいよ!
本当に特に意味なく、こっちまで鼻啜っちゃうじゃない!
「パパ……」
『ああ、お父さんだよ。うん、本当に懐かしい。声でわかるよ、大きくなったなぁ』
くぅ、親父の声が嬉しそうに弾んでおる。
たかがその程度のことで、俺まで何か嬉しくなってるのマジで笑うんだがァ!
『こんな時間にごめんなぁ。ちょっと、急におまえの声が聞きたくなってな』
「そうなんだ……」
お袋の名前出てこないのは、まぁ、仕方がないね!
『もしかしたら寝てる時間だったか? それなら――』
「大丈夫だよ、今、夏休みだから!」
『ああ、そうか。もうそんな時期か……』
「パパは、お仕事忙しいの? 大丈夫? 病気になったりしてない?」
『もちろん、大丈夫だぞ。パパは体が強いんだ』
そこからしばらく、俺と親父はお互いの近況報告などをしていった。
『――そうか、学校でも仲のいい子ができたんだな。その子はどんな子なんだ?』
「え~っとね美芙柚ちゃんっていうんだけど……」
『女の子か! っはぁ~、さすがはパパの息子。モテるなぁ、アキラは』
「え、そうなの? パパもモテたの?」
『そうだな、パパも若い頃はそりゃもうモテて、ママにも――、この話はやめよう』
「あ、うん……」
弾ませてた声を急に重たくするのやめてもらえませんかね?
いきなり現実に戻ってんじゃねぇ! そういうところが隙があるっていうんだよ!
『おまえこそ、病気とかはしてないか? 大丈夫か?』
「うん、大丈夫だよ。僕、元気だよ!」
『そうか、それならいいんだが』
電話の向こうから伝わってくる安堵の感情。
こんな時間に来た電話だから何か重要な話かと思ったが、そうでもなさそうだ。
本当に、急に俺のことが気になったとか、なのかな。
『ところで、アキラ』
「何、パパ?」
『夏休みってことは、宿題もあるんだろ?』
「あるよ。今は、自由研究やってるよ!」
『お~、自由研究。パパも子供の頃はやったなぁ。何を研究してるんだ?』
「僕はね、宙色市の歴史を調べてるんだよ」
『宙色市の歴史をか! そりゃあ、難しいことをやってるんだなぁ、すごいなぁ!』
「エヘヘヘ……」
手放しに褒められて、悪い気はしない。それは本当だ。
親父も、十分以上俺と話して、すっかり緊張やぎこちなさも消えている。
「で、どうしてそこを気にするんだい、ツリーマンさんよ」
だから俺は、カマをかけた。
これで親父が何のことかわからないならば、それはそれで別によし。
本当にたまたまこのタイミングで親父が電話をかけてきただけってコトだ。
だったら気にする必要はない。楽しくお話し続行だ。
しかしそうでなかったら、どうしてくれようか。
っつーかね、さすがにタイミング的にも怪しいワケですよ、この電話。
元々、七星句に『集』の文字があって、九ツ目神社でのツリーマンの一件。
神主さんの話では、取り立てて特徴がない男、とのことだったが。
そういえば、ウチの親父も見た目は普通だったよな。
と、思っていた矢先の、その当人からの電話である。どう考えても怪しいだろ。
――以上の理由から、俺は親父にカマをかけてみることにした。
これで何も知らないなら、それでいいんだ。
むしろ俺は、そうであることを望んでる。親父は無関係なんだ、と。
『え、そりゃあパパの息子がどれだけ頑張ってるか気になってるからだよ! 一日で『七つ目石』まで辿り着けたのは本当にすごいぞ、さすがはアキラだなぁ~!』
お、親父ィィィィィィィィィィィィィィィィ――――ッ!!?
「…………あの、パパ?」
せめて誤魔化すとかしらばっくれるくらいはしろよォォォォォォォ――――ッ!
『ん? ……え。……あ! ……ツ、ツリーマンって何のことかなぁ~!』
「遅ェ、さすがにその反応は遅ェよ、親父ッ!」
ああああああああ、ついつい、口調がいつものに戻っちゃった!
え~い、もう知らん! ここからは親子としてじゃなく、ツリーマンとの会話だ!
『……いやぁ、まさかバレるとは思わなかったなぁ』
「何故そう思えた。このタイミングでの電話とか、クソ怪しいことをしておいて」
『おまえの声を聴きたくなったって言えば誤魔化せるかなって……』
「無理無理無理無理無理無理無理無理!」
『カタツムリ?』
「やっかましぃわ! ホント、あんたは常にどこかに隙があるなァ!」
今だって、俺と話してるのが楽しくて無防備になってただけだろ、絶対!
『むぅ、よくパパがツリーマンだってわかったなぁ』
「だってツリーマン→樹木男→樹木→ウッド→うつど→つどう→集、だろ?」
『…………』
「あれ、違った?」
『アキラ、もしやおまえ、天才……?』
「感動に打ち震えて絶句してただけか、このバカ親バカァ!」
ちくしょう、思いっきりシンラが重なる。やはり血は争えんのか……!
『まぁ、うん。そうだね、パパがツリーマンだ』
「しっかり認めやがったな。……あんた、俺が『出戻り』であることを」
『知ってる。ミフユちゃんのことも、おまえの家族のこともだ』
「そこまで知ってるのかよ」
『ああ、ついでに宙色UJSでのおまえとミフユちゃんのデートのことも――』
「オイ、やめろ! 何でそんなことまで知ってンだ!?」
『ちゃんとミフユちゃんを支えてやるんだぞ。おまえならきっとできるさ』
「うるせぇよ! 人生の先達ヅラしてんじゃねぇ、この覗き魔が!」
おのれ、顔が一気に熱くなってきたんだが!?
人のデート現場を覗き込むとか、プライバシーの侵害も甚だしいだろ!
『ま、パパはそういうのがわかる立場にあるんだよ、今』
「立場……? どういうことだよ、教えろよ、親父」
『悪いけど、それはできない。そういう『制約』なんだ』
「何だよ、そりゃあ……」
しばり? 制約? それとも誓約? 或いは、呪縛?
「あんたは『出戻り』なのか?」
『それも言えない』
そこも『制約』に関わる部分、ってことか。
『でも、おまえが真相に辿り着いたときには、きっとパパと会えるさ』
「そうかよ。じゃあ少し手伝っていけよ。あの『△』は、何なんだよ、あれは?」
『ああ、あれか。そのままだよ。明日にでもシイナちゃんに聞いてごらん』
「シイナに……?」
ふむ、それでわかるというのであれば、そうしよう。
『それと、パパから伝えられることを、あと二つ教えよう』
「あと二つ? 何だよ……?」
『まずは、パパの旧姓を調べてごらん。面白いことがわかるぞ』
「親父の旧姓? 金鐘崎になる前かよ」
『そうだ。それと、昼間におまえがブチのめした暴走族』
「ああ、だーくうぃんぐ何たら。それがどうした?」
『あのグループのボスは『出戻り』だ。注意はしておいた方がいいと思うぞ』
「……何?」
オイオイ、マジか。それはちょっと、さすがに無視できない情報だな。
「あんた、何でそんなことまで知ってるんだ?」
『悪い、それも教えられない。それと、そのボスの能力もわからない』
しばり、ってヤツですか。
だが、それでも十分な情報をいただいちまったな。
「貴重な情報ありがとよ、親父。その情報に、俺は何で報いればいいんだ?」
『もし、何かをパパに返そうと思うなら、元気でいてくれ、アキラ』
「あ?」
『おまえも親なら、わかるだろ』
……ああ、そう。そういうことね。確かに、一番の報酬はそれか。
「俺が調べてること、全部わかったらあんたに会えるんだよな?」
『ああ、会えるよ』
「じゃあ、待ってな。すぐに会いに行ってやるよ、親父」
俺がそう言うと、電話の向こうから楽しんでいるような気配が伝わってくる。
『そのときを楽しみにしてるぞ、アキラ』
そして、電話は切れた。
色々と隙が多い野郎だが、喋ってみて、やっぱり俺の父親なんだと感じた。
懐かしさが込み上げてくる。やっぱり俺は、金鐘崎アキラなんだな。
俺は部屋を出て、受話器を置きに行く。途中、そこにいたお袋に軽く尋ねてみた。
「なぁ、お袋」
「何だい、電話は終わったんだね」
「ああ、終わったけどさ。あのさ、親父のことなんだけど」
「うん」
「親父って、婿入りだったんだろ。金鐘崎姓だったってことは」
「そうだね。それが結婚の条件のひとつだったからねぇ」
「じゃあ、親父が金鐘崎になる前は何て苗字だったんだ? 俺、知らねぇんだよな」
「集さんの元の苗字かい? それだったらソラフネザカだねぇ」
…………え?
「宙船坂……、が、親父の元々の苗字、なのか?」
「そうだよ。金鐘崎も珍しいけど、こっちも随分珍しい苗字だったね」
お袋が懐かしむように言っているが、すでに俺は話を聞いていなかった。
俺達の事情を知り、俺に幾つもヒントを寄越した親父。
だが、肝心な真相は『制約』があるため話せないと言っていた。
何だよ、そりゃ。一体どういうことなんだ。
「親父、あんた一体、何者なんだ……?」
――明日は、長い一日になりそうだった。
「ええ、こっちは大丈夫だけど、どうかしたの? 何か――」
すげぇな、親父。
よくもまぁ不倫して自分を捨てたお袋と電話で会話できるな。
もう二年が経って、互いに状況も落ち着いてるとはいえ、タフな神経してやがる。
お袋も普通に受け答えしてるが、これは単にマヒしてるだけ。
親父が一言でも不倫の件を言い出せば、途端にごめんなさいマシーンと化す。
そうならないってことは、親父がそれを話に出してないからだろうけど。
「アキラ~」
という声と共に、俺の部屋のドアがノックされる。
「集さんが、あんたと話したいって」
「あ~? わかった、受話器貸せ」
お袋から受話器を受け取り、俺は自分の部屋へ戻る。
そして、何となく、特に意味もなく音漏れ防止の防音結界を部屋に張り巡らせる。
「……もしもし」
声の調子を整えてから電話に出ると、向こうから少しの沈黙。そして、
『あ~、アキラ、か?』
ややぎこちない、でも、聞き慣れた声。
その声を耳にした瞬間に、俺の中に『懐かしさ』がブワッと溢れ出てくる。
「そうだよ、僕だよ。……パパ」
っとぉ~! 演技じゃなく素で口調が『僕』になっちまったぁ~!?
クソ、何かものすげぇ恥ずかしい。こっ恥ずかしいッ!
『ああ、アキラの声だ。懐かしいなぁ。久しぶりだなぁ……』
ちょっと、ちょっと親父、涙声になるのやめてくださいよ!
本当に特に意味なく、こっちまで鼻啜っちゃうじゃない!
「パパ……」
『ああ、お父さんだよ。うん、本当に懐かしい。声でわかるよ、大きくなったなぁ』
くぅ、親父の声が嬉しそうに弾んでおる。
たかがその程度のことで、俺まで何か嬉しくなってるのマジで笑うんだがァ!
『こんな時間にごめんなぁ。ちょっと、急におまえの声が聞きたくなってな』
「そうなんだ……」
お袋の名前出てこないのは、まぁ、仕方がないね!
『もしかしたら寝てる時間だったか? それなら――』
「大丈夫だよ、今、夏休みだから!」
『ああ、そうか。もうそんな時期か……』
「パパは、お仕事忙しいの? 大丈夫? 病気になったりしてない?」
『もちろん、大丈夫だぞ。パパは体が強いんだ』
そこからしばらく、俺と親父はお互いの近況報告などをしていった。
『――そうか、学校でも仲のいい子ができたんだな。その子はどんな子なんだ?』
「え~っとね美芙柚ちゃんっていうんだけど……」
『女の子か! っはぁ~、さすがはパパの息子。モテるなぁ、アキラは』
「え、そうなの? パパもモテたの?」
『そうだな、パパも若い頃はそりゃもうモテて、ママにも――、この話はやめよう』
「あ、うん……」
弾ませてた声を急に重たくするのやめてもらえませんかね?
いきなり現実に戻ってんじゃねぇ! そういうところが隙があるっていうんだよ!
『おまえこそ、病気とかはしてないか? 大丈夫か?』
「うん、大丈夫だよ。僕、元気だよ!」
『そうか、それならいいんだが』
電話の向こうから伝わってくる安堵の感情。
こんな時間に来た電話だから何か重要な話かと思ったが、そうでもなさそうだ。
本当に、急に俺のことが気になったとか、なのかな。
『ところで、アキラ』
「何、パパ?」
『夏休みってことは、宿題もあるんだろ?』
「あるよ。今は、自由研究やってるよ!」
『お~、自由研究。パパも子供の頃はやったなぁ。何を研究してるんだ?』
「僕はね、宙色市の歴史を調べてるんだよ」
『宙色市の歴史をか! そりゃあ、難しいことをやってるんだなぁ、すごいなぁ!』
「エヘヘヘ……」
手放しに褒められて、悪い気はしない。それは本当だ。
親父も、十分以上俺と話して、すっかり緊張やぎこちなさも消えている。
「で、どうしてそこを気にするんだい、ツリーマンさんよ」
だから俺は、カマをかけた。
これで親父が何のことかわからないならば、それはそれで別によし。
本当にたまたまこのタイミングで親父が電話をかけてきただけってコトだ。
だったら気にする必要はない。楽しくお話し続行だ。
しかしそうでなかったら、どうしてくれようか。
っつーかね、さすがにタイミング的にも怪しいワケですよ、この電話。
元々、七星句に『集』の文字があって、九ツ目神社でのツリーマンの一件。
神主さんの話では、取り立てて特徴がない男、とのことだったが。
そういえば、ウチの親父も見た目は普通だったよな。
と、思っていた矢先の、その当人からの電話である。どう考えても怪しいだろ。
――以上の理由から、俺は親父にカマをかけてみることにした。
これで何も知らないなら、それでいいんだ。
むしろ俺は、そうであることを望んでる。親父は無関係なんだ、と。
『え、そりゃあパパの息子がどれだけ頑張ってるか気になってるからだよ! 一日で『七つ目石』まで辿り着けたのは本当にすごいぞ、さすがはアキラだなぁ~!』
お、親父ィィィィィィィィィィィィィィィィ――――ッ!!?
「…………あの、パパ?」
せめて誤魔化すとかしらばっくれるくらいはしろよォォォォォォォ――――ッ!
『ん? ……え。……あ! ……ツ、ツリーマンって何のことかなぁ~!』
「遅ェ、さすがにその反応は遅ェよ、親父ッ!」
ああああああああ、ついつい、口調がいつものに戻っちゃった!
え~い、もう知らん! ここからは親子としてじゃなく、ツリーマンとの会話だ!
『……いやぁ、まさかバレるとは思わなかったなぁ』
「何故そう思えた。このタイミングでの電話とか、クソ怪しいことをしておいて」
『おまえの声を聴きたくなったって言えば誤魔化せるかなって……』
「無理無理無理無理無理無理無理無理!」
『カタツムリ?』
「やっかましぃわ! ホント、あんたは常にどこかに隙があるなァ!」
今だって、俺と話してるのが楽しくて無防備になってただけだろ、絶対!
『むぅ、よくパパがツリーマンだってわかったなぁ』
「だってツリーマン→樹木男→樹木→ウッド→うつど→つどう→集、だろ?」
『…………』
「あれ、違った?」
『アキラ、もしやおまえ、天才……?』
「感動に打ち震えて絶句してただけか、このバカ親バカァ!」
ちくしょう、思いっきりシンラが重なる。やはり血は争えんのか……!
『まぁ、うん。そうだね、パパがツリーマンだ』
「しっかり認めやがったな。……あんた、俺が『出戻り』であることを」
『知ってる。ミフユちゃんのことも、おまえの家族のこともだ』
「そこまで知ってるのかよ」
『ああ、ついでに宙色UJSでのおまえとミフユちゃんのデートのことも――』
「オイ、やめろ! 何でそんなことまで知ってンだ!?」
『ちゃんとミフユちゃんを支えてやるんだぞ。おまえならきっとできるさ』
「うるせぇよ! 人生の先達ヅラしてんじゃねぇ、この覗き魔が!」
おのれ、顔が一気に熱くなってきたんだが!?
人のデート現場を覗き込むとか、プライバシーの侵害も甚だしいだろ!
『ま、パパはそういうのがわかる立場にあるんだよ、今』
「立場……? どういうことだよ、教えろよ、親父」
『悪いけど、それはできない。そういう『制約』なんだ』
「何だよ、そりゃあ……」
しばり? 制約? それとも誓約? 或いは、呪縛?
「あんたは『出戻り』なのか?」
『それも言えない』
そこも『制約』に関わる部分、ってことか。
『でも、おまえが真相に辿り着いたときには、きっとパパと会えるさ』
「そうかよ。じゃあ少し手伝っていけよ。あの『△』は、何なんだよ、あれは?」
『ああ、あれか。そのままだよ。明日にでもシイナちゃんに聞いてごらん』
「シイナに……?」
ふむ、それでわかるというのであれば、そうしよう。
『それと、パパから伝えられることを、あと二つ教えよう』
「あと二つ? 何だよ……?」
『まずは、パパの旧姓を調べてごらん。面白いことがわかるぞ』
「親父の旧姓? 金鐘崎になる前かよ」
『そうだ。それと、昼間におまえがブチのめした暴走族』
「ああ、だーくうぃんぐ何たら。それがどうした?」
『あのグループのボスは『出戻り』だ。注意はしておいた方がいいと思うぞ』
「……何?」
オイオイ、マジか。それはちょっと、さすがに無視できない情報だな。
「あんた、何でそんなことまで知ってるんだ?」
『悪い、それも教えられない。それと、そのボスの能力もわからない』
しばり、ってヤツですか。
だが、それでも十分な情報をいただいちまったな。
「貴重な情報ありがとよ、親父。その情報に、俺は何で報いればいいんだ?」
『もし、何かをパパに返そうと思うなら、元気でいてくれ、アキラ』
「あ?」
『おまえも親なら、わかるだろ』
……ああ、そう。そういうことね。確かに、一番の報酬はそれか。
「俺が調べてること、全部わかったらあんたに会えるんだよな?」
『ああ、会えるよ』
「じゃあ、待ってな。すぐに会いに行ってやるよ、親父」
俺がそう言うと、電話の向こうから楽しんでいるような気配が伝わってくる。
『そのときを楽しみにしてるぞ、アキラ』
そして、電話は切れた。
色々と隙が多い野郎だが、喋ってみて、やっぱり俺の父親なんだと感じた。
懐かしさが込み上げてくる。やっぱり俺は、金鐘崎アキラなんだな。
俺は部屋を出て、受話器を置きに行く。途中、そこにいたお袋に軽く尋ねてみた。
「なぁ、お袋」
「何だい、電話は終わったんだね」
「ああ、終わったけどさ。あのさ、親父のことなんだけど」
「うん」
「親父って、婿入りだったんだろ。金鐘崎姓だったってことは」
「そうだね。それが結婚の条件のひとつだったからねぇ」
「じゃあ、親父が金鐘崎になる前は何て苗字だったんだ? 俺、知らねぇんだよな」
「集さんの元の苗字かい? それだったらソラフネザカだねぇ」
…………え?
「宙船坂……、が、親父の元々の苗字、なのか?」
「そうだよ。金鐘崎も珍しいけど、こっちも随分珍しい苗字だったね」
お袋が懐かしむように言っているが、すでに俺は話を聞いていなかった。
俺達の事情を知り、俺に幾つもヒントを寄越した親父。
だが、肝心な真相は『制約』があるため話せないと言っていた。
何だよ、そりゃ。一体どういうことなんだ。
「親父、あんた一体、何者なんだ……?」
――明日は、長い一日になりそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる