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番の結び方
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「ディディ…!」
「シシリィ、大丈夫だったか」
「ん…まだ少し体が辛いだけ。それよりノエルは………」
居間に向かえばシシリィが兄といた。
ディディエの姿を見つけて顔を輝かせて駆け寄ってくるも言葉が途中で途切れる。
驚きに染まった瞳を見つめてディディエは視線を落とした。
ぱたん、と尾が床をたたく。
「シシリィ…俺はお前を番にすることができなくなった」
「…どういうこと」
シシリィの声が硬い。
わずかに震えてもいるようだった。
「ノエルの項を噛んだ。俺とあいつは番になった」
「それは…ノエルが発情状態になったから…?」
「…あぁ」
ディディエの足元にシシリィが崩れ落ちる。
慌ててその体を支えたがシシリィのほほに流れるものを見て言葉を失った。
「俺…俺、ずっと楽しみにしてた…ディディと会って、番になってくれって言われてからずっと楽しみにしてた…ディディに項噛まれるんだって、俺のほうが先に死んじゃうけど、一緒にいられるんだって」
「シシリィ…」
「俺が、ノエルの喉触らなければこんなことにならなかったんだ…!」
悲痛な声でシシリィは叫んだ。
その内容でノエルの状態異常の訳が分かった。
「シシリィ…」
「ごめん…ディディ…」
「いや、いい。顔をあげてくれ。お前の涙は見たくないんだ」
「やだ…」
「シシ…」
「俺、だってもうディディエのそばにいられないでしょう…?」
顔をあげたシシリィの顔にはとめどなく涙があふれている。
爪を丸めた指で涙を拭う。シシリィはディディエの手を取ればそれを握り締める。
「離れられるのか」
「…でき、るよ」
「嘘つけ」
好きだ、とディディエが囁く。
シシリィは目を丸くしてディディエに縋り付くように抱き着いた。包み込むようにシシリィを抱きしめてディディエは思案する。
何よりも大事なシシリィを失いたくはない。傷つけたくなくて、うなじを噛むのを遠慮していた自分を呪いたくなった。
さっさと噛んでいればこんなことにはならなかったのかもしれない。
「ディディエ」
「なんだ…」
「来い。シシリィも」
ディディエの父に呼ばれ二人は顔を見合わせる。
少し力の入らないシシリィを支えてディディエは再び部屋を出た。
父の行く先は先ほどまでノエルといた部屋である。
「……竜族はαでもあり、Ωでもある。同族での子供を作るために体はどちらにも適応している。ゆえにあのノエルという半人半獣も同じと見た。ディディエ」
「なんだ」
「シシリィとともにいることを望むか」
「当たり前だ…!長く愛している。どんな姿の子供を産んだとしても俺はシシリィとともに育てていく自信がある」
「俺も…ディディと一緒にいたい。こんなに愛している人は初めてなんだ…!」
二人の言葉にディディエの父は深く息を吐き出した。
「では、シシリィ。ノエルと番の契約を結ぶといい」
「…何を言っている…?番は一人だけだろう」
「何度も言わせるな。竜族はαとΩ二つの性を持つ。番が一人の相手なのは、自分に対応する性が一つだからだ。αのお前はΩの番一人のみ、Ωのシシリィはαの番一人のみ…だが、ノエルは自分のΩの番としてαであるお前を得た。ならば、ノエルのαの番としてはシシリィと契約できるはずだ」
ディディエとシシリィは顔を見合わせる。果たしてそんなことが可能なのだろうか。
ノエルのいる部屋に入るまで二人の疑問は晴れることはなかった。
「シシリィ、大丈夫だったか」
「ん…まだ少し体が辛いだけ。それよりノエルは………」
居間に向かえばシシリィが兄といた。
ディディエの姿を見つけて顔を輝かせて駆け寄ってくるも言葉が途中で途切れる。
驚きに染まった瞳を見つめてディディエは視線を落とした。
ぱたん、と尾が床をたたく。
「シシリィ…俺はお前を番にすることができなくなった」
「…どういうこと」
シシリィの声が硬い。
わずかに震えてもいるようだった。
「ノエルの項を噛んだ。俺とあいつは番になった」
「それは…ノエルが発情状態になったから…?」
「…あぁ」
ディディエの足元にシシリィが崩れ落ちる。
慌ててその体を支えたがシシリィのほほに流れるものを見て言葉を失った。
「俺…俺、ずっと楽しみにしてた…ディディと会って、番になってくれって言われてからずっと楽しみにしてた…ディディに項噛まれるんだって、俺のほうが先に死んじゃうけど、一緒にいられるんだって」
「シシリィ…」
「俺が、ノエルの喉触らなければこんなことにならなかったんだ…!」
悲痛な声でシシリィは叫んだ。
その内容でノエルの状態異常の訳が分かった。
「シシリィ…」
「ごめん…ディディ…」
「いや、いい。顔をあげてくれ。お前の涙は見たくないんだ」
「やだ…」
「シシ…」
「俺、だってもうディディエのそばにいられないでしょう…?」
顔をあげたシシリィの顔にはとめどなく涙があふれている。
爪を丸めた指で涙を拭う。シシリィはディディエの手を取ればそれを握り締める。
「離れられるのか」
「…でき、るよ」
「嘘つけ」
好きだ、とディディエが囁く。
シシリィは目を丸くしてディディエに縋り付くように抱き着いた。包み込むようにシシリィを抱きしめてディディエは思案する。
何よりも大事なシシリィを失いたくはない。傷つけたくなくて、うなじを噛むのを遠慮していた自分を呪いたくなった。
さっさと噛んでいればこんなことにはならなかったのかもしれない。
「ディディエ」
「なんだ…」
「来い。シシリィも」
ディディエの父に呼ばれ二人は顔を見合わせる。
少し力の入らないシシリィを支えてディディエは再び部屋を出た。
父の行く先は先ほどまでノエルといた部屋である。
「……竜族はαでもあり、Ωでもある。同族での子供を作るために体はどちらにも適応している。ゆえにあのノエルという半人半獣も同じと見た。ディディエ」
「なんだ」
「シシリィとともにいることを望むか」
「当たり前だ…!長く愛している。どんな姿の子供を産んだとしても俺はシシリィとともに育てていく自信がある」
「俺も…ディディと一緒にいたい。こんなに愛している人は初めてなんだ…!」
二人の言葉にディディエの父は深く息を吐き出した。
「では、シシリィ。ノエルと番の契約を結ぶといい」
「…何を言っている…?番は一人だけだろう」
「何度も言わせるな。竜族はαとΩ二つの性を持つ。番が一人の相手なのは、自分に対応する性が一つだからだ。αのお前はΩの番一人のみ、Ωのシシリィはαの番一人のみ…だが、ノエルは自分のΩの番としてαであるお前を得た。ならば、ノエルのαの番としてはシシリィと契約できるはずだ」
ディディエとシシリィは顔を見合わせる。果たしてそんなことが可能なのだろうか。
ノエルのいる部屋に入るまで二人の疑問は晴れることはなかった。
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