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07.心理療法
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レーベンは町外れにある丘に、タダノを案内した。
「こちらで横になってください」
「ここかい?」
タダノの視界が全て、黒で埋まった。強くかがやく星が数個、見えるだけだ。目がなれてくると、黒がすこしずつ濃い藍色にかわっていく。あちこちに、星々がちらつきはじめる。首をうごかすたびに、空をおおう星々の数は増えていく。最後には、赤や白い光がちりばめられた、そう大な宝石箱になった。
レーベンは、宇宙に目を向けながら、か細い声で語りはじめた。
「この宇宙は、まずビッグバンではじまりました。それがきっかけで極小の粒が結びつき、別の種類の粒が生まれ、それが別の粒子を取り込み、取り込んだもの同士が融合して、更に多くの粒子を生成し……と進化発展を繰り返し、最終的に生命を誕生させました。生命は気の遠くなるような年月を経て、人類を生み出すに至りました。いわば宇宙の歴史とは、超極小の粒から高等生物へと進化する道筋とも言えます」
レーベンのやたらと壮大な話も、無限に広がる空間が合わさると、ふしぎな説得力があった。
「宇宙は、極小の粒のままでも問題はなかったはずです。途中で進化が止まってもおかしくはなかった。それなのになぜ、一時の休みもなく、進化向上をつづけ、知性体まで進化したのでしょうか。無目的に行われてきたというのは、むしろ不自然ではないでしょうか」
「進化や発展をする何らかの意思や、エネルギーの流れが存在すると?」
レーベンは、こちらを向いて意味深げにうなずいた。
「そして、どこまでも続くこの果てしない宇宙で今、この時代、この時、この星の、この国の、この場所に、なぜかお父様が生み出されました。果てしなく続く、この時間と空間の中で、ほかでもない今このとき、この時代、この国の、この場所に、置かれていると言うことは、やはり意味があります。お父様自身で選び取ったわけではなく、気づいたときには選択の余地はなく、そこに定められていたからこそ、意味があるとは思えないでしょうか。ですから、お父様はここにいてもいなくてもかまわないような、ただ放り出されているだけの存在ではないのです。生まれさせられたからには、生きることを求められています。わたしも、お父様も」
「俺がここにいるのは、何か深い意味がある。そう言いたいんだな」
「そして、この逆境にも、意味はあります」
レーベンは確信に満ちた顔で、タダノをのぞき込んできた。
「くだらない。俺は宗教画を描いたおぼえはないぞ」
吐き捨てた言葉に、レーベンは反応した。
「人類史上『自分を必要とする何か』を持つ人が、逆境を力に変え、想像をこえる偉業をなし遂げる例には、事欠きません。たとえば、終末収容所や塹壕、防空壕といった、外界に一切希望を持てない限界状況下、最悪の事態に耐え、最後の努力をした人々は『自分を必要とする何か』を持っていました。自分以外の何かに尽くせる人は文字通り、どんな苦難にも耐えうるのです」
レーベンは手に持った本「意味への旅」をなでた。
「ですからもし、わたしの言葉が信じられないのであれば、こう解釈してかまいません。『必要とする何か』や『人生から問われていること』を信じることは、あくまで己の心の力を引き出すための心理療法である、と」
タダノはおもわずうなってしまった。
今の自分よりさらにひどい状況でも通用する、強力な心理療法。もし信じて嘘だったとしても、今よりはマシな心境で人生を終えることができるだろう。
レーベンの言葉は信じるに値すると、仮定して生きるのも、ありかもしれない。
「こちらで横になってください」
「ここかい?」
タダノの視界が全て、黒で埋まった。強くかがやく星が数個、見えるだけだ。目がなれてくると、黒がすこしずつ濃い藍色にかわっていく。あちこちに、星々がちらつきはじめる。首をうごかすたびに、空をおおう星々の数は増えていく。最後には、赤や白い光がちりばめられた、そう大な宝石箱になった。
レーベンは、宇宙に目を向けながら、か細い声で語りはじめた。
「この宇宙は、まずビッグバンではじまりました。それがきっかけで極小の粒が結びつき、別の種類の粒が生まれ、それが別の粒子を取り込み、取り込んだもの同士が融合して、更に多くの粒子を生成し……と進化発展を繰り返し、最終的に生命を誕生させました。生命は気の遠くなるような年月を経て、人類を生み出すに至りました。いわば宇宙の歴史とは、超極小の粒から高等生物へと進化する道筋とも言えます」
レーベンのやたらと壮大な話も、無限に広がる空間が合わさると、ふしぎな説得力があった。
「宇宙は、極小の粒のままでも問題はなかったはずです。途中で進化が止まってもおかしくはなかった。それなのになぜ、一時の休みもなく、進化向上をつづけ、知性体まで進化したのでしょうか。無目的に行われてきたというのは、むしろ不自然ではないでしょうか」
「進化や発展をする何らかの意思や、エネルギーの流れが存在すると?」
レーベンは、こちらを向いて意味深げにうなずいた。
「そして、どこまでも続くこの果てしない宇宙で今、この時代、この時、この星の、この国の、この場所に、なぜかお父様が生み出されました。果てしなく続く、この時間と空間の中で、ほかでもない今このとき、この時代、この国の、この場所に、置かれていると言うことは、やはり意味があります。お父様自身で選び取ったわけではなく、気づいたときには選択の余地はなく、そこに定められていたからこそ、意味があるとは思えないでしょうか。ですから、お父様はここにいてもいなくてもかまわないような、ただ放り出されているだけの存在ではないのです。生まれさせられたからには、生きることを求められています。わたしも、お父様も」
「俺がここにいるのは、何か深い意味がある。そう言いたいんだな」
「そして、この逆境にも、意味はあります」
レーベンは確信に満ちた顔で、タダノをのぞき込んできた。
「くだらない。俺は宗教画を描いたおぼえはないぞ」
吐き捨てた言葉に、レーベンは反応した。
「人類史上『自分を必要とする何か』を持つ人が、逆境を力に変え、想像をこえる偉業をなし遂げる例には、事欠きません。たとえば、終末収容所や塹壕、防空壕といった、外界に一切希望を持てない限界状況下、最悪の事態に耐え、最後の努力をした人々は『自分を必要とする何か』を持っていました。自分以外の何かに尽くせる人は文字通り、どんな苦難にも耐えうるのです」
レーベンは手に持った本「意味への旅」をなでた。
「ですからもし、わたしの言葉が信じられないのであれば、こう解釈してかまいません。『必要とする何か』や『人生から問われていること』を信じることは、あくまで己の心の力を引き出すための心理療法である、と」
タダノはおもわずうなってしまった。
今の自分よりさらにひどい状況でも通用する、強力な心理療法。もし信じて嘘だったとしても、今よりはマシな心境で人生を終えることができるだろう。
レーベンの言葉は信じるに値すると、仮定して生きるのも、ありかもしれない。
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