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レプスウィークス編
どこの世界にもガキ大将はいるみたいです
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耳の長い丸眼鏡の兎人が大人数の兎人たちに罵られ、虐められているところを目撃してしまった。
俺も経験があるからこそ、助けたいと思った。
アルバはこういう面倒事には率先して動くタイプだが、このときばかりは違った。
「お、いるねー。一二三……ざっと十人くらいか。カイ、お前はここに――」
「先に行く!」
アルバの話を最後まで聞かず、俺は飛び出す。
こんなとき大抵は俺が待っていて、アルバがいざこざに飛び入り参加しては兎武――兎武式闘術の通称――を試すのだ。
そしてボロボロになりながら戻ってくると、「勝ったぜ……」とVサインを片方の手でつくり突き出してくるのだった。
アルバは成人した屈強な兎人族の男たちとも互角を張れるほど、喧嘩慣れしていた。
いつもならここはアルバに任せて大丈夫と、自己保身を正当化し、高みの見物と洒落込んでいたかもしれない。
だが今回は違う。
虐められていたのが大人だったら、まだ状況は違ったのかもしれない。
しかし不幸にもそのときは、虐めている側と虐められている側どちらも子供だったのである。
かつての自身と重ね合う姿に思わず脚が動く。
気づけば俺は虐められていた子供を庇う形で立っていた。
「弱いもの虐めはやめろ!」
いつになく強気で言い放つ。
そのときの俺は、静かな清流のごとき憤怒を帯びていた。
この異世界にきて、初めて怒りを覚えた瞬間だった。
「あん?んだてめぇ」
「そこをどけ!こいつはタンク様のサンドバックなんだよ!」
取り巻き連中が吠える。
が、俺はそんな奴らのことは無視する。
こういうのはリーダーを潰さないと意味がないのだ。
取り巻き連中に構ってやる必要はない。
「あんたがここのリーダ―みたいだな」
俺は彼らのうち、一番体格がデカくて強そうな奴に話しかける。
タンクと呼ばれていたそいつは、とにかくデカい。
取り巻き連中の年齢層からして、恐らく俺と年齢は離れていないはずだろうが、それにしても体格が違いすぎる。
ムキムキというわけではないが、タンクの二の腕は俺の胴体より一回りも二回りも大きい。
そこから放たれるパンチは、尋常ではないだろう。
「オレ様は今、大層機嫌が悪いんだ!痛い目みたくなけりゃ消えろッ」
だが、ここで逃げちゃだめだ。
イジメを救うには、当人たち以外の誰かが手を差し伸べてやらなければならないのだ!
「嫌だね」
アルバが背後から現れる。
ニタリ、とアルバは不敵な笑みを浮かべていた。
(さすがだな……)
こういう勝負では、少しでも弱気な所を見せたら負けなのだ。
だからこそ、俺もアルバに習い、意地の悪そうな笑みを精いっぱい表情に湛えて見せる。
「……ふん、まあいい」
と、タンクは背を向けた。
諦めたのだろうか。
いや、俺のいないところでまたイジメるつもりなのかもしれない。
ここで懲らしめなければ、イジメをやめさせなければ。
「へー、逃げるんだ」
俺はなるべく余裕そうに、そう言ってのけた。
普段の俺からは想像もつかない発言に、横でアルバが驚く。
タンクは俺の挑発を聞くと、ニヤリと笑った。
「まあ俺は闘わねぇさ。俺はな!」
取り巻き連中がいつの間にやらジリジリと近寄ってきていた。
そのことにようやく気づいた俺は、身構える。
タンクはやや離れた位置にあった岩へと腰かける。
額には青筋が浮かんでいた。
「てめぇーらぁあ!!そいつを可愛がってやれぇえ!」
「「「「へい!」」」」
タンクの合図を皮切りに、殴り合いが始まった。
***
俺も経験があるからこそ、助けたいと思った。
アルバはこういう面倒事には率先して動くタイプだが、このときばかりは違った。
「お、いるねー。一二三……ざっと十人くらいか。カイ、お前はここに――」
「先に行く!」
アルバの話を最後まで聞かず、俺は飛び出す。
こんなとき大抵は俺が待っていて、アルバがいざこざに飛び入り参加しては兎武――兎武式闘術の通称――を試すのだ。
そしてボロボロになりながら戻ってくると、「勝ったぜ……」とVサインを片方の手でつくり突き出してくるのだった。
アルバは成人した屈強な兎人族の男たちとも互角を張れるほど、喧嘩慣れしていた。
いつもならここはアルバに任せて大丈夫と、自己保身を正当化し、高みの見物と洒落込んでいたかもしれない。
だが今回は違う。
虐められていたのが大人だったら、まだ状況は違ったのかもしれない。
しかし不幸にもそのときは、虐めている側と虐められている側どちらも子供だったのである。
かつての自身と重ね合う姿に思わず脚が動く。
気づけば俺は虐められていた子供を庇う形で立っていた。
「弱いもの虐めはやめろ!」
いつになく強気で言い放つ。
そのときの俺は、静かな清流のごとき憤怒を帯びていた。
この異世界にきて、初めて怒りを覚えた瞬間だった。
「あん?んだてめぇ」
「そこをどけ!こいつはタンク様のサンドバックなんだよ!」
取り巻き連中が吠える。
が、俺はそんな奴らのことは無視する。
こういうのはリーダーを潰さないと意味がないのだ。
取り巻き連中に構ってやる必要はない。
「あんたがここのリーダ―みたいだな」
俺は彼らのうち、一番体格がデカくて強そうな奴に話しかける。
タンクと呼ばれていたそいつは、とにかくデカい。
取り巻き連中の年齢層からして、恐らく俺と年齢は離れていないはずだろうが、それにしても体格が違いすぎる。
ムキムキというわけではないが、タンクの二の腕は俺の胴体より一回りも二回りも大きい。
そこから放たれるパンチは、尋常ではないだろう。
「オレ様は今、大層機嫌が悪いんだ!痛い目みたくなけりゃ消えろッ」
だが、ここで逃げちゃだめだ。
イジメを救うには、当人たち以外の誰かが手を差し伸べてやらなければならないのだ!
「嫌だね」
アルバが背後から現れる。
ニタリ、とアルバは不敵な笑みを浮かべていた。
(さすがだな……)
こういう勝負では、少しでも弱気な所を見せたら負けなのだ。
だからこそ、俺もアルバに習い、意地の悪そうな笑みを精いっぱい表情に湛えて見せる。
「……ふん、まあいい」
と、タンクは背を向けた。
諦めたのだろうか。
いや、俺のいないところでまたイジメるつもりなのかもしれない。
ここで懲らしめなければ、イジメをやめさせなければ。
「へー、逃げるんだ」
俺はなるべく余裕そうに、そう言ってのけた。
普段の俺からは想像もつかない発言に、横でアルバが驚く。
タンクは俺の挑発を聞くと、ニヤリと笑った。
「まあ俺は闘わねぇさ。俺はな!」
取り巻き連中がいつの間にやらジリジリと近寄ってきていた。
そのことにようやく気づいた俺は、身構える。
タンクはやや離れた位置にあった岩へと腰かける。
額には青筋が浮かんでいた。
「てめぇーらぁあ!!そいつを可愛がってやれぇえ!」
「「「「へい!」」」」
タンクの合図を皮切りに、殴り合いが始まった。
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