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第一章
神童
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転生後、僕は伯爵家の息子として生を受けた。
ユリウス・スクレ――それが僕の新たな名前であった。
父は正義感の強い、尊敬できる人物であった。
母も聡明であり、母の書庫には医学的知識の含む書籍も多くあったため、僕は大変満足であった。
僕は神への感謝の気持ちでいっぱいになった。
前世での生瀬治は家族との華やかな思い出というものをあまり持ち合わせてはいなかった。
美しい思い出以上に血塗れていたのだ。
彼の辿ってきた道程は。
だからだろうか、こうして立派な両親に恵まれ、幸せに日々を送れることに僕は感謝せずにはいられなかった。
「またいらしたのですか、ユリウス様」
両手を組んで胸元に寄せ、祈りをささげていると神父が声をかけてきた。
彼は凄腕の回復魔術師であり、ときどき教えてもらっている。
「はい。こうして安穏と生活できる幸福も、すべて全王神ゼプテル様のおかげですから」
「あなたぐらいの年頃の子供はみな、遊びに夢中で、粗暴な子供が多いものですが……。さすが伯爵様のご子息でいらっしゃいます」
「いえいえ、そんなことありませんよ。みな、きっと感謝していると思いますよ、健康でいられることに。でも照れくさくって、とても協会には足を運べないのですよ」
僕は毎日のように協会に足を運んでは、祈りをささげている。
本当は神父さんに回復魔法なるものを教えてもらうことも主要な目的ではあるのだが、仮に神父さんがいなかったとしても僕は毎度のように協会へと訪れ、祈っていただろうことも事実だ。
なぜなら、僕がこうしていま存在できていることこそが、神がいることの証明なのだから。
「いえ、たとえそうだとしても、ユリウス様のように真剣に神へと祈る子供はいないでしょう。私にはわかるのです。ユリウス様が本気で感謝の念を感じ、心から祈りを捧げていらっしゃることが。ご存知ですか?貴族階級の方々の間でユリウス様は、《神童》と呼ばれているのですよ?」
「そんな、恐縮ですよ。僕が神童だなんて、おそれおおい。本当の神童さんにご迷惑おかけしてしまいますよ」
そんな僕の言葉を聞いて、神父さんはふふっと笑った。
「ユリウス様は面白いことをおっしゃられる」
自分にはそんなことを言っている自覚はなかったが、とにかく悪い気はしなかった。
祈りが終わると、僕は神父さんに頼んで回復魔法の練習を始めた。
「いいですか、実はあの祈りをささげるという行為。あれは回復魔法の基礎といっても過言ではないのですよ」
「どういうことですか?」
「あの平静な状態で祈る、つまり念じること。これは回復魔法に深く関係します。そもそも魔法というのは、平静な状態でないと魔力の消費が激しくなり、効果も半減してしまうんです。まずはリラックス、次に祈るのです。ここが治ってほしい、とか。イメージと強い想いがとにかく大事なのです。」
「なるほど……」
「まずお手本として、ユリウス様に試しに回復魔法をおかけいたしますね」
「あ、お願いします」
神父が呪文を唱えると、僕へ向けてなにかを手のひらから吐き出した。
途端に僕の全身はポカポカと温かさに包まれ、活力が湧いて出てくる。
「これが回復魔術の《治癒》です。これは初級魔法でしてね――」
曰はく、内側から気のようなものを活発化させ、自然治癒を促進させるものらしい。
これは疲労回復にも使用される、便利な魔法だと神父さんが得意げに教えてくれた。
しかし、僕は内心驚きのあまりに反応ができずにいた。
(……なんかショボいな)
なんとなく針治療とかお灸の延長線上な気がしてしまう。
僕が想像していたのは、それこそ失った腕が元に戻るとか、そういった次元の回復魔法であった。
こんなに機嫌よさそうに喋る神父さんに聞くのも躊躇われたが、おもいきって聞いてみた。
「あの……もっとこう…。とれた腕がつながるとか、傷口がふさがるとかは、ないんですか?」
そういうと、神父はキョトンとして、途端に大爆笑した。
「失礼しましたユリウス様。しかしそれはさすがにありません。どんなに回復魔法や薬剤が発達したとしても、それはあり得ないことでしょう」
僕はそのとき、この世界の常識に頷くしかなかった。
***********************
僕が五歳の頃、父は処刑された。
罪は謀反だという。
父は貴族には珍しい正義感が強いタイプで、仲間内にも厳しい人物だったので大変敵が多かった。
恨みをもっている人物も大勢いるだろう。
嵌められたのだ。
そうとわかったとき、僕は憤りと同時に落胆を覚えた。
結局、人間は変わらないと突き付けられたような気がしたからだ。
それから母は僕をつれて家をでた。
服は地味目のものに着替え、馬車に乗って数時間移動した。
この世界では罪人の家族も罰を受けるので、逃亡生活が始まったというわけだ。
屋敷でのときのように、本で医学が勉強できなくなることは悲しいが、こうして捕まっていないことに感謝する他ないだろう。
ちなみに馬車は執事に運転させている。
執事もともに生活することになっているので――合意のもと――行先がバレることはおそらくないだろう。
しばらくして小さな村が見えた。
そうして僕らの幸福はあっけなく潰えた。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
眠いのと疲れとで、話が全然進んでませんね。
機を見てこの回の内容を、もっと詳細にして膨らませていきたいとおもいますが、とりあえず先にス進みたいと思います。
ユリウス・スクレ――それが僕の新たな名前であった。
父は正義感の強い、尊敬できる人物であった。
母も聡明であり、母の書庫には医学的知識の含む書籍も多くあったため、僕は大変満足であった。
僕は神への感謝の気持ちでいっぱいになった。
前世での生瀬治は家族との華やかな思い出というものをあまり持ち合わせてはいなかった。
美しい思い出以上に血塗れていたのだ。
彼の辿ってきた道程は。
だからだろうか、こうして立派な両親に恵まれ、幸せに日々を送れることに僕は感謝せずにはいられなかった。
「またいらしたのですか、ユリウス様」
両手を組んで胸元に寄せ、祈りをささげていると神父が声をかけてきた。
彼は凄腕の回復魔術師であり、ときどき教えてもらっている。
「はい。こうして安穏と生活できる幸福も、すべて全王神ゼプテル様のおかげですから」
「あなたぐらいの年頃の子供はみな、遊びに夢中で、粗暴な子供が多いものですが……。さすが伯爵様のご子息でいらっしゃいます」
「いえいえ、そんなことありませんよ。みな、きっと感謝していると思いますよ、健康でいられることに。でも照れくさくって、とても協会には足を運べないのですよ」
僕は毎日のように協会に足を運んでは、祈りをささげている。
本当は神父さんに回復魔法なるものを教えてもらうことも主要な目的ではあるのだが、仮に神父さんがいなかったとしても僕は毎度のように協会へと訪れ、祈っていただろうことも事実だ。
なぜなら、僕がこうしていま存在できていることこそが、神がいることの証明なのだから。
「いえ、たとえそうだとしても、ユリウス様のように真剣に神へと祈る子供はいないでしょう。私にはわかるのです。ユリウス様が本気で感謝の念を感じ、心から祈りを捧げていらっしゃることが。ご存知ですか?貴族階級の方々の間でユリウス様は、《神童》と呼ばれているのですよ?」
「そんな、恐縮ですよ。僕が神童だなんて、おそれおおい。本当の神童さんにご迷惑おかけしてしまいますよ」
そんな僕の言葉を聞いて、神父さんはふふっと笑った。
「ユリウス様は面白いことをおっしゃられる」
自分にはそんなことを言っている自覚はなかったが、とにかく悪い気はしなかった。
祈りが終わると、僕は神父さんに頼んで回復魔法の練習を始めた。
「いいですか、実はあの祈りをささげるという行為。あれは回復魔法の基礎といっても過言ではないのですよ」
「どういうことですか?」
「あの平静な状態で祈る、つまり念じること。これは回復魔法に深く関係します。そもそも魔法というのは、平静な状態でないと魔力の消費が激しくなり、効果も半減してしまうんです。まずはリラックス、次に祈るのです。ここが治ってほしい、とか。イメージと強い想いがとにかく大事なのです。」
「なるほど……」
「まずお手本として、ユリウス様に試しに回復魔法をおかけいたしますね」
「あ、お願いします」
神父が呪文を唱えると、僕へ向けてなにかを手のひらから吐き出した。
途端に僕の全身はポカポカと温かさに包まれ、活力が湧いて出てくる。
「これが回復魔術の《治癒》です。これは初級魔法でしてね――」
曰はく、内側から気のようなものを活発化させ、自然治癒を促進させるものらしい。
これは疲労回復にも使用される、便利な魔法だと神父さんが得意げに教えてくれた。
しかし、僕は内心驚きのあまりに反応ができずにいた。
(……なんかショボいな)
なんとなく針治療とかお灸の延長線上な気がしてしまう。
僕が想像していたのは、それこそ失った腕が元に戻るとか、そういった次元の回復魔法であった。
こんなに機嫌よさそうに喋る神父さんに聞くのも躊躇われたが、おもいきって聞いてみた。
「あの……もっとこう…。とれた腕がつながるとか、傷口がふさがるとかは、ないんですか?」
そういうと、神父はキョトンとして、途端に大爆笑した。
「失礼しましたユリウス様。しかしそれはさすがにありません。どんなに回復魔法や薬剤が発達したとしても、それはあり得ないことでしょう」
僕はそのとき、この世界の常識に頷くしかなかった。
***********************
僕が五歳の頃、父は処刑された。
罪は謀反だという。
父は貴族には珍しい正義感が強いタイプで、仲間内にも厳しい人物だったので大変敵が多かった。
恨みをもっている人物も大勢いるだろう。
嵌められたのだ。
そうとわかったとき、僕は憤りと同時に落胆を覚えた。
結局、人間は変わらないと突き付けられたような気がしたからだ。
それから母は僕をつれて家をでた。
服は地味目のものに着替え、馬車に乗って数時間移動した。
この世界では罪人の家族も罰を受けるので、逃亡生活が始まったというわけだ。
屋敷でのときのように、本で医学が勉強できなくなることは悲しいが、こうして捕まっていないことに感謝する他ないだろう。
ちなみに馬車は執事に運転させている。
執事もともに生活することになっているので――合意のもと――行先がバレることはおそらくないだろう。
しばらくして小さな村が見えた。
そうして僕らの幸福はあっけなく潰えた。
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眠いのと疲れとで、話が全然進んでませんね。
機を見てこの回の内容を、もっと詳細にして膨らませていきたいとおもいますが、とりあえず先にス進みたいと思います。
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