14 / 57
第四話 ピクニック日和 その3「楽しい楽しいボール遊び」
しおりを挟む
「ねえねえアスティ、ローナちゃんボール持ってきたからこれで遊ぼうよ」
「わかった! マァチと団長もやるか!!」
「私はいい。片づけた後、デザートの準備したい」
「じゃあ我はマァチを手伝おう。あんまり遠くに行きすぎるんじゃないぞ、二人とも」
「はーい」
「わかったー!!」
ローナとアストリアはボールを抱えて戦場へと向かっていった。これはつまり、ピクニックエリアが拡張されたということである。
「ボールあてっこしようよ。ボールを投げあって体に当たったら負けのやつ」
「いいぞ!! じゃあ私から投げる!!」
勢いよくアストリアから投げられたボールがローナの元へと向かう。もちろんローナだって大人しく当たるのを待っているわけもなく、ボールを避けた。
しかし避けたボールは後ろで戦う兵士の後頭部に直撃し、彼は倒れてしまった。
「じゃあ今度はこっちの番」
ローナは念力でボールを浮かべ、そして投げた。その勢いはアストリアの球威に負けず劣らずである。
だが、アストリアだって大人しく当たるのを待つわけがなく、近くにいた兵士を掴んで盾にし、身を防いだ。
「名付けてそこら辺にいたやつシールドだ!!」
そこら辺にいたやつシールドは顔にボールが当たってしまい、これまた気絶してしまった。
そして落ちたボールをアストリアが広い、また勢いよく投げる。
「だったらこっちは憑りつかれシールドだ!」
ローナは近くの兵士に取り憑くと、ボールの前まで歩みよりその体で受け止めさせた。
今回は頭でなくお腹に当たったので気絶はしなかったが、ローナが憑依を解除した瞬間に、彼はものすごい腹痛に襲われるのであった。
「おいローナ!! 取り憑いたらお前に当てられないだろ! ずるいだろ!!」
「ごめんごめーん」
そもそも幽霊の体に、ボールが当たらないことにアストリアはまだ気づいていない。そんな アスティに向かってローナが再度ボールを投げる。
「そこら辺にいたやつシールド2号を食らえー!!」
アストリアはまたしてもそこら辺にいた兵士を掴むと、今度はシールドではなくバットの様にスイングしてボールを打ち返した。
そこら辺にいたやつシールド2号はもちろんのこと、打ち返された球が別の兵士にあたり、そしてそれが跳弾してまた別の兵士に当たるという連鎖反応で次々と気絶者が増えていく。
こうして二人のボール遊びでどんどん兵士が戦地で倒れていくのであった。
一方そのころ、ピクニックシートではデーツが皿を布で拭き、マァチは杖から出る冷風でボウルを冷やしながら生クリームを泡立てていた。
「クリームを混ぜるぐらいなら我がやってやろう。だから遊んできてもいいのだぞ」
「いい。 運動は好きじゃないし。それにクリームを泡立てるのにもコツがいる」
「むう、我だって料理はできるのだがな」
「いい」
デーツはやれやれといった表情で、目を伏せたマァチの顔を見た。
「私の顔に何かついてる?」
「ああ、跳ねたクリームがほっぺたに」
するとデーツは、マァチの頬についたクリームをそっとキスするように舐めとった。その行為に思わずマッチは顔を赤らめる。
「バカ」
「はははははは」
その時バーペラが戻ってきた。
「おや、楽しそうだね二人とも」
「あぁ、だいぶ楽しんじゃった。それよりタナカはどうだった?」
「案の定カマキリウサギに襲われていたよ。でも彼なら大丈夫だと思う」
「そうかそうか」
デーツはバーベラの言葉を聞いて、何やら満足そうな表情を浮かべた。
一方、マァチが何かを探しているのかバスケットの中を覗き込んでいた。
「どうした?」
「忘れ物したみたい」
「僕が取ってこようか」
「いや、いい。 借りてくる」
マァチも戦場の方へと向かっていった。
「ふうん。まあ、いっか。それより団長、ちょっと疲れたから横になってもいい?」
「んー? はいはい、どうぞ」
バーベラの言う横になるという意味に隠れたもう一つの欲求を察し、デーツは胡坐をかいていた状態から正座へと姿勢を変え、その太ももの上にバーベラが頭を乗せて横になった。
彼女は膝枕をしてほしかったのである。
「ああ、すごい安定感」
「伊達にムチムチしてるわけではない」
「ナイスムチムチー。この寝心地、疲れが吹き飛ぶよ」
「昨晩から、あの店の子から戦争の情報を聞きだしたりと、忙しかったもんな。お疲れさん」
「あそこの店は兵士とか傭兵がよく来るみたいでさ。適当に指名しただけでも、結構な情報握っている子と会えるんだよね」
「規模の小さい争いでよかったよ。これなら多少の妨害で戦争が中断できる。
だけど、まさか合戦の日が今日行われるとは、運がいいのか悪いのか」
「僕にとって運がいいか悪いかは、好みの子とヤれるかどうかだから別にどうでも」
そして二人で笑いあった。そんな二人の様子は、見る人によっては恋人同士にも、親友同士にも、親子や姉妹と様々な形に見えるだろう。
「それよりもあのタナカっていうの、いつまで置いておく気だい?
みんなあなたの命令ならなんでも従うけど、でも賊を飼うなんてことはやったことなかったろ?
ローナとアストリアは新しいおもちゃが増えた感覚だろうけど、マァチなんかは結構警戒してるし」
「マァチの人間嫌いは我もよくわかってるさ。 だが、タナカはしばらく置いておく」
「気に入ったのかい?」
「気に入るというか、少し気になる点があってな。
まあ強いて気に入ったというなら、薔薇の手入れが終わったあと、あいつの目が輝いていたのだ。 まるで初めて生きる意味を持ったかのような目。いやそれは言い過ぎか」
「ふうん。なんでもいいや。僕たちはあなたが何を考えていようと、あなたのことが大好きだからね」
「ああ、我もみんなのことが大好きさ」
「わかった! マァチと団長もやるか!!」
「私はいい。片づけた後、デザートの準備したい」
「じゃあ我はマァチを手伝おう。あんまり遠くに行きすぎるんじゃないぞ、二人とも」
「はーい」
「わかったー!!」
ローナとアストリアはボールを抱えて戦場へと向かっていった。これはつまり、ピクニックエリアが拡張されたということである。
「ボールあてっこしようよ。ボールを投げあって体に当たったら負けのやつ」
「いいぞ!! じゃあ私から投げる!!」
勢いよくアストリアから投げられたボールがローナの元へと向かう。もちろんローナだって大人しく当たるのを待っているわけもなく、ボールを避けた。
しかし避けたボールは後ろで戦う兵士の後頭部に直撃し、彼は倒れてしまった。
「じゃあ今度はこっちの番」
ローナは念力でボールを浮かべ、そして投げた。その勢いはアストリアの球威に負けず劣らずである。
だが、アストリアだって大人しく当たるのを待つわけがなく、近くにいた兵士を掴んで盾にし、身を防いだ。
「名付けてそこら辺にいたやつシールドだ!!」
そこら辺にいたやつシールドは顔にボールが当たってしまい、これまた気絶してしまった。
そして落ちたボールをアストリアが広い、また勢いよく投げる。
「だったらこっちは憑りつかれシールドだ!」
ローナは近くの兵士に取り憑くと、ボールの前まで歩みよりその体で受け止めさせた。
今回は頭でなくお腹に当たったので気絶はしなかったが、ローナが憑依を解除した瞬間に、彼はものすごい腹痛に襲われるのであった。
「おいローナ!! 取り憑いたらお前に当てられないだろ! ずるいだろ!!」
「ごめんごめーん」
そもそも幽霊の体に、ボールが当たらないことにアストリアはまだ気づいていない。そんな アスティに向かってローナが再度ボールを投げる。
「そこら辺にいたやつシールド2号を食らえー!!」
アストリアはまたしてもそこら辺にいた兵士を掴むと、今度はシールドではなくバットの様にスイングしてボールを打ち返した。
そこら辺にいたやつシールド2号はもちろんのこと、打ち返された球が別の兵士にあたり、そしてそれが跳弾してまた別の兵士に当たるという連鎖反応で次々と気絶者が増えていく。
こうして二人のボール遊びでどんどん兵士が戦地で倒れていくのであった。
一方そのころ、ピクニックシートではデーツが皿を布で拭き、マァチは杖から出る冷風でボウルを冷やしながら生クリームを泡立てていた。
「クリームを混ぜるぐらいなら我がやってやろう。だから遊んできてもいいのだぞ」
「いい。 運動は好きじゃないし。それにクリームを泡立てるのにもコツがいる」
「むう、我だって料理はできるのだがな」
「いい」
デーツはやれやれといった表情で、目を伏せたマァチの顔を見た。
「私の顔に何かついてる?」
「ああ、跳ねたクリームがほっぺたに」
するとデーツは、マァチの頬についたクリームをそっとキスするように舐めとった。その行為に思わずマッチは顔を赤らめる。
「バカ」
「はははははは」
その時バーペラが戻ってきた。
「おや、楽しそうだね二人とも」
「あぁ、だいぶ楽しんじゃった。それよりタナカはどうだった?」
「案の定カマキリウサギに襲われていたよ。でも彼なら大丈夫だと思う」
「そうかそうか」
デーツはバーベラの言葉を聞いて、何やら満足そうな表情を浮かべた。
一方、マァチが何かを探しているのかバスケットの中を覗き込んでいた。
「どうした?」
「忘れ物したみたい」
「僕が取ってこようか」
「いや、いい。 借りてくる」
マァチも戦場の方へと向かっていった。
「ふうん。まあ、いっか。それより団長、ちょっと疲れたから横になってもいい?」
「んー? はいはい、どうぞ」
バーベラの言う横になるという意味に隠れたもう一つの欲求を察し、デーツは胡坐をかいていた状態から正座へと姿勢を変え、その太ももの上にバーベラが頭を乗せて横になった。
彼女は膝枕をしてほしかったのである。
「ああ、すごい安定感」
「伊達にムチムチしてるわけではない」
「ナイスムチムチー。この寝心地、疲れが吹き飛ぶよ」
「昨晩から、あの店の子から戦争の情報を聞きだしたりと、忙しかったもんな。お疲れさん」
「あそこの店は兵士とか傭兵がよく来るみたいでさ。適当に指名しただけでも、結構な情報握っている子と会えるんだよね」
「規模の小さい争いでよかったよ。これなら多少の妨害で戦争が中断できる。
だけど、まさか合戦の日が今日行われるとは、運がいいのか悪いのか」
「僕にとって運がいいか悪いかは、好みの子とヤれるかどうかだから別にどうでも」
そして二人で笑いあった。そんな二人の様子は、見る人によっては恋人同士にも、親友同士にも、親子や姉妹と様々な形に見えるだろう。
「それよりもあのタナカっていうの、いつまで置いておく気だい?
みんなあなたの命令ならなんでも従うけど、でも賊を飼うなんてことはやったことなかったろ?
ローナとアストリアは新しいおもちゃが増えた感覚だろうけど、マァチなんかは結構警戒してるし」
「マァチの人間嫌いは我もよくわかってるさ。 だが、タナカはしばらく置いておく」
「気に入ったのかい?」
「気に入るというか、少し気になる点があってな。
まあ強いて気に入ったというなら、薔薇の手入れが終わったあと、あいつの目が輝いていたのだ。 まるで初めて生きる意味を持ったかのような目。いやそれは言い過ぎか」
「ふうん。なんでもいいや。僕たちはあなたが何を考えていようと、あなたのことが大好きだからね」
「ああ、我もみんなのことが大好きさ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる