15 / 57
第四話 ピクニック日和 その4「チーズケーキと夕焼けと」
しおりを挟む
さて、その団長が大好きなみんなの一部が今何をやっているのかというと、まずローナとアストリアの頭の中がお子様コンビのボール遊びは、とうとうハンバンドの師団長の元へと迫っていった。 兵士たちは抵抗したものの、次々とボールの前に倒れていく。
「おい、副団長!どうすればいい!」
「ええと、それはその・・・・・・さいなら!」
副団長は命の危機を感じたのか、師団長を置いて一目散に逃げだした。そしてその瞬間が来た。
「よーしローナ!!! いっくぞー!!!!」
アストリアが思いっきり放つその豪速球は、空気の摩擦が加わり火の玉と化して師団長へと向かっていく。
それはまさに火の矢のごとく、彼の体にねじ込まれそして破裂した。
「あーあ。ボールがなくなったからこれでおしまーい。ローナちゃんの勝ちねー」
「ちくしょー!!!」
こうしてハンバンド兵団は、二人のボール遊びと共に砕け散ったのであった。だが、これでミカデウス兵団の勝利かというと。そういうわけでもない。
勝利はまだかと焦るミカデウスの団長の前に、一人の少女が降り立った。魔法で空を飛んできたマァチである。
「おい! お前はなんだ!」
「ムテ騎士団の魔法使いマァチ。あんたのその剣ってまだ汚れてないよね。貸して」
「はあ?」
急にやってきて、急にぶしつけな要求をしてくるこの小娘に怒り立ったミカデウスの師団長は剣を抜いた。
「いいだろう! おまえにくれてやる! この一撃をな!」
剣を振り下ろす師団長。しかしマァチは動じることもなく杖を突きだして雷を食らわせる。
「ありがとう。くれるんだ」
全身が痺れて動けない師団長の剣を奪うと、マァチはピクニックシートへと飛んで行った。
こうして、ミカデウス兵団とハンバンド兵団はほぼ同時に指揮官を失った。
そしてその様子を見ていた者が各軍にそれぞれ一人ずついた。ミーちゃんとハーちゃんである。
ミーちゃんもハーちゃんも、偶然の一致ではあったが、二人とも同時に撤退の号令のラッパを吹いた。戦いの始まりを告げに来たミーちゃんハーちゃんが、この戦いの終わりも告げたのだ。
主にボール遊びで多くの兵士を失った各兵団はボロボロになりながら、それぞれの国へと帰っていく。
次いつ二つの軍がぶつかり合うのかはわからない。だが少なくともこの高原地が戦場になることはもうないだろう。なぜなら、また誰かがピクニックしに来るかもしれないのだから。
「なんでもいいけど、そろそろ小腹が空いてきたね。子供たちは?」
「すぐ帰ってくるだろう。 あ、来た来た」
デーツが、こちらに向かってくるローナとアストリアに手を振る。
「お腹空いた!!」
「ねえ、おやつまだー?」
「ちょっと待て。 今マァチが」
するとその時マァチも戻ってきた。
「ごめん、ナイフ持ってくるの忘れてたから」
ミカデウスの師団長から奪った剣を掲げるマァチ。
「それをナイフ代わりに?」
「うん、さっきもらった」
「じゃあ早く切って早く切って」
「早く!!早く!!」
マァチはバスケットからチーズケーキを取り出し、それを5等分に切り分けて、更にその上に先ほど泡立てていたホイップクリームを山盛りに乗せた。
「じゃあみなさん手を合わせて、いただきます」
マァチが音頭をとっていただきますして、みんなでケーキを食べた。
「外で食うチーズケーキは格別だな」
「チーズケーキってクセが強いけど、マァチが作るのはしつこさがなくて、でも濃厚な甘さがちゃんと口に残ってて本当に最高の味だよ」
「だからほめ過ぎだってば」
「マァチの顔真っ赤っかー」
「あの夕日みたいに真っ赤だ!!!」
アストリアが高現地に沈んでいく夕日を指す。
その綺麗な朱色はピクニック日和の締めくくりにふさわしい。
「ああ、いい日だったなムテ騎士団。 ところで、いつの間にか合戦が終わってるが・・・・・・いつ帰った?」
誰も答えを知らない。答えを知らないのでとりあえず全員であの夕日に向かって笑ったとさ。
次回へつづく。
「おい、副団長!どうすればいい!」
「ええと、それはその・・・・・・さいなら!」
副団長は命の危機を感じたのか、師団長を置いて一目散に逃げだした。そしてその瞬間が来た。
「よーしローナ!!! いっくぞー!!!!」
アストリアが思いっきり放つその豪速球は、空気の摩擦が加わり火の玉と化して師団長へと向かっていく。
それはまさに火の矢のごとく、彼の体にねじ込まれそして破裂した。
「あーあ。ボールがなくなったからこれでおしまーい。ローナちゃんの勝ちねー」
「ちくしょー!!!」
こうしてハンバンド兵団は、二人のボール遊びと共に砕け散ったのであった。だが、これでミカデウス兵団の勝利かというと。そういうわけでもない。
勝利はまだかと焦るミカデウスの団長の前に、一人の少女が降り立った。魔法で空を飛んできたマァチである。
「おい! お前はなんだ!」
「ムテ騎士団の魔法使いマァチ。あんたのその剣ってまだ汚れてないよね。貸して」
「はあ?」
急にやってきて、急にぶしつけな要求をしてくるこの小娘に怒り立ったミカデウスの師団長は剣を抜いた。
「いいだろう! おまえにくれてやる! この一撃をな!」
剣を振り下ろす師団長。しかしマァチは動じることもなく杖を突きだして雷を食らわせる。
「ありがとう。くれるんだ」
全身が痺れて動けない師団長の剣を奪うと、マァチはピクニックシートへと飛んで行った。
こうして、ミカデウス兵団とハンバンド兵団はほぼ同時に指揮官を失った。
そしてその様子を見ていた者が各軍にそれぞれ一人ずついた。ミーちゃんとハーちゃんである。
ミーちゃんもハーちゃんも、偶然の一致ではあったが、二人とも同時に撤退の号令のラッパを吹いた。戦いの始まりを告げに来たミーちゃんハーちゃんが、この戦いの終わりも告げたのだ。
主にボール遊びで多くの兵士を失った各兵団はボロボロになりながら、それぞれの国へと帰っていく。
次いつ二つの軍がぶつかり合うのかはわからない。だが少なくともこの高原地が戦場になることはもうないだろう。なぜなら、また誰かがピクニックしに来るかもしれないのだから。
「なんでもいいけど、そろそろ小腹が空いてきたね。子供たちは?」
「すぐ帰ってくるだろう。 あ、来た来た」
デーツが、こちらに向かってくるローナとアストリアに手を振る。
「お腹空いた!!」
「ねえ、おやつまだー?」
「ちょっと待て。 今マァチが」
するとその時マァチも戻ってきた。
「ごめん、ナイフ持ってくるの忘れてたから」
ミカデウスの師団長から奪った剣を掲げるマァチ。
「それをナイフ代わりに?」
「うん、さっきもらった」
「じゃあ早く切って早く切って」
「早く!!早く!!」
マァチはバスケットからチーズケーキを取り出し、それを5等分に切り分けて、更にその上に先ほど泡立てていたホイップクリームを山盛りに乗せた。
「じゃあみなさん手を合わせて、いただきます」
マァチが音頭をとっていただきますして、みんなでケーキを食べた。
「外で食うチーズケーキは格別だな」
「チーズケーキってクセが強いけど、マァチが作るのはしつこさがなくて、でも濃厚な甘さがちゃんと口に残ってて本当に最高の味だよ」
「だからほめ過ぎだってば」
「マァチの顔真っ赤っかー」
「あの夕日みたいに真っ赤だ!!!」
アストリアが高現地に沈んでいく夕日を指す。
その綺麗な朱色はピクニック日和の締めくくりにふさわしい。
「ああ、いい日だったなムテ騎士団。 ところで、いつの間にか合戦が終わってるが・・・・・・いつ帰った?」
誰も答えを知らない。答えを知らないのでとりあえず全員であの夕日に向かって笑ったとさ。
次回へつづく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる