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第六話 最高ランククエスト その7「危険なふたり ペリーヌvsバーベラ」
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奇しくも、ゲントン、トマズ、ザイモンの三者ともに同じタイミングで部屋を出ていたようで、それぞれ顔を突き合わせる。
「勝ったのか?」
「多分?」
疑問符を顔に描いたまま、お互いを見るザイモンとゲントン。しかし、それとは対照的にトマズは泣いて喜んでいる。
「やったー! 僕の勝ちだー!」
「トマズは、なんかいい勝負をしたみたいだな」
「いつもチームで浮き気味のあいつが喜んでるなら……まあヨシとしよう」
しかし、その笑顔が一転。トマズもまた釈然としない顔となった。
「僕は本当に勝ったのだろうか。果たして、勝利とは何ぞや」
「いや、お前こそ何ぞや」
「どんな勝負してきたんだお前は。いや、俺も大概だったが」
3人全員が釈然としない顔となった。しかしそのうちゲントンだけは、あることを思い出した。
「そうだ。ペリーヌがまだ戻ってきていないじゃないか」
急いでペリーヌとバーベラが入った扉まで向かうゲントン。しかし、扉の前ではタナカが立ち塞いでいた。その表情はひどく沈んでおり、暗い顔をしていた。
「そこをどけ! 俺はペリーヌを助けに行きたいんだ!」
「悪いことは言わない。やめておけ」
タナカの目は涙で潤んでいた。しかし、ゲントンはそれよりも扉の奥から聞こえてくるペリーヌの苦しみの声の方が気になった。
「彼女がピンチなんだ。お前を殺してでも俺は行くぞ」
「そうか。そこまで言うなら通してやる。ただし、俺は忠告したからな。いいな?」
タナカの忠告には耳を貸さずに、扉を破壊して部屋に入って行くゲントン。その後ろをザイモンとトマズが追う。
「やはり彼女を一人で行かせるべきじゃなかった! 回復術師が戦えるわけないのに!
お前が苦しんでいる間、俺はバカな女の大声を聞いてるだけだった。すまない! 許してくれ!
そして、この戦いが終わったら俺は、俺はお前にプロポーズする! だからまだ死ぬんじゃないぞペリーヌ!」
そう叫びながら部屋の奥へと進んだゲントンが目にした光景。
それはベッドの上で裸同士で抱き合うペリーヌとバーベラの姿であった。
「すごい! 女の子同士ってこんなに気持ちいいのですね!」
「ふふふ、女の子の気持ちいい場所を一番知っているのは、女の子だからね」
ペリーヌの顔は苦しみとは真逆の悦びに満ちた笑顔であった。
それを見たゲントンは、文字通り開いた口がふさがらなかった。そしてその肩にそっと手を置くザイモンとトマズ。
「だから忠告したのに。あのエルフは女癖が悪い女なんだ」
後から入ってきたタナカはそう告げるが、今のゲントンには馬事東風。
それを見かねたトマズが助け舟を出そうとこう言った。
「こ、これはなんらかの催眠魔法のせいかもしれません。あるいは媚薬が使われた可能性も」
そんなトマズに向かって、枕を剛速球のごとくバーベラが投げつける。
いくらやわらかい枕でも、彼女の高速の腕にかかれば立派な凶器へと変わり、それを食らったトマズは後ろに吹き飛んだ。
「僕はそんなせこい手を使って女性を落とすのは大嫌いなんだ。
いいかい? 僕の真の力は、押せば抱ける女かどうかを瞬時に見分ける能力なのさ!」
「クソ最低な能力!」
そうツッコんだタナカにも高速枕投げがお見舞いされた。
「いや、そんなバカなことは! 彼女は真面目でこんな色ごとには疎いはず! だ、だよな?」
ゲントンのためにザイモンがフォローし始める。だが、そんな彼らの思いを裏切るかのように、ペリーヌはバーベラに寄り添いながらこう言った。
「抱きしめられた瞬間に、”あ、私この人と出会うために生まれてきたんだ”って本気で思いましたの」
おーっと打つ手なしと、ザイモンは唇をかんで天井を仰いだ。そしてペリーヌの言葉は続く。
「だいたい、あなたがたがわたくしのことを軽んじているのが不快でしたの。
回復術師は一人では戦えないだとか、女の子だから前線では危ないだとか、ほんとうんざりでしたわ。あと、人の話聞きませんし」
「それに関してはあんたも大概」
起き上がったタナカがツッコむ。
「それにゲントンさんに至っては、毎日いやらしい目線をこっちに送ってきて、しかも自分ではそれで真面目な態度とってるつもりでいるのが心底気持ち悪いし、あと臭いし、ごついのはタイプじゃありませんし、そもそも顔が嫌い」
「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ペリーヌの言葉にとうとう打ちのめされたゲントンが、白目剥きながら壊れた笛のような声で叫んだ。
「ぴい?」
「さあ? 心が壊れた瞬間に出る音なんじゃない?」
最早救いようがないと判断したのか、ザイモンと起き上がったトマズは呆れながら会話する。
「だいたいゲントン。さっきも言ったが、パーティ同士で恋愛感情を持つのが間違いだったんだよ。
恋をするなら、俺みたいに親しくなり過ぎない距離感の女性を見つけないと」
「そういうザイモンさんの告白する相手はいったい?」
「冒険者ギルドの受付の子さ。彼女、俺に気があるみたいでさ。最近よく会話する機会も増えてんだ」
するとベッドの後ろの方にある扉から、その冒険者ギルドの受付の子が下着姿で入ってきて、ベッドの上のバーベラに飛びついた。
「ダーリン私も抱いてよ~」
「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
バーベラに甘える彼女の姿に、ザイモンも白目で叫ぶ。
「あの、な、なんでここに?」
ザイモンの代わりにトマズが疑問を投げかける。
「なんでって。そもそも冒険者ギルドとムテ騎士団は裏で繋がってるのよ。
定期的に調子こいたパーティを送り込んでは、お灸をすえてもらうのがこのクエストの真の目的なわけ」
「だから今日、こいつらが来るのが事前にわかってたのか」
事の真相に呆れるタナカ。そしてさらにザイモンが隣で発狂する。
「ぴぴぴいいいいいいいいいいいい!!」
「あっ! 最初から裏切られてたことが追い打ちに!」
「でもさ、いつも送り込んでくれるパーティはもう少し強かったよ? こいつら今までで最低レベルだったんだけど」
「うん。もう少し骨のある戦いがしたかった」
「賢いだけじゃ面白くない!!!!!」
ローナ、マァチ、アストリアが部屋に入ってきた。
「すみません。本来なら皆様に戦いを楽しんでもらいたくて、ある程度の高ランクパーティを送っているのですが。
なんかこの勇者が俺たち最高ランクだろ~っとかうざかったもんだから、さっさと懲らしめてほしくて、雑魚なのについ」
「ぴいいいいいい!」
「ていうか、そもそもこいつの色目遣いが心底気持ち悪くて吐きそうで」
「ぴいいいいいい!」
「ところであなたの名前なんだっけ? ざ、ザコタロー? だっけ?」
「ぴいいいいいいいいいい!」
「もうやめたげて!!!」
タナカはこの惨状に思わず嘆いた。
「勝ったのか?」
「多分?」
疑問符を顔に描いたまま、お互いを見るザイモンとゲントン。しかし、それとは対照的にトマズは泣いて喜んでいる。
「やったー! 僕の勝ちだー!」
「トマズは、なんかいい勝負をしたみたいだな」
「いつもチームで浮き気味のあいつが喜んでるなら……まあヨシとしよう」
しかし、その笑顔が一転。トマズもまた釈然としない顔となった。
「僕は本当に勝ったのだろうか。果たして、勝利とは何ぞや」
「いや、お前こそ何ぞや」
「どんな勝負してきたんだお前は。いや、俺も大概だったが」
3人全員が釈然としない顔となった。しかしそのうちゲントンだけは、あることを思い出した。
「そうだ。ペリーヌがまだ戻ってきていないじゃないか」
急いでペリーヌとバーベラが入った扉まで向かうゲントン。しかし、扉の前ではタナカが立ち塞いでいた。その表情はひどく沈んでおり、暗い顔をしていた。
「そこをどけ! 俺はペリーヌを助けに行きたいんだ!」
「悪いことは言わない。やめておけ」
タナカの目は涙で潤んでいた。しかし、ゲントンはそれよりも扉の奥から聞こえてくるペリーヌの苦しみの声の方が気になった。
「彼女がピンチなんだ。お前を殺してでも俺は行くぞ」
「そうか。そこまで言うなら通してやる。ただし、俺は忠告したからな。いいな?」
タナカの忠告には耳を貸さずに、扉を破壊して部屋に入って行くゲントン。その後ろをザイモンとトマズが追う。
「やはり彼女を一人で行かせるべきじゃなかった! 回復術師が戦えるわけないのに!
お前が苦しんでいる間、俺はバカな女の大声を聞いてるだけだった。すまない! 許してくれ!
そして、この戦いが終わったら俺は、俺はお前にプロポーズする! だからまだ死ぬんじゃないぞペリーヌ!」
そう叫びながら部屋の奥へと進んだゲントンが目にした光景。
それはベッドの上で裸同士で抱き合うペリーヌとバーベラの姿であった。
「すごい! 女の子同士ってこんなに気持ちいいのですね!」
「ふふふ、女の子の気持ちいい場所を一番知っているのは、女の子だからね」
ペリーヌの顔は苦しみとは真逆の悦びに満ちた笑顔であった。
それを見たゲントンは、文字通り開いた口がふさがらなかった。そしてその肩にそっと手を置くザイモンとトマズ。
「だから忠告したのに。あのエルフは女癖が悪い女なんだ」
後から入ってきたタナカはそう告げるが、今のゲントンには馬事東風。
それを見かねたトマズが助け舟を出そうとこう言った。
「こ、これはなんらかの催眠魔法のせいかもしれません。あるいは媚薬が使われた可能性も」
そんなトマズに向かって、枕を剛速球のごとくバーベラが投げつける。
いくらやわらかい枕でも、彼女の高速の腕にかかれば立派な凶器へと変わり、それを食らったトマズは後ろに吹き飛んだ。
「僕はそんなせこい手を使って女性を落とすのは大嫌いなんだ。
いいかい? 僕の真の力は、押せば抱ける女かどうかを瞬時に見分ける能力なのさ!」
「クソ最低な能力!」
そうツッコんだタナカにも高速枕投げがお見舞いされた。
「いや、そんなバカなことは! 彼女は真面目でこんな色ごとには疎いはず! だ、だよな?」
ゲントンのためにザイモンがフォローし始める。だが、そんな彼らの思いを裏切るかのように、ペリーヌはバーベラに寄り添いながらこう言った。
「抱きしめられた瞬間に、”あ、私この人と出会うために生まれてきたんだ”って本気で思いましたの」
おーっと打つ手なしと、ザイモンは唇をかんで天井を仰いだ。そしてペリーヌの言葉は続く。
「だいたい、あなたがたがわたくしのことを軽んじているのが不快でしたの。
回復術師は一人では戦えないだとか、女の子だから前線では危ないだとか、ほんとうんざりでしたわ。あと、人の話聞きませんし」
「それに関してはあんたも大概」
起き上がったタナカがツッコむ。
「それにゲントンさんに至っては、毎日いやらしい目線をこっちに送ってきて、しかも自分ではそれで真面目な態度とってるつもりでいるのが心底気持ち悪いし、あと臭いし、ごついのはタイプじゃありませんし、そもそも顔が嫌い」
「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ペリーヌの言葉にとうとう打ちのめされたゲントンが、白目剥きながら壊れた笛のような声で叫んだ。
「ぴい?」
「さあ? 心が壊れた瞬間に出る音なんじゃない?」
最早救いようがないと判断したのか、ザイモンと起き上がったトマズは呆れながら会話する。
「だいたいゲントン。さっきも言ったが、パーティ同士で恋愛感情を持つのが間違いだったんだよ。
恋をするなら、俺みたいに親しくなり過ぎない距離感の女性を見つけないと」
「そういうザイモンさんの告白する相手はいったい?」
「冒険者ギルドの受付の子さ。彼女、俺に気があるみたいでさ。最近よく会話する機会も増えてんだ」
するとベッドの後ろの方にある扉から、その冒険者ギルドの受付の子が下着姿で入ってきて、ベッドの上のバーベラに飛びついた。
「ダーリン私も抱いてよ~」
「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
バーベラに甘える彼女の姿に、ザイモンも白目で叫ぶ。
「あの、な、なんでここに?」
ザイモンの代わりにトマズが疑問を投げかける。
「なんでって。そもそも冒険者ギルドとムテ騎士団は裏で繋がってるのよ。
定期的に調子こいたパーティを送り込んでは、お灸をすえてもらうのがこのクエストの真の目的なわけ」
「だから今日、こいつらが来るのが事前にわかってたのか」
事の真相に呆れるタナカ。そしてさらにザイモンが隣で発狂する。
「ぴぴぴいいいいいいいいいいいい!!」
「あっ! 最初から裏切られてたことが追い打ちに!」
「でもさ、いつも送り込んでくれるパーティはもう少し強かったよ? こいつら今までで最低レベルだったんだけど」
「うん。もう少し骨のある戦いがしたかった」
「賢いだけじゃ面白くない!!!!!」
ローナ、マァチ、アストリアが部屋に入ってきた。
「すみません。本来なら皆様に戦いを楽しんでもらいたくて、ある程度の高ランクパーティを送っているのですが。
なんかこの勇者が俺たち最高ランクだろ~っとかうざかったもんだから、さっさと懲らしめてほしくて、雑魚なのについ」
「ぴいいいいいい!」
「ていうか、そもそもこいつの色目遣いが心底気持ち悪くて吐きそうで」
「ぴいいいいいい!」
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タナカはこの惨状に思わず嘆いた。
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