39 / 57
第八話 今更の世界観説明 その6「100点」
しおりを挟む
次の日、ベバニーは同僚である胸がすごいというリボンの子に揺り起こされた。
「ちょっと、いつまで寝てるの」
「あ、レイボンさん。おはようございます」
リボンをつけたレイボンさん。微妙に覚えづらい名前だね。
「あれ? お客様は? ていうかもう朝?!」
「寝ぼけてる場合じゃないわよ。店長が夜逃げしたって」
「はあ!?」
ベバニーはことの顛末を聞かされる。
朝起きたら、エルフの客、つまりはバーベラから店長は二度と戻ってこないことを教えられ、そして全員にチップとしてお金を置いて去っていったという。
「なんかその人が言うには、新しい経営者を送るから残りたい人は残ってもいいってさ。
でも、みんな結構貰ったからこれ持って田舎に戻るとか、町で他の仕事見つけるとか言ってるけど」
「レイボンさんは?」
「私は考え中。そりゃあお金あるならこの店は去りたいけど、帰る場所もやりたいこともないしさ。
そういうあんたはどうするわけ?」
「僕はお金貰ってないですし」
「え? でもアレはあんたのじゃない?」
レイボンの指差す方に目をやると、壁に描かれた地図の下に硬貨がたくさん積まれているのが見えた。
「わっ! こんなに貰えるんですか!? あの人達何者!?」
「早くしまわないと誰かに盗られるよ」
「は、はい!」
壁まで寄って硬貨を拾うベバニー。すると、地図の下に文字が書いてるのが見えた。
「“100点とってみな”か」
その文字を読みながら、壁の地図の境界線をなぞってみる。
「レイボンさん……僕、旅に出ようと思います」
「旅? いいね。私もついて行ってもいい?」
ベバニーは重い決心を伝えたつもりだったが、レイボンはその重さの何十倍の軽さで返答した。
「え? ふーん、本当になんかできちゃうんだな仲間って……」
「今なんて?」
「なんでもないです。それよりいいですよ。一緒に行きましょう。
僕も一人じゃ不安でしたし」
「やった! じゃあ早速準備しよう」
「そういえばあの人達の名前聞いてなかったな」
「ちゃんとした名前は私も聞いてなかったっけど、でも自分達はムテ騎士団だって名乗ってた」
「ムテ騎士団か。いずれどっかで会えるかな? 会えるよね」
こうしてベバニーとレイボンは旅に出た。その日は雲ひとつない快晴の天気であった。
一方そんな青空の中、バーベラはデーツを背負って走っていた。ただし、高速で動くと会話できないので、時速100キロ程の速度でだが。
「本当にあのゴキブリ野郎を放ってよかったの?」
「ああ。売人は泳がせた方が顧客の動きがよくわかる」
デーツはそう言いながら、奪ったマダラ麻の葉が詰まった袋を、遠くの泥沼に目掛けて投げ、袋はそのまま沈んでいった。
「でもかなりの雑魚ぽかったよ? 例の名簿に載ってる連中全員を取り押さえるのは、まだまだ時間がかかりそう」
「そうは言うけど、その中から風俗店を優先して潰したいって言ったのはお前だろ」
「それはそうなんだけどさ。
でもやっぱり僕は許せないんだよ。薬を使って女性の尊厳を踏みにじる連中が。わかってるでしょ?」
デーツはバーベラの怒りに対して、それ以上は語らなかった。
「それより団長。なんだか楽しそうにしてたけど、何か面白い話は聞けたかい?」
「ああちょっとだけな。また今度会えたら、どんな話をしてくれるのか楽しみだ」
登っていく太陽を見て、デーツの心も晴れやかだった。
なお帰った直後にタナカのおばさんコールを耳にして、ブチギレたのはまた別の話である。
次回へつづく。
「ちょっと、いつまで寝てるの」
「あ、レイボンさん。おはようございます」
リボンをつけたレイボンさん。微妙に覚えづらい名前だね。
「あれ? お客様は? ていうかもう朝?!」
「寝ぼけてる場合じゃないわよ。店長が夜逃げしたって」
「はあ!?」
ベバニーはことの顛末を聞かされる。
朝起きたら、エルフの客、つまりはバーベラから店長は二度と戻ってこないことを教えられ、そして全員にチップとしてお金を置いて去っていったという。
「なんかその人が言うには、新しい経営者を送るから残りたい人は残ってもいいってさ。
でも、みんな結構貰ったからこれ持って田舎に戻るとか、町で他の仕事見つけるとか言ってるけど」
「レイボンさんは?」
「私は考え中。そりゃあお金あるならこの店は去りたいけど、帰る場所もやりたいこともないしさ。
そういうあんたはどうするわけ?」
「僕はお金貰ってないですし」
「え? でもアレはあんたのじゃない?」
レイボンの指差す方に目をやると、壁に描かれた地図の下に硬貨がたくさん積まれているのが見えた。
「わっ! こんなに貰えるんですか!? あの人達何者!?」
「早くしまわないと誰かに盗られるよ」
「は、はい!」
壁まで寄って硬貨を拾うベバニー。すると、地図の下に文字が書いてるのが見えた。
「“100点とってみな”か」
その文字を読みながら、壁の地図の境界線をなぞってみる。
「レイボンさん……僕、旅に出ようと思います」
「旅? いいね。私もついて行ってもいい?」
ベバニーは重い決心を伝えたつもりだったが、レイボンはその重さの何十倍の軽さで返答した。
「え? ふーん、本当になんかできちゃうんだな仲間って……」
「今なんて?」
「なんでもないです。それよりいいですよ。一緒に行きましょう。
僕も一人じゃ不安でしたし」
「やった! じゃあ早速準備しよう」
「そういえばあの人達の名前聞いてなかったな」
「ちゃんとした名前は私も聞いてなかったっけど、でも自分達はムテ騎士団だって名乗ってた」
「ムテ騎士団か。いずれどっかで会えるかな? 会えるよね」
こうしてベバニーとレイボンは旅に出た。その日は雲ひとつない快晴の天気であった。
一方そんな青空の中、バーベラはデーツを背負って走っていた。ただし、高速で動くと会話できないので、時速100キロ程の速度でだが。
「本当にあのゴキブリ野郎を放ってよかったの?」
「ああ。売人は泳がせた方が顧客の動きがよくわかる」
デーツはそう言いながら、奪ったマダラ麻の葉が詰まった袋を、遠くの泥沼に目掛けて投げ、袋はそのまま沈んでいった。
「でもかなりの雑魚ぽかったよ? 例の名簿に載ってる連中全員を取り押さえるのは、まだまだ時間がかかりそう」
「そうは言うけど、その中から風俗店を優先して潰したいって言ったのはお前だろ」
「それはそうなんだけどさ。
でもやっぱり僕は許せないんだよ。薬を使って女性の尊厳を踏みにじる連中が。わかってるでしょ?」
デーツはバーベラの怒りに対して、それ以上は語らなかった。
「それより団長。なんだか楽しそうにしてたけど、何か面白い話は聞けたかい?」
「ああちょっとだけな。また今度会えたら、どんな話をしてくれるのか楽しみだ」
登っていく太陽を見て、デーツの心も晴れやかだった。
なお帰った直後にタナカのおばさんコールを耳にして、ブチギレたのはまた別の話である。
次回へつづく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる