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記念日

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「ありがとう」


「こちらこそありがとう」


軽いキスをして、見つめ合う。
私は野良の頬を撫で、髭をいじる。


「そしたら、今日は記念日だ。
のこ、夜はレストランで食事をしようか」


「素敵。そうしよう。私は綺麗にして行こうっと」


「よし、じゃあ俺も久々に服を揃えようかな」


「それいいね、二人でおめかししてお出かけ楽しそう。
あ、野良、この奥のクローゼット少し空いてるから、野良の服を置いていって。
そしたら、荷物増えないから楽でしょ」


「ありがとう。それなら躊躇なく服を揃えられる。君のとなりに並んで少しでも恥ずかしくないように服を整えるよ」

野良の服は私は嫌いじゃない。
寧ろオシャレだ。
シンプルながら、落ち着いた印象的で……。


「ねぇ、野良って服とかどうしてたの?
バッグって入りきらないじゃない?」


「あぁ、実はあのクラブでの仕事の前は海外に行ってたんだよ。

それでね、俺がもう5年ぐらい愛用していたお気に入りのキャリーバッグがあったんだ。

向こうで足もとが本当にひどい場所があったんだけど、そこで長時間移動してたらタイヤが壊れてしまった。

移動も厳しい状況になり、一部の荷物を持ちあとキャリーバッグとその中にあった服達は全て向こうで処分する事になってしまったんだよ。

それで下着やインナーは持ってきたんだけど、
着てる服以外は何も無くなってしまったんだ。

実家にも一部服はあるけど、新たにキャリーバッグも服も北海道で買おうと思ってた。

でも、今日は君との記念日を過ごすために服は揃える。俺はセンスなくて…一緒に行ってアドバイスくれるかな?」


「そんなことがあったんだ。
私もセンスはないけど、勿論一緒に行きましょ。デートだね。食器洗ったら、出る支度するね」


「いやいや、俺が食器は洗っておくから、支度をしておいで」


野良はとても優しく微笑む。
昨日よりも表情が柔らかく話し方も優しかった。


「ありがとう。まずメイクする」


「わかった。でも、のこはそのままでも綺麗だよ」


「やめてよ。綺麗じゃないし、こんなんで外は出られないよ」


「女の子だな。まぁ、ここは任せて」
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