ルーズベルト亡き世

エトーのねこ(略称:えねこ)

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わくわくどくそせん1939/08/23

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 大日本帝国のハルハ河事変に合わせて東欧諸国が動いたのは夏の息吹もまだ残る8月下旬であった。一方で、ドイツ第三帝国がその東欧諸国の留守を狙って動き出すかと言えば、そうは問屋が卸さなかった。なぜならば……。
「副総統、本当に宜しいのですな?」
「仕方なかろう、こんなことが総統に知られたらエライことになる」
「で、しょうな。然らば、我らも東部戦線に加わる、ということで……」
 ……そう、ドイツ第三帝国は独ソ不可侵条約を締結するのではなく日独防共協定に従って独ソ戦を開始したのだ!
 ドイツ首脳部は憤懣やるかたない様相であったが、この時期にドイツ第三帝国がソビエト連邦を攻撃したのは予想外の波及を生んだ……。

   ふむ、なかなか、どうして。
「ドイツ第三帝国がソビエト連邦に攻め込んだようです」
 駐英ドイツ大使より情報を得た外交官は、急ぎイギリス首相チェンバレンの下へと転がり込んだ。一方で、チェンバレンは珍しく顔色良くそれに対応した。
「ああ、知っているとも」
「どうします、ドイツに宣戦布告しますか?」
「莫迦言っちゃいけない。無法者同士が勝手に殺し合ってくれるんだ、我らは静観するぞ」
 ここでイギリスが選んだ戦術コマンドは「様子を見る」であった。無論、日和見的な行為は戦場では最悪手であったのだが、彼らはイギリス人である。この当時、表面上は世界の覇者として君臨していたのだ、それは少なくとも「表面上」としては「余裕」であった。事実、チェンバレンも食が進んでおり、精神状態は良好とも言えた。
「宜しいので……?」
「ああ、それにここで我らが中立を保つことで講和条約を締結する場を保持しなければならん」
 そして、イギリスが中立を保つことにはもう一つの理由があった。大国同士の講和条約を締結できるのは大国だけである。故に、イギリスが中立である戦争は絶好の講和会議が保障されているとも言えた。
「……畏まりました、それではご随意に」

   むむむ、こいつぁ、なかなか……。
「大統領、ドイツ第三帝国が動きました」
 駐英ドイツ大使よりやや遅れて駐仏ドイツ大使より情報を得た外交官は、ルブラン大統領へ急ぎ連絡した。それに対してルブランは即座に次の語句を言い放ったと言う。
「イギリスはどう出た!」
 イギリスがどう出たかを訊ねたルブラン。如何に英仏が呉越同舟の中といえど、船が到着するまでは船の中で暴れるわけにも行かず、故に連合国としての同盟関係を継続している以上過去の怨念だけで袂を分かつ行為は愚策であった。無論、彼がイギリスの動向を気にしたのは、それだけではないのだが。
「中立を保つそうです」
「……ならば、我らだけドイツに宣戦布告するわけにもいかんな」
 宿敵よりも仇敵、それが彼らの現在の外交方針であった。如何にヴェルサイユ条約でドイツを封じたといえど、それは力任せに封じただけであり刃向かうのは目に見えて明らかだったからだ。故に、何も此方から戦争を仕掛けるという行為は、慎んだ方が国益とすら言えた。
「まあ、そうでしょうな。それに、折角マジノ線を作ったのです、要塞線にも一働きしてもらわねば」
「それもある。それもあるが……。ガムラン将軍を呼べ!」
「ははっ!」

   はははっ、こいつぁ面白くなってきた!
統領ドゥーチェ、ドイツが動きました。ソビエト連邦に攻めかかるようです」
 情報大臣であるアメは、四人官ではないとはいえ重要な副官である。予てよりドイツの情報大臣カナリスからいろいろと青写真を受け取っていたが、今度のニュースは強烈なものであった。
「アディめ……、一人で防共十字軍を背負おうってか。そうはいかんぞ、バルボ!空軍は動けるか!」
「ああ、いつでも大丈夫だ、しかしいいのか?」
 イタロ・バルボ。一説には眼前のドゥーチェ統領よりも重要視されている、空軍大臣であり同時に四人官でもあった。この当時はまだムッソリーニとの仲は「険悪」とまでは言い難く、せいぜい三流ゴシップ紙ハースト・ペーパー等に不仲説がゴシップ程度に流れるだけであった。
「いいも悪いもあるものか、この風に乗り遅れて見ろ、生涯マヌケ扱いされるぞ!」
「応ともさ!」
 斯くて、ムッソリーニの冒険が始まった。その道程は、カエサルなるか、あるいはドン・キホーテなるか。

 もう、大方把握できている読者も多いだろう。……通称、「ソビエト戦争」が始まった瞬間である……。
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