25 / 51
Glorious_Flotte1939/09/11
しおりを挟む
大日本帝国は、尚もハルハ河事変を継続していた。一方で、諸国列強もまたソビエト戦争を開始した。通称、「反紅戦争」と称されるそれは而して、ほぼその年の内には決着が付くことになる……。
「レニングラードを砲撃で落とす!?」
「正気か」
ドイツの将校団はあるニュースで持ちきりだった。何でも、レーダー提督がヒトラー総統に対して自信満々に海軍によるレニングラード陥落作戦を進言したというのだ。無論、彼も名誉欲や派閥争いだけで狂言を演じるわけではなかった。この作戦には、重要なキーコードが存在した。それは……。
「イギリスが局外中立を表明しています、大丈夫でしょう」
……イギリスの局外中立を前提とした作戦であった。つまりは、どうせイギリスと打ち合ったり潜水艦による通商破壊をすると判断して戦力配置をしていたクリーグス・マリーネ達であったが、それをせずに済むのであればその分だけ海軍戦力の負担は減ることになる。負担が減ったら当然、他の戦線に戦力を割ける。つまりは、そういうことだった。
「しかしだな……」
さすがに、難色を示すある将校。それに対して他の将校はこんなことを言い出した。
「そんなことより、空軍こそ大丈夫なんですか?」
「何がだ」
「噂に寄れば、同盟国から買い取った空母の設計すら行うというではありませんか、流石に、飛行機の設計と艦艇の設計は根本から異なりますぞ?」
同盟国から買い取った空母。正確には色々と違うのだが、関東大震災によりほぼスクラップになってしまった赤城型二番艦「天城」はこんな所に姿形を変えて存在していた。ドイツでは後にこの艦を「グラーフ・ツェッペリン」と名付けるのだが、それを知る者は誰も居ない。
「そのことなんだがな……」
そして、海軍将校に問い詰められた空軍将校はある「噂話」を遂に白状した。その、「噂話」とは……。
「それ、ゲーリング国家元帥は御存知なんですか?」
「知ってるならばこんなひそひそ声で話すかよ」
「あっ、あー……」
……ゲーリング追放計画であった。それが、政局からなのかあるいはドイツからなのか、それともこの世からなのかは、まだ誰も知らない。
「ま、そういうことだ。一説には、なんだがな……」
そして、この「噂話」にはまだ続きがあった。それは……。
「……本当ですか、それ」
「さてな、あくまで噂だ。でなくば、総統自らの口から「ワルキューレ作戦」への指図が出るわけ無かろう」
「うわぁ…………」
……「ワルキューレ作戦」とは本来ヒトラー暗殺計画なのだが、なぜかヒトラーはそれを知っており、それを逆にゲーリング相手への罠に仕組みを変えるように命じていた。それだけ、ゲーリングという存在はこの当時危ういものだったようだ。
……かくて、1939年9月。クリーグス・マリーネはキールを出航、一路バルト海へ向かいスオミの援護砲撃に向かった。その艦隊の内訳は主力艦艇だけでもビスマルク、ティルピッツ、アトミラール・グラーフ・シュペー、シャルンホルスト、グナイゼナウ、アドミラル・シェーア、そして国名を冠したドイッチュラントとドイツの大型艦艇がほぼそろい踏みであった。
そして、現地時間に直して9月11日10時45分。クリーグス・マリーネは作戦を開始した! ……後に「グロリアス・フロッテ」と称されるドイツの大型艦艇が一同に顔を合わせた敵要塞拠点、レニングラードに対する一大砲撃作戦である……。
「レニングラードを砲撃で落とす!?」
「正気か」
ドイツの将校団はあるニュースで持ちきりだった。何でも、レーダー提督がヒトラー総統に対して自信満々に海軍によるレニングラード陥落作戦を進言したというのだ。無論、彼も名誉欲や派閥争いだけで狂言を演じるわけではなかった。この作戦には、重要なキーコードが存在した。それは……。
「イギリスが局外中立を表明しています、大丈夫でしょう」
……イギリスの局外中立を前提とした作戦であった。つまりは、どうせイギリスと打ち合ったり潜水艦による通商破壊をすると判断して戦力配置をしていたクリーグス・マリーネ達であったが、それをせずに済むのであればその分だけ海軍戦力の負担は減ることになる。負担が減ったら当然、他の戦線に戦力を割ける。つまりは、そういうことだった。
「しかしだな……」
さすがに、難色を示すある将校。それに対して他の将校はこんなことを言い出した。
「そんなことより、空軍こそ大丈夫なんですか?」
「何がだ」
「噂に寄れば、同盟国から買い取った空母の設計すら行うというではありませんか、流石に、飛行機の設計と艦艇の設計は根本から異なりますぞ?」
同盟国から買い取った空母。正確には色々と違うのだが、関東大震災によりほぼスクラップになってしまった赤城型二番艦「天城」はこんな所に姿形を変えて存在していた。ドイツでは後にこの艦を「グラーフ・ツェッペリン」と名付けるのだが、それを知る者は誰も居ない。
「そのことなんだがな……」
そして、海軍将校に問い詰められた空軍将校はある「噂話」を遂に白状した。その、「噂話」とは……。
「それ、ゲーリング国家元帥は御存知なんですか?」
「知ってるならばこんなひそひそ声で話すかよ」
「あっ、あー……」
……ゲーリング追放計画であった。それが、政局からなのかあるいはドイツからなのか、それともこの世からなのかは、まだ誰も知らない。
「ま、そういうことだ。一説には、なんだがな……」
そして、この「噂話」にはまだ続きがあった。それは……。
「……本当ですか、それ」
「さてな、あくまで噂だ。でなくば、総統自らの口から「ワルキューレ作戦」への指図が出るわけ無かろう」
「うわぁ…………」
……「ワルキューレ作戦」とは本来ヒトラー暗殺計画なのだが、なぜかヒトラーはそれを知っており、それを逆にゲーリング相手への罠に仕組みを変えるように命じていた。それだけ、ゲーリングという存在はこの当時危ういものだったようだ。
……かくて、1939年9月。クリーグス・マリーネはキールを出航、一路バルト海へ向かいスオミの援護砲撃に向かった。その艦隊の内訳は主力艦艇だけでもビスマルク、ティルピッツ、アトミラール・グラーフ・シュペー、シャルンホルスト、グナイゼナウ、アドミラル・シェーア、そして国名を冠したドイッチュラントとドイツの大型艦艇がほぼそろい踏みであった。
そして、現地時間に直して9月11日10時45分。クリーグス・マリーネは作戦を開始した! ……後に「グロリアス・フロッテ」と称されるドイツの大型艦艇が一同に顔を合わせた敵要塞拠点、レニングラードに対する一大砲撃作戦である……。
1
あなたにおすすめの小説
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
電子の帝国
Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか
明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~
蒼 飛雲
歴史・時代
ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。
その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。
そして、昭和一六年一二月八日。
日本は米英蘭に対して宣戦を布告。
未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。
多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
現在1945年中盤まで執筆
鎮西八郎為朝戦国時代二転生ス~阿蘇から始める天下統一~
惟宗正史
歴史・時代
鎮西八郎為朝。幼い頃に吸収に追放されるが、逆に九州を統一し、保元の乱では平清盛にも恐れられた最強の武士が九州の戦国時代に転生!阿蘇大宮司家を乗っ取った為朝が戦国時代を席捲する物語。 毎週土曜日更新!(予定)
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる