御稜威の光  =天地に響け、無辜の咆吼=

エトーのねこ(略称:えねこ)

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第一分章:ベンガル湾の大和

日本軍から見た第一次ベンガル湾海戦

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 第一次ベンガル湾海戦は、日本軍から見れば巡洋艦一隻の損傷だけでイギリス海軍東洋艦隊をあらかた叩き潰したという、間違いなくパーフェクト・ゲームと言える戦いであった。少なくとも、戦術的には日露戦争の再来と言えるほどの、大勝利なんてレベルではないほどの完全勝利であった。
 だが、戦略的にはどうであったか。確かに、この一戦を以てマレー・ビルマ地域どころかインドの一部地域に至るまでの戦局を日の丸一色に変えたのは戦略的に見れば非常に有意義な勝利であろう。だが、画竜点睛を欠くの格言通り、この海戦はある一点だけを以て戦略的にはある程度イーブン引き分けに近い勝利と言えた。その、欠いている点睛とは……言うまでもあるまい、アッヅ環礁である。
 第一次ベンガル湾海戦が起こった後、第二次ベンガル湾海戦が起きるまでその秘密基地を発見し得なかった(と、いうよりは、発見したから第二次ベンガル湾海戦が起きたわけだが)帝国海軍は日本海海戦のような「一海戦だけにによる戦線の停止」という雲を劇的につかみ損ねることとなる。とはいえ、それを彼達に責めるのは酷であろう。人は、まだ神ではない。ましてや神仏ではない。むしろ、第一次ベンガル湾海戦の後にアッヅ環礁基地をなんとかして発見し、第二次ベンガル湾海戦までこぎ着けたその総合戦闘能力を褒めた方が良いくらいだ。
 なんにせよ、帝国海軍は旧コロンボ基地こと天竺のスリランカ地方、コラー・アンバ・トータを掌中に収めることによりインドからイギリスへ向かう輸送能力に対して大規模な「待った」をかけることに成功する。そして、帝国海軍の通商破壊作戦だけであればイギリス軍もなんとか対処はできたのかもしれないが、帝国軍が駐屯基地を作り上げるということは、同時にクリーグス・マリーネが率いるUnser-boot、いわゆるユーボートがインド洋方面で行う活動も、同盟国から補給を受けるから当然と言えるのだが、活発化するということである。
 イギリスにとって、これは一大痛恨事と言えた。何せ、王室のティータイムが制限されるレベルで補給品が入ってこなくなったと言えば、帝国海軍が天竺を解放した意味がわかるだろう。
 まあ無論、イギリス料理というのは紅茶だけではないのだが、イギリス人と言えばコーヒーを「下品な泥水」と茶化したり、紅茶のためだけに支那へアヘンを蔓延させた上に逆ギレして侵掠した程度には紅茶に依存していることはエスニック・ジョークから見ても明らかなほどである、その紅茶を制限されるという行為がイギリス人にとってどれだけの屈辱となるか、察するにあまりある。
 そして、イギリス人は、まあさすがに紅茶のためだけではないだろうが、天竺再侵略の算段を練り始める。だが、それこそが大英帝国が崩壊する序曲になるのだから、歴史は面白い。
 話を紅茶から戻そう。醍醐提督率いるコロンボ戦略機動部隊、まあコロンボは地名として正しくは無いのだが通用する名称はわかりやすいのでこれで通させてもらう、は多大なる索敵行為の末に翌年ようやくアッヅ環礁基地を発見し、第二次ベンガル湾海戦のきっかけを作るのだが、それは決して端的に語っていいほどの楽観的結果では、なかった……。
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