獣人騎士団長の溺愛

スミー

文字の大きさ
34 / 36
出会い

33話

しおりを挟む
「ふぅ~。お店いっぱい回りましたね!とっても楽しかったです。お二人ともありがとうございました。」

 あの後リリーは何もなかったかのように明るく振る舞い3人で色々な店を回った。そして沢山の荷物を抱えてミランダの家に帰ってきた。

「私荷物2階に置いてきますね。」

「それなら俺も一緒…」

「いえ、これくらい大丈夫ですよ。」

 そう言い切るリリーに今はそっとしておいた方がよさそうだとアシュレイは荷物を持とうとした手を引っ込める。

「そう?じゃあ私たちは下で夜ご飯の準備してるわね。荷物の整理が終わったら降りていらっしゃい。」

「わかりました。」

 2階に上がって行くリリーをアシュレイは少し寂しげに見つめていた。


***


「あ゛ぁぁぁ~」

 リリーは部屋に入り荷物を置くとベッドに倒れ込んだ。あんなことがあったが町で3人でお店を回って楽しかった。可愛い服も買ってもらって、屋台でご飯を食べたり、村までたわいのない話をしながら歩いて帰るのも全部全部楽しかった……はずなのに…最後に小さな声で自分の名前を呼んだ姉が頭から離れなかった。もう関わらないと決めたはずなのに悶々と考えてしまう。

 
コンコンッ


 しばらくベッドに倒れ込んだまま枕に顔を埋めていると扉がノックされた。枕から顔を上げ返事をするとアシュレイが入ってきた。そしてリリーの顔を見て苦笑いをすると

「やっぱり大丈夫って顔じゃないな。」

 そう言いベッドに近寄りリリーの隣に腰掛ける。しばらくお互い口を開かず黙り込んでいたがアシュレイがリリーに語り出す。

「俺には弟がいてな。とある理由で俺が10年前家を飛び出してから会っていなんだ。」

 話し出したアシュレイにリリーは顔を上げ話を聞く体勢になる。

「会っていないというかもう会えないと言った方が正しいか。いや、元気に生きてるぞ。…全部投げ出して弟に押しつけて…恨んでいるのかもどう思っているのかも知りたくても知ることは叶わない。何も話さずに家をでたんだ。」

 当時のことを思い出しているのか寂しそうに話しを続ける。

「もう会わないと決めたのならそれでも良いと思う。俺もその方がお互いの為な気もするしな。けれど、その事を引きずるのであれば決めた事に固執する必要はないと思うぞ。後悔しない方を選ぶべきだ。たった一人の姉妹だろう?」

 リリーは自分は姉とどうしたいのだろうかと考える。

「…私お姉ちゃんとは会いません。けれどお姉ちゃんは酷いことしたけど優しいところもやっぱりあったと思うんです。…だからどうしてもお姉ちゃんが両親の慰謝料を払う為にこのままずっと働かされると思うとモヤモヤしてしまって……ってごめんなさい、なんか自分でも考えがまとまらなくて」

「…両親のことはいいのか?」

 確認するようにアシュレイが問うと

「お姉ちゃんも同罪かもしれないけれど最初に私を商会に売るって決めたのはあの二人だから…多分許せないと思うんです。」

 アシュレイはリリーの気持ちを聞くと頷き頭をポンポンとすると

「リリーの気持ちは分かった。姉のことは俺に任せてくれないか?悪いようにはしないから。」

「…っありがとうございます。グスッ…お願いします。」

 リリーはアシュレイに抱きつき嗚咽を漏らしながらお願いした。
 アシュレイもリリーが抱きついてくると思っていなかったので少し吃驚したが優しく抱きしめ返すとゆっくりと背中を撫でる。



「なぁ、リリー。明日から一緒に王都に向かうだろう?そろそろアシュと呼んでくれてもいいと思うんだが…もちもん敬語もとってくれるとなお嬉しい。」

 アシュレイは話を変えようとリリーに提案する。

「いや、でもまだ早いというか…恥ずかしいというか…」

 アシュレイの腕の中であたふたとしているリリーを更にぎゅと抱き締めた。

「慣れたら恥ずかしさもなくなるさ。」

 さらに抱きしめられ逃げ場もなくなったリリーはそっと顔上げてアシュレイを見つめながら小さな声で名前を呼ぶ。

「ア、アシュ…は、恥ずかしいよ///」 

 アシュレイは一瞬ピタリと固まると手を顔に当てる。よくよく見ると耳まで真っ赤になっていてリリーはふふっと笑ってしまう。笑われたことに少しムッとしながらアシュレイはリリーを膝の上に乗せるとおでこや耳に軽くキスしていく。

「やっ、離して……あっ。」

 身を捩って抵抗するが力で敵うはずもなく頭や頬、耳にとアシュレイはキスを落としていく。夢中になっているとコンコンと扉がノックされる。

「夜ご飯の支度ができましたよ。」

 ミランダが外から声をかける。アシュレイの腕が緩んだ隙にうでから抜け出すと扉を開けてミランダを迎えた。

「ご、ごめんなさい準備手伝えなくて。私、食事の前にお手洗い行ってきますね」

 リリーはそう言うと赤い顔のまま階段を降りて行った。
 その後ろ姿を見送るとミランダはアシュレイの方に目を向ける。

「…あの子は明日で16になります。……待てない男は嫌われますわよ。」

 ジトっとした目でベッドに座っているアシュレイを見下ろすと気まずそうに目を逸らす。

「……すみませんでした。」

 アシュレイは叱られた子どものように謝るしかなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜

恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。 だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。 自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。 しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で…… ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています ※完結まで毎日投稿します

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

処理中です...