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第3章 〜転校生〜
(18)眠れない夜
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僕は今、寝る場所に困っている!
何故なら、僕の部屋のベッド(敷布団込み)が全て使われてしまっているからである。
事の発端は僕たち3人が寝る寸前まで遡る。
「---金元様…私はどこで眠ればよいのでしょうか…?」
この一言が、僕が寝る場所に困る原因となった一声である。
「そ、そうだな…アネッサと一緒にベッドで眠るのはどうだ…?少々狭いかもしれないが、寝心地は抜群だぞ?」
「そ、そんな恐れ多いことできませんよ!ほ、他に眠る場所はないのでしょうか…?」
切れ長の二重瞼が特徴の彼女は僕の言動に焦り、瞼をしばたかせながらも、新たな寝床を要求する。
まったく、お淑やかそうに振る舞ってはいるが、どこの王女に似てしまったのか…中々がめついヤツだ。
まぁ、あの王女は問答無用で僕のベッドを奪ってきたので、寝床を尋ねてくるだけマシか…と思いながら、僕は渋々お気に入りの敷き布団を彼女に提案する。
「なら、この敷布団はどうだ?これも中々寝心地いいぞ」
「あら、そんなものがあったんですね!では私はそれを使わせていただきます!」
「あ、あぁ。存分に使って…くれ」
これだ。これこそが原因の発端なのだ。
そして話は今に戻る。
---僕は今勉強机に頭を伏せ、なんとか寝ようと試みている。
「う…うぅ…」
だが、結果は見ての通り失敗に終わった。
機能性を追求しすぎて硬すぎる机を買ったのが間違いだった。頭を伏せようにも硬すぎてもはや地面となんら変わらないではないか。
それでも僕は明日の学校のためになんとか他の眠れる場所を見つけようと策を練る。
エントリーNo.2に選ばれたのはリビングのソファーだった。
掛け布団はなんとか1枚残っていたのが救いだ。
僕はすぐさまソファーに寝転がり、少々窮屈に感じながらもなんとか寝ようとする。
イケる。明日寝違えるのは確定だが、なんとか徹夜コースは免れるぞ!と、内心ガッツポーズを取りながら羊を数えていると、丁度100匹目のカウントを数えようとした瞬間、後ろから声を掛けられた。
「司…何してるの…?」
アネッサだ。右手に水の入ったコップを持っているところから察するに、喉が渇いて水を飲みに来たのだろう。
「いや、寝る場所が無くてな…ネットでとりあえず新しい敷布団は買ったんだが、今日中に届くのは流石に無理があるからな…今日は仕方なくソファーで眠ることにした」
80匹目を数えていた辺りから大分眠くなっていたのだが、アネッサを目の前にして随分饒舌に喋り出す口に自分でも驚いている。
だが、そんな驚きすら遥かに凌駕するとんでもないことをアネッサは口にした。
「ふ、ふーん。そうなんだ。それなら…さ。今日はベッドで一緒に…寝る?」
そうアネッサが赤面しながら呟いたのだ。
「なッッ!?」
もはや僕の睡魔は遠くの彼方へ飛んでいってしまった。それほどまでに衝撃的だったのだ。
「いや、別に変な意味で言ってるんじゃないわよッ!?ただ、リサは私の従者だし…リサが原因であなたの寝床がなくなったのなら責任は私にもあると思うの」
「な、なるほど?」
「ほ、ほら!早く行くわよ!」
そう言って、アネッサは恥じらいながらも僕を2階のベッドへと連れて行った。
「---ね、ねぇ。もうちょっと離れられない…?」
「む、無理に決まってるだろ!?シングルベッドだぞ?これが限界だ…」
「そ、そうなのね」
アネッサの香りが漂うベッドに入り込んだ僕は、背中合わせになり、寝そべっていた。
1ヶ月と少し前まで僕が使っていたベッドなのに、何故こんなにも緊張するのだろう。
とても良い香りがする。それが僕にはとても官能的に感じて、胸の高鳴りが抑えられない。
多分、背中合わせのアネッサにもこの高鳴りは伝わっているのだろう。とても恥ずかしいが、何故か心地良い気分だ。
この瞬間が永遠に続けば良いのに…そんなことを考えていると、突然彼女が話しかけてきた。
「ねぇ、なんであなたはリサをこの家に泊まれるように働きかけてくれたの…?」
急に話しかけてくるものだから一瞬ドキりとしたが、僕はなんとか胸の高鳴りを押さえつけ、会話する。
「なんで…だろうな。リサは自分の意思でこの世界に来たんだ、僕が助ける義理はないのかもしれない。ただ、アネッサの関係者だと知って、そのまま見放すわけにはいかないと思ったんだ」
僕がそう答えると、突然アネッサが黙りこくった。
しまった!これではほとんどプロポーズみたいではないか!?
僕はそのことに1秒遅れて気付き、とうとう胸の高鳴りが抑えきれなくなった。
静かな夜に鳴り響く胸の高鳴り。それは背中合わせにしている者にしか聞こえない官能的な音。それが彼女にも伝わっていると思えば、平然は装えない。
だが、何分経ってもアネッサからの応答が来ないので、振り返ってみることにした。
「Zzz…Zzz」
眠っている…だと!?
僕の一世一代のプロポーズ(故意じゃない)が聞かれてない!?
そ…そんなことってあるのかよ…
僕は枕を濡らしながら長い夜を過ごした。
何故なら、僕の部屋のベッド(敷布団込み)が全て使われてしまっているからである。
事の発端は僕たち3人が寝る寸前まで遡る。
「---金元様…私はどこで眠ればよいのでしょうか…?」
この一言が、僕が寝る場所に困る原因となった一声である。
「そ、そうだな…アネッサと一緒にベッドで眠るのはどうだ…?少々狭いかもしれないが、寝心地は抜群だぞ?」
「そ、そんな恐れ多いことできませんよ!ほ、他に眠る場所はないのでしょうか…?」
切れ長の二重瞼が特徴の彼女は僕の言動に焦り、瞼をしばたかせながらも、新たな寝床を要求する。
まったく、お淑やかそうに振る舞ってはいるが、どこの王女に似てしまったのか…中々がめついヤツだ。
まぁ、あの王女は問答無用で僕のベッドを奪ってきたので、寝床を尋ねてくるだけマシか…と思いながら、僕は渋々お気に入りの敷き布団を彼女に提案する。
「なら、この敷布団はどうだ?これも中々寝心地いいぞ」
「あら、そんなものがあったんですね!では私はそれを使わせていただきます!」
「あ、あぁ。存分に使って…くれ」
これだ。これこそが原因の発端なのだ。
そして話は今に戻る。
---僕は今勉強机に頭を伏せ、なんとか寝ようと試みている。
「う…うぅ…」
だが、結果は見ての通り失敗に終わった。
機能性を追求しすぎて硬すぎる机を買ったのが間違いだった。頭を伏せようにも硬すぎてもはや地面となんら変わらないではないか。
それでも僕は明日の学校のためになんとか他の眠れる場所を見つけようと策を練る。
エントリーNo.2に選ばれたのはリビングのソファーだった。
掛け布団はなんとか1枚残っていたのが救いだ。
僕はすぐさまソファーに寝転がり、少々窮屈に感じながらもなんとか寝ようとする。
イケる。明日寝違えるのは確定だが、なんとか徹夜コースは免れるぞ!と、内心ガッツポーズを取りながら羊を数えていると、丁度100匹目のカウントを数えようとした瞬間、後ろから声を掛けられた。
「司…何してるの…?」
アネッサだ。右手に水の入ったコップを持っているところから察するに、喉が渇いて水を飲みに来たのだろう。
「いや、寝る場所が無くてな…ネットでとりあえず新しい敷布団は買ったんだが、今日中に届くのは流石に無理があるからな…今日は仕方なくソファーで眠ることにした」
80匹目を数えていた辺りから大分眠くなっていたのだが、アネッサを目の前にして随分饒舌に喋り出す口に自分でも驚いている。
だが、そんな驚きすら遥かに凌駕するとんでもないことをアネッサは口にした。
「ふ、ふーん。そうなんだ。それなら…さ。今日はベッドで一緒に…寝る?」
そうアネッサが赤面しながら呟いたのだ。
「なッッ!?」
もはや僕の睡魔は遠くの彼方へ飛んでいってしまった。それほどまでに衝撃的だったのだ。
「いや、別に変な意味で言ってるんじゃないわよッ!?ただ、リサは私の従者だし…リサが原因であなたの寝床がなくなったのなら責任は私にもあると思うの」
「な、なるほど?」
「ほ、ほら!早く行くわよ!」
そう言って、アネッサは恥じらいながらも僕を2階のベッドへと連れて行った。
「---ね、ねぇ。もうちょっと離れられない…?」
「む、無理に決まってるだろ!?シングルベッドだぞ?これが限界だ…」
「そ、そうなのね」
アネッサの香りが漂うベッドに入り込んだ僕は、背中合わせになり、寝そべっていた。
1ヶ月と少し前まで僕が使っていたベッドなのに、何故こんなにも緊張するのだろう。
とても良い香りがする。それが僕にはとても官能的に感じて、胸の高鳴りが抑えられない。
多分、背中合わせのアネッサにもこの高鳴りは伝わっているのだろう。とても恥ずかしいが、何故か心地良い気分だ。
この瞬間が永遠に続けば良いのに…そんなことを考えていると、突然彼女が話しかけてきた。
「ねぇ、なんであなたはリサをこの家に泊まれるように働きかけてくれたの…?」
急に話しかけてくるものだから一瞬ドキりとしたが、僕はなんとか胸の高鳴りを押さえつけ、会話する。
「なんで…だろうな。リサは自分の意思でこの世界に来たんだ、僕が助ける義理はないのかもしれない。ただ、アネッサの関係者だと知って、そのまま見放すわけにはいかないと思ったんだ」
僕がそう答えると、突然アネッサが黙りこくった。
しまった!これではほとんどプロポーズみたいではないか!?
僕はそのことに1秒遅れて気付き、とうとう胸の高鳴りが抑えきれなくなった。
静かな夜に鳴り響く胸の高鳴り。それは背中合わせにしている者にしか聞こえない官能的な音。それが彼女にも伝わっていると思えば、平然は装えない。
だが、何分経ってもアネッサからの応答が来ないので、振り返ってみることにした。
「Zzz…Zzz」
眠っている…だと!?
僕の一世一代のプロポーズ(故意じゃない)が聞かれてない!?
そ…そんなことってあるのかよ…
僕は枕を濡らしながら長い夜を過ごした。
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