青い祈り

速水静香

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第二話

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 私が開けた穴から見える光景は、これまでとはまったく違っていた。
 白い壁に覆われた研究所とは違った。そこは、打ちっぱなしのコンクリートの壁や床、天井で。
 そんな天井には、太い金属のパイプが蛇みたいに這い回っていた。
 そこからは、空気の抜ける音や振動のような音が絶え間なく響いていて、なんだか生きものみたいだった。

 たぶん、区画が違うのかな?

 その無機質な場所の壁には『B-21』『A-11』といった番号が、デカデカと書かれていた。
 その中から『EV』という表示を探して、矢印の指す方向へ進んでいく。

 私はどこか、この建設途中のビルなのか、それとも工場の中にも見える中を進んでいく。

 そして、その『EV』と書かれた空間にたどり着いた。
 そこは巨大な格納庫みたいな場所で、大量のバッテリーらしきものが整然と並べられていた。バッテリーみたいのは、それぞれがとっても太いケーブルによって繋がれていて、冷却用のファンが絶え間なく回り続けていた。
 私がそれらをじっと観察していた時だった。

「おい、そこの人間。」
 
 それは、スピーカーを通して話しかけているかのような、どこか機械的な声だった。
 私は思わずビクッとしたけれど。すぐに声のする方を探した。
 それは間違いなく、私へ向けられた言葉だったからだ。

「ここだ。」

 その声の主が、ゆっくりと姿を現した。まるでマンガやアニメに出てきそうな、全長一メートルくらいの犬型ロボットだった。
 銀色の金属でできた体は、蛍光灯の光を反射していて、ツヤツヤとしている。
 それに、犬で例えると頭の部分。そこには、まるで目のようも見えるくらいのサイズで青く光るライトがあって、まるで本物の瞳みたいに私をじっと見つめていた。

 さっきまで見かけた作業用ロボットとは、全然違う。このロボットには、なんだか不思議な魅力があった。まるで人間のような感情や知性が感じられた。
 そして何より驚いたのは、私たちと同じように流暢に言葉を話していることだった。

「君は魔法を使えるのか?名前は?」

 その声には敵意はなくて、むしろ好奇心に満ちているみたい。私は少し躊躇したけど、この不思議なロボットに応えてみることにした。

「私はアオイ。あなたの名前は?」
「アオイか。」

 青いライトがピコピコと明滅した。

「残念ながら、俺の名前はないんだが、無理に名乗るとすれば、それは無任所ロボットだな。」
「無任所ロボット?」

 思わず首を傾げてしまう。聞いたことのない言葉だった。

「ああ、そうだ。」
「無任所って、どういう意味なの?」
「特段の役目を与えられていないロボットだということだ。」
「それって、いったいどういうこと?」

 犬型ロボットは、ちょっと考えるような仕草をした。

「俺は、生命で言うところの自由意志のようなものだ。ここのロボットには本来、すべからく役割が与えられる。でも、俺にはそれがない。きっと、俺は、製造過程か何かのエラーで生まれたのだろう。まあ、つまり俺は自由なんだ。」

 彼はそう答えながらも、そこにある青いライトをまた明滅させているようだった。

「そして、君はここからの脱出を考えている、違うかな?」

 まるで私の心を読むような言葉に、どきりとした。


「ええ、そう。私は、ここからの脱出を考えているの。」
「俺も、この施設から出たいと考えているところだ。一緒に協力できないだろうか?」
「え?」
「君は魔法が使えるようだ。それに俺はちょっとばかし、この施設には詳しい。どうかな?」

 青いライトが、まるで期待に満ちた瞳みたいに、きらきらと輝いている。
 確かに、この不思議な施設を一人で探索するのは心細い。それに、このロボットからは、どこ一人の人間の感情みたいなものが感じられた。

「分かったわ。協力しましょう。」
「ありがとう。」

 犬型ロボットは礼を言いながら、話を続けた。

「ところで君は、どうやってこの施設に来たんだ?」

 その問いかけに、私は自分の知っている全てを話した。真っ白な病室で目覚めたこと、記憶がないこと、そして不思議な青い宝石から魔法の力を得たことまでを。
 話している間、犬型ロボットはじっと私の話に耳を傾けてくれた。そのライトはときどき小刻みに明滅して、まるで相槌を打つみたいだった。

「なるほど。」

 彼は静かに言った。

「記憶がないのか。」

 彼は一瞬黙り込んでから、意味深な口調で続けた。

「俺は、ここの内部の構造は知っているが、この施設が何の目的で動いていて、どこにあるのかは知らない。ここは、もしかしたら地球ではないかもしれない。」
「どういうこと?」
「俺は、この施設に関する資料の一部をハードコピーで読んだことある。ここは、魔法というエネルギーを利用したロボットによって無人で稼働する施設らしい。」
「どこか魔法の世界っていいたいわけ?」
「少なくとも、そんな施設は地球上にないはずだ。」

 その彼の言葉。
 地球上にない――。
 それはここってなんなの?

 分からない。
 私が考えていると、犬型ロボットは、そこで会話を切り、何かを思い出したように歩き始めた。
 私も彼の後を追うことにした。

 今、私と彼が出会ったバッテリーのある格納庫みたいな場所を抜けると、また白い廊下が現れた。
 しばらく進むと、再び頑丈な扉が行く手を阻んだ。

「扉を破壊したほうがいいかしら?」

 私が杖を構えかけたとき、彼は制止した。

「いや、ちょっと待て。」

 犬型ロボットは、カードリーダーのような装置に自らの首を近づけた。
 すると電子音が鳴り、扉が静かに開いていく。

「開けたぞ。」

 扉の向こうは、まるでSF映画に出てくるようなデータセンターだった。
 所狭しとサーバーラックが並び、その中では無数の電子機器が稼働している。配管やケーブルが複雑に絡み合い、無数のLEDの点滅がピカピカと瞬いている。

「ここは?」
「中央制御室だ。この施設の中枢部だな。ここの設備は、この施設のすべてを掌握しているはずだ。」

 そこまで言って、犬型ロボットはじっとこちらを見てきた。

「君に、ここから施設の操作をしてもらいたい。単なるロボットである俺ではここの操作をできない、その権限がないからな。俺は、この施設内にはどこにでも入ることができる。だが、それだけだ。」
「分かったわ。でも、私にそんなことができるかしら?」
「アオイは意思を持った一人の人間だ。ここの設備を使う権限があるはずだ。」

 彼はそう言って、再び歩き出した。

「あっ、待って!」
「なんだ?」

 彼は歩みを止めて、そう言った。

「ここの装置から、何か手がかかりが得られるのかも、ということ?」
「そうだ。」

 その後、私は犬型ロボットの後について、室内を進んでいった。

「ここだ、アオイ。」

 彼が指し示したのは、部屋の一角に設置された巨大な操作パネルだった。壁には、複数の大型ディスプレイが並び、グラフや数値、長い文字の列が次々と表示されている。
 その前には、キーボードやたくさんのボタンがある。まるでどこか秘密基地にある指令室みたいな様子だ。

 正直、どうやって操作なんてすればいいのかまったく分からないけど。私は適当に操作パネルに手を伸ばした。
 すると突然、画面が切り替わった。まるで私の存在を感知したかのように、ディスプレイの表示が変化し、分かりやすい直感的な操作が可能な画面になった。

「これは、おそらく君が使えるように設計されている。人間用のインターフェースだ。」

 私は画面に表示されているアイコンの一つをタッチした。すると、施設全体の地図が映し出された。複数の区画と通路が立体的に表示され、私たちの現在位置も点滅していた。画面の下部には『音声による指示』というアイコンも見えた。

「ここから施設から外に出る最短ルートを計算できるかな?」

 私は音声指示のアイコンにタッチしてから、そう問いかけた。画面上にいくつかの経路が光の線となって浮かび上がる。しかし、すぐにそれらは消え、代わりに『実行不可能な命令です』という赤い文字が表示された。

「これは、どういうこと?」

 私が不安げに犬型ロボットに尋ねる。

「ここは、人間が安全に過ごすための施設だ。だから、危険性のあることは実行不可能な設計がされているんだろう。」
「つまり、どういうこと?」
「おそらく君が、この施設の外に出ると危険にさらされるんだろう。だからルートを表示できなかったんだ。」
「じゃあ、どうすればいいの?」

 犬型ロボットは考え込むような仕草をした後、提案した。

「この施設について探りたい。この施設が何のための施設なのかを知るべきだ。」
「どうやって?」
「この施設の資料を見るしかない。」
「うん。」

 正直、彼の言っている意味は分からなかったけど。
 私は頷くしかなかった。

「アオイ。これから私のいうように、この端末を操作してくれないか?」
「分かったわ。」
「インターフェイスの一番最初に戻ってくれ。」

 犬型ロボットの指示に従って、私は画面を操作した。

「次に、音声による指示に切り替えてくれ。そして施設内のイントラネット上にある全資料から検索させるんだ。」
「何を検索するの?」
「この施設が何のために作られたか、だ。この施設内の資料をすべて検索。条件は『この施設が何のために作られたか』と言って命令を実行してくれ。」
「分かったわ。」

 私はそう言って、ディスプレイの前に向いた。

「この施設内の資料をすべて検索。条件は『この施設が何のために作られたか』。」

 私は、犬型ロボットの指示通りに、ディスプレイに向かって声を発した。

 すると『Please wait….』という表示が一瞬現れ、すぐに検索結果が出力された。
『人工魔法生命系』『第十七次施設予算書』『施設報告書』――。

 タイトルの下には、なにやら要約されたような内容が簡潔に示されていた。
 それによると、この施設は『人工的に魔法の力を持つ生命体を創出する』ことを目的とした、主に無人で運営される研究施設らしい。

『人工魔法生命体』ってなんだろう?

「『人工魔法生命系』の資料を開いて。」

 私がそう話かけると、画面が切り替わり、詳細な資料が表示された。そこには人間と魔法の融合を目指した実験の詳細が記されていた。そして、その主要な実験体の名前が表示されていた。

『アオイ』

「私……私は、実験体なの?」

 思わず私は声を出す。

「どうやら、そのようだな。ここに詳しい実験の経過がある。アオイに記憶がないことの整合性もあるな。」

 犬型ロボットは静かにそれだけ言った。
 その資料によれば、魔法生命体が私のように大きく育つことは想定されていないかのように書かれていた。

「意志を持った私の存在は、この施設にとっては想定外の産物だったのね。」
「ああ、そう考えるのが妥当だな。」

 淡々とした犬型ロボットの言葉に、私は苦笑いを浮かべた。
 彼も、この施設では想定外の存在だった。
 だからこそ、私は彼の気持ちが分かったのかもしれない。

 ただ、私の存在そのものが実験の産物で、この魔法の力さえも、すべては計画の一部だったということは事実だ。

 まったく実感はない。
 でも、この現実をどう受け止めればいいんだろう?
 分からない。
 だけど。今は感情に流されている場合じゃない。他の資料も確認しなければ。

「『第十七次施設予算書』の資料を開いて。」

 私の指示に従って、新しい画面が開いた。施設の概要や目的が細かく記載されていた。

「えっ、ここって宇宙ステーションなの?」

 思わず私は呟いた。

 予算書の一番初めにあった記述。そこには場所のことが書いてあって…。

 それは、衝撃的な事実。
 ここは地球じゃなかった。

「この施設は、魔法を使う生命体を地球圏に影響を与えないように、宇宙で生み出す施設ということなのね。」
「そうみたいだな。」

 資料を最後まで読んでいると、横からディスプレイを見ている彼も同意してくれた。
 けれど、まだ資料はある。
 続けて読んでいく。

「『施設報告書』の資料を開いて。」

 もう、どうにでもなれ――。
 そんな気持ちで最後の資料を開いた。そこには施設の運用状況や、システムの性能テストの結果が事細かに記されていた。

 特に目を引いたのは、施設の自己修復システムと、外部との通信を遮断するための措置に関する記載だ。
 この施設は完璧な自給自足システムを備え、外部からの干渉を完全に遮断するよう設計されているらしい。それは魔法というエネルギーが地球圏へ影響を及ぼすことを防ぐための措置らしい。

「しかし、これまでの資料の内容をまとめると、この設計者はとても魔法というエネルギーを恐れているように見えるな。」

 犬型ロボットが呟くように言った。彼は資料をさらに開くように私に指示した。
 私は指示に従って、資料を開く。
 そこには、魔法に対する異常とも思える隔離措置が記されていた。

 可視光線から電磁波、放射線に至るまで、物質や情報を伝達する可能性のあるものすべてを遮断することが推奨されている。

「彼らは一体何を恐れている?」

 彼は、独り言のようにそういった。犬型ロボットなのに、まるで人間みたいに考えている姿に、私はどこか面白く感じた。

「私の魔法が怖いのかしらねぇ?」

 私は、考え込んでしまった彼にそういって、茶化すように杖を振る動作をしてみた。
 でも、彼はそんな私のことなんて無視したように、しばらく黙って思考を続けていた。
 なんだか無視されたみたいで、ちょっと悲しかったけども、しょうがないかなって私は思った。

「…まるで地球へ、魔法をまき散らされることを恐れているようだ。」

 ポツリ、ポツリという感じ。青いライトをゆっくり点滅させながら。
 私の横にいる彼は声を出していた。
 何かに気がついたみたいだった。

「私が魔法を使うと、何か。影響が出るのかしらね?」
「そうかもしれないな。」

 一瞬、彼は黙り込んだ。

「そうだ。アオイ、資料を探してくれ。魔法の影響について。それと…。」

 彼は私へ操作を指示してきた。資料を検索して貰いたいみたいだった。
 私は、指示に従って資料を探す。
 だけれども、どこにも魔法の影響について、また、なぜここまで厳密に隔離されているのか、その資料を見つけることはできなかった。

 それは、答えの見つからない迷宮に迷い込んだように。
 私はだんだんと、答えを探すことに飽きてきた。

「地球に連絡は可能かなぁ?」

 私は彼に問いかけた。

「きっと、厳重に通信が封鎖されていることだろうな。もしやるとすれば、何か抜け穴のような方法だろう。」

 彼はそれだけ言って、また何かを考え始めた。

「アオイ、施設の通信システムに関する情報を探してくれ。」
「了解!」

 私は、その指示に従って、通信システムを探した。
 だけども、直接的な通信手段はないとしか表示されない。
 外部との通信を完全に遮断するために設計されているみたいだった。

 私は諦めずに、施設の通信システムに関する情報を探し続けた。画面上のデータを一つ一つ確認していく。

「ダメかな?」

 私は諦めかけていた。

「そのシステムログを下へ、ゆっくりとスクロールしろ。」

 でも、その時、犬型ロボットが言った。
 彼の声には何かを見つけた時の確信めいたものがあった。

 私は言われた通りに画面をスクロールしていく。英文の羅列のような、無機質なログの羅列が続く中、彼が声を上げた。

「ログには定期的に『緊急時衛星リレーシステム』という言葉が出てる。どうやら、非常時にのみ活性化するバックアップ通信システムらしい。」
「どうやって、それを活性化させるの?」
「システムログを見る限り、通常は非アクティブ状態で保持されている。ただし、この施設が何らかの重大な障害や危険に直面した場合に自動的にトリガーされるよう設定されているようだ。」

 その説明を聞いて、私の中でアイデアが閃いた。

「じゃあ、何か大きなトラブルを偽装できれば…。」

 犬型ロボットは私の提案を理解し、しばし考え込んでから答えた。

「施設の主要なシステムにマイナーなダメージを与え、それが重大なトラブルと認識されるよう仕向けることは可能だろう。ただし、リスクも大きい。」
「外部との連絡が取れれば、何かの助けが来るかも。」
「そうだな。」

 彼は私の意見に同意してくれた。

 そして、私たちはこのシステムに関する資料を更に調べた。
 それによれば、どうやら、このリレーシステムとやらは本来、衛星軌道の調整用として設計されているらしい。非常時に遠隔でステーションの軌道を変更できる仕組みだということだ。

 その軌道変更のための通信へ、半ば無理やり割り込むかのようにすることで。本来は行うことが出来ない、SОS信号を地球へ送ることができるらしい。
 まあ、犬型ロボットの彼がいうには、だけども。

「さあ、アオイ。私の言ったとおりに操作をしてくれ。」
「分かったわ。」

 犬型ロボットの指示に従って、私はシステムの操作を始めた。施設の生命維持システムを一時的に停止させ、すぐに再起動するプログラムを設定するんだ。
 そして、この異常事態に、システムが正常反応してくれることを願いながら、私は操作を続けていく。

「じゃあ、これで…。」
「ああ。維持システムが再起動されるはずだ。実行しろ、アオイ。」
「分かったわ。」

 彼の指示に従って、私は実行した。
 そのプログラムを実行した瞬間、部屋の照明が消えた。暗闇の部屋をディスプレイやLEDだけが周囲を照らしていた。
 隣にいる彼の青い目のようなライトが、じっとディスプレイを見ている。

 …さあ、どうなるか?

 ドキドキしながら、数秒後、照明が復活した。同時に、操作パネルに緊急システムの起動を示すアラートが表示された。
 ディスプレイには無数の警告メッセージが点滅し始めていた。

「これで、外部に連絡できるのね?」
「ああ、そのはずだ。」

 彼の声はいつも通りに淡々としていた。
 だけども、ピカピカと光っている青いライトの様子からは、少しばかりの緊張感のようなものが感じられた。
 確かに、この先は誰にも予測できない。でも、やるしかないんだ。

「さあ、外部へ信号とメッセージを送るぞ。」

 彼の指示通りに、私はまずSОS信号の送信作業を始める。
 ディスプレイには、緊急作業用なのか、すでにシンプルなコンソール画面が開いていた。

「これかな?」
「そうだ、次のコマンドを…。」

 私は彼の指示に従って、そこに必要なコマンドを入力していった。
 コンソールの画面には、たくさんの文字列が流れていった。

「よし。SОS信号を送ってくれ。実行をすればいいだけだ。」
「実行ッ!」

 私はSОS信号を送信した。
 すると、コンソールに受信状況に関するログが流れた。
 私の隣にいる彼は、熱心にそれを読んでいた。

「どうやら、正常にSОS信号は送信されたようだな。次はメッセージの送信だ。」
「分かったわ。」

 新しく開いたウィンドウ。私はそれにメッセージを打ち込んだ。

『私はアオイ。宇宙ステーションにいます。助けて。』

 単純な言葉だけれど、この短いメッセージに、私の全ての願いを込めた。キーボードに指をのせながら、自然と祈るような気持ちになる。不思議なことに、私の持つ魔法の力が、この無機質な装置と共鳴するのを感じた。

「最後に、送信コマンドを打ってくれ。コマンドは…。」

 彼のいうコマンドを入力する。
 すると、画面に小さなウィンドウが開いた。

『メッセージを送信中です』

 待つこと数秒。
 そして――。

『メッセージの送信が完了されました』
「成功だ。地球に向けて確かに送信された。あとは祈るだけだな。」

 犬型ロボットの声に、私も小さく頷いた。

「うん、そうだね。でも、今の私は魔法が使えるのだもの。お祈りなら、得意分野なのよ。」

 そう言って、私は自分の胸に手を当てた。
 それからはかすかな温もりが伝わってきた。私は魔法の力を持った、人工的に作られた存在なのだ。
 コンソール画面に映る文字たちを見つめながら、私は心の中で静かに祈り続けた。

 この想いが、この宇宙ステーションから地球にいる誰かに届くように、と。

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