「好き」があふれて止まらない!

梶ゆいな

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【11】新生MEBIUS

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五限目の授業を終えて、わたしは我妻くんと一緒に旧校舎にある音楽室へと向かった。

昨日、何も言わずに帰ってしまったことを謝ると杉浦くんと二階堂先輩は「びっくりはしたけど」と言って笑って許してくれた。

「それじゃあ早速だけどこれ。比高が書いてきてくれた歌詞」

向かい合わせになるようにくっつけられた四台の机の上にルーズリーフが並べられる。

今からMEBIUSのメンバー全員でわたしの書いた歌詞をチェックするみたい。


「ありがとう、比高!」

「ありがとう比高さん。大切に読ませてもらうね」

「よろしくお願いします」

杉浦くんと二階堂先輩に頭を下げて、少し離れた席で経過を見守ることにした。

自分の書いた歌詞を読まれるって、わたしの頭の中を覗かれるみたいでかなり恥ずかしい。

この時間だけでも音楽室の外で待機していればよかった。


「すげー! めっちゃあるじゃん。これ全部、曲にしたいな」


杉浦くんの言葉に二階堂先輩が「どれも魅力的だけど全部は現実的じゃないから」と返す。

三人がルーズリーフを一枚、一枚、手に取り見ている時間、わたしは緊張で息が止まりそうだった。

「俺は一番、二番、六番がいいと思う。奏人と千里は?」


わたしが書いてきた歌詞は全部で七曲分。

曲ごとに一から七の番号を振っている。


「俺は三番、五番、六番。千里は?」

「俺も六番が好きだな。あとは四番と七番」


三人の好みは六番以外、見事にバラバラだ。

「こんなに意見が分かれるとは思わなかったね。まぁ、それだけ比高さんの書いてきてくれた曲が素敵だってことなんだけど」

微笑みを浮かべる二階堂先輩と目が合って、胸がトクンと高鳴った。

「あ、ありがとうございます」

「本当に歌詞を書くのは初めてなの?」

「はい。歌詞は初めて書きました」

「歌詞は?」

二階堂先輩がルーズリーフを持ったまま首を傾げる。

「えっと⋯⋯実はその⋯⋯わたし本を読む以外に小説を書くことも好きなんです」

「それ言ってもよかったのか?」

今まで黙ってくれていた我妻くんに大きく頷く。

杉浦くんと二階堂先輩になら話してもいいと思った。

そう思えたのは我妻くんが誰にも言わずにわたしの秘密を守ってくれたから。

我妻くんと一緒に活動する杉浦くんと二階堂先輩なら同じように秘密にしてくれると思ったんだ。

それに情熱をぶつけてくれたふたりに対して自分のことは隠したままなんて失礼だよね。


「ふたりは我妻くんの仲間だし、昨日素敵な歌を聴かせてもらったから話そうと思って。あっ、でも他の人には秘密にしてもらえると助かります」

わたしは杉浦くんと二階堂先輩それぞれに両手を合わせてお願いした。

「もちろんだよ。話してくれてありがとう」

「仲間かー! じゃあ、今日からは比高もMEBIUSの仲間だな」

イスから立ち上がった杉浦くんがわたしに向かってピースサインをする。

「えっ?」

「だって、これから一緒にMEBIUSを創っていくんだろ?」

「⋯⋯仲間」

わたしの友達はずっと本で、仲間なんて言葉はフィクションの中にしか存在しなかった。

「いいのかな⋯⋯。わたしとMEBIUSは別世界の人間なのに」


同じように情熱を持っていても、わたしとMEBIUSは同じ場所には立っていない。

「別世界か。よく言われるけど、ひとりひとりがみんな別世界の人間じゃない? それに別世界にいるならパスポートを使って飛んでいけばいいだけの話さ」


パスポートを使って飛んでいけばいい。

そんなふうに考えたことは一度もなかった。

ずっと遠くにいると思っていた人たちが急に近くにいる人たちに思えて肩の力が抜ける。

「ありがとうございます、二階堂先輩。わたし、今の言葉を一生忘れません」

「本当? 嬉しいな」

「じゃあ、新生MEBIUS誕生ってことで」

我妻くんが左手を差し出すと二階堂先輩がその手を取り、今度は自分の左手を杉浦くんへと差し出す。

杉浦くんも同じように二階堂先輩の手を取った。

「ほら、比高も」

わたしに向かって我妻くんの右手と杉浦くんの左手が差し出される。

「えっと?」

「おい奏人、ちゃんと説明しろよ。比高、俺たちの手を握って! 今から円陣組むから」


円陣って円形に並んで気合をいれるあれのことかな?

ライブや舞台の前なんかにやっているのをよく見る。

「ほら、早く早く!」

「う、うん」

杉浦くんに急かされて差し出された手を取る。

わたしの右手は杉浦くんに、左手は我妻くんに強く握られた。


「MEBIUSぶちかますぞー!」

我妻くんの掛け声の直後、杉浦くんと二階堂先輩が声を上げながら右足を踏み出した。

「「おー!!」」

「お、おーっ!」

わたしも遅れて右足を踏み出す。

初めての円陣、初めての仲間。

我妻くん、杉浦くん、二階堂先輩。

三人の笑顔を見てわたしも自然と笑みがこぼれた。

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