「好き」があふれて止まらない!

梶ゆいな

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【32】勝者はどっち⁉

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三回戦の対決内容が発表されたあと、MEBIUSとグランツは曲作りのため一旦ステージを降りた。

その間、ステージにはMEBIUSとグランツの動画が交互に流れていて三番勝負が再開したのは三十分後のことだった。

先攻のグランツの曲が終わり、今から後攻MEBIUSの曲が始まる。

「次は後攻MEBIUSの楽曲をお聴きください。『ルーズリーフ』」

⋯⋯ルーズリーフ。

律のピアノから始まったその曲は穏やかなメロディーだった。

『宙に舞ったルーズリーフの中から現れた君に一瞬にして目を奪われた』

『君の描く世界はあまりにも綺麗で、その世界を隣で見たくなったんだ』


『ふたりで見た星空を僕は一度だって忘れたことはない。君が僕を一等星だと言うならずっと輝き続けるよ』

『君が音楽以外興味のなかった僕に恋というものを教えてくれたんだ』

『だから今、こうして僕はラブソングを歌っている』


MEBIUSの曲が終わった瞬間、拍手が沸き起こる。

「この曲、ほんとに即興⁉」

「三十分で作ったとは思えないよね」

周りのお客さんがMEBIUSの曲の完成度に驚いている中、わたしは歌詞の意味を考えていた。

ルーズリーフ、星空、一等星。


「まるで咲茉に向けたラブソングね」

隣にいた海音ちゃんがわたしの耳元でそうつぶやく。

「即興で曲を作るためにわたしとのエピソードをまとめただけかもしれないよ」

「それだけであんな素敵な歌詞は書けないわ。ほら咲茉、投票の時間よ」

周りの人たちが次々と赤と白の紙を掲げる。

わたしも慌てて赤の色を表にして掲げた。

「これは⋯⋯集計前に結果が出ましたね」

司会者の人の驚いたような口調に後ろを振り向くと、真っ赤に染まる客席が目に入った。

「三回戦の勝者はMEBIUSです。そして、MEBIUS VS グランツ夢の三番勝負は二勝したMEBIUSが勝利となります。MEBIUSのみなさんおめでとうございます!」

体育館は今日一番の歓声に包まれる。

ステージ上ではMEBIUSが抱き合いながら喜びを分かち合っていた。

会場の拍手はなかなか鳴りやまない。

グランツのメンバーは悔しそうな顔をしながらもMEBIUSの勝利を拍手で称えてくれていた。

「咲茉! やったわね」

「海音ちゃん⋯⋯!」

わたしと海音ちゃんもMEBIUSの勝利に抱き合って喜ぶ。

「それでは勝者のMEBIUSに一言いただきましょう」

司会者の人がステージに上がり、奏人へマイクを渡す。

「まずはMEBIUSのみなさんおめでとうございます」

「「「「ありがとうございます」」」」

「最後の曲はボーカルの我妻さんが作詞されたと聞きました。どんな思いが込められていたのでしょうか?」

「今までに俺が書いたラブソングは綺麗な言葉を並べただけで嘘ばかりでした。だから、今まで自分で書いたラブソングを歌ったことはありません。途中で書くことさえもやめてしまいました」

奏人は遠く見つめながら淡々と話をする。

「俺が今日ラブソングを書けたのは、人を好きになる気持ちを知ったからです。咲茉に出会わなかったらこの曲を書くことはできませんでした」

奏人の口からわたしの名前が出て、客席がざわつく。

MEBIUSのメンバーも奏人が何を話すのか知らなかったのか、驚いたような表情をしていた。

それはわたしも同じで奏人の言葉にぽかんと口を開く。

さっきまで遠くを見ていた奏人はわたしへと視線を移して、目を合わせたまま話を続けた。

「『ルーズリーフ』に込めたのは、咲茉を想う気持ちです」

客席からは悲鳴にも似た歓声が上がる。

海音ちゃんは興奮した様子でわたしの肩をバシバシと叩いてきた。

「⋯⋯ってことなんで、続きはこれから本人に直接伝えます」

千里先輩にマイクを手渡してからステージを飛び降りた奏人は、通路を歩いてわたしの目の前で足を止めた。

「俺は咲茉のことが好きだ」

数秒前までステージを見ていたお客さんたちの視線がわたしと奏人に集中する。

客席は一気に静まり返ってわたしが話すのを待ってくれた。

わたしはその場で立ち上がり、奏人の目をまっすぐ見つめる。

わたしが今まで書いてきた小説の中の子たちも、勇気を出して気持ちを伝えたんだよね。

好きな人に自分の想いを伝える瞬間ってこんなに緊張するんだ。


「わ⋯⋯わたしもっ、わたしも奏人のことが好きです」

わたしが返事をした直後、客席からは割れんばかりの拍手が起こった。

わたしの言葉ひとつで好きな人が、奏人が笑ってくれる。

それだけで涙がでそうなほど嬉しくなることをわたしは今日、初めて知ったよ。


「このままここから連れ去ろうと思うんだけど、どう思う?」

「えっ、えぇっ?」

「いいと思いまーす!」

動揺するわたしの代わりに返事をしたのは海音ちゃんだった。

「会長の許可ももらったし行くか」

目の前に差し出された手をそっと握ると、奏人は走りだした。

「奏人! かっこいいぞー」

背中越しに新の声が聞こえてくる。

わたしたちは大勢のお客さんに見送られながら体育館を後にした。


***


「律はよかったの? 奏人と咲茉ちゃんを行かせて」

「どういう意味ですか、千里先輩」

「実は一週間前、見ちゃったんだよね。律と咲茉ちゃんがふたりで旧校舎にいるところ。本当は冗談なんかじゃなかったんだろう?」

「かっこ悪いですよね。自分の気持ちもちゃんと伝えられないなんて」

「そんなことないよ。律は咲茉ちゃんの気持ちを知ってたから困らせたくなかったんだろう? 好きな子のことを一番に考えられるかっこいい男だよ」

「⋯⋯ありがとうございます、千里先輩。俺、今ならとびきりの失恋ソングを書けそうです」

「へぇ、どんな曲?」

「叶わなかった恋に胸が痛む。だけど、好きな子の幸せを願うそんな曲」

「いい曲だね。いつか聴かせてよ」

「はい」


──ステージ上にはわたしの知らない物語があった。




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