「好き」があふれて止まらない!

梶ゆいな

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【2】消えたルーズリーフ

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音符⋯⋯?

「これって楽譜?」

わたしが書いたものじゃない。

「俺の」

持っていた楽譜を横からサッと奪い取られる。

「ご、ごめん」

我妻くんのものだったんだ。


もしかして我妻くんの持っていた楽譜と、わたしの小説がごちゃ混ぜになっちゃったのかな。


見た目はどちらも似たようなルーズリーフだけれど、我妻くんのものには五線譜が印刷されている。


「こっちの文章? が書いてあるのは比高のだよな」

「う、うん。そう!」

パッと見だったら小説って気づかないよね?

我妻くんが拾ってくれたルーズリーフを素早く受け取る。



あれ? わたし今、我妻くんに「比高」って呼ばれたような気がするんだけど⋯⋯。

気のせいかな?

⋯⋯きっと、気のせいだよね。

我妻くんとは一年生のとき別のクラスだったし、喋ったことのないわたしの名前なんて覚えていないはずだ。

そんなことを気にするよりも先にルーズリーフを回収しないと!

廊下に散乱していたルーズリーフは我妻くんとふたりで拾ったからあっという間に片付いた。


「これで全部かな。ほら、これも比高の」

あっ⋯⋯また比高って。

さっきのは気のせいじゃなかったんだ。

別の世界に住んでいる我妻くんがわたしの名前を知ってくれていたなんて、なんだか胸の奥がジーンとする。


「あの、一緒に拾ってくれてありがとう」

「別に。俺のもあったから」

我妻くんはルーズリーフの束を小脇に抱えると先に階段を下りていった。


MEBIUSのファンの子たちが我妻くんは塩対応だってよく話していたのを聞いたことがある。


だけど、階段から落っこちそうになったわたしを迷わず助けてくれたし、わたしのせいで散らばったルーズリーフを文句ひとつ言わずに拾ってくれた。

それに名前だって覚えてくれていたし⋯⋯塩対応っていうよりもクールな人なのかな。

「って⋯⋯考え事してる場合じゃなかった! わたしも急がないと」



わたしは我妻くんと一定の距離を保ちながら教室へと戻った。





***


わたしはいつも家に帰ったら真っ先に宿題を済ませて残りの時間は本を読んだり、小説を書いたりするために使う。


今日は学校で書いていた話の続きを進めようと思ったんだけど⋯⋯。


「ない、ない、ない。どこにもない!」


番号を振ったルーズリーフが一枚見当たらない。

「これが一枚目でしょ、二枚目はこっちで」

もう一度、一から数えてみる。

「⋯⋯やっぱりない」

何度、数えても結果は同じ。

五ページ目だけが消えてしまったのだ。

どこかに紛れていないか確認するために鞄の中身を全部床に広げてみた。

宿題のプリントの中にも、教科書やノートの間にもない。

学校は置き勉禁止で帰る前にはいつも机の中に忘れ物がないか最終チェックをする。

今日も確認してから下校した。


「もう他に心当たりなんて⋯⋯」

何かいつもと違うことあったかな?

目をつむって今日、一日の行動を振り返る。

すると、頭の中にぼんやりと我妻くんの顔が浮かんだ。

「も、もしかしてお昼休みに⋯⋯」


小説を書くために向かった旧校舎。

階段から落ちそうになったわたしの手から離れて空中を舞ったルーズリーフ。

廊下に散らばったわたしの小説と我妻くんの楽譜。


そういえばあのとき、授業に遅れないか心配で枚数もろくに確認しないまま教室に戻ったような。



⋯⋯となると、今、わたしの小説を持っているのは我妻くん?

「う、嘘でしょ」

わたしは顔が青ざめていくのを感じた。

作文を読まれるのだって恥ずかしいのにあんな妄想全開の文章をクラスメイトに読まれるなんて⋯⋯最悪だ。



「ど、どうか、我妻くんが小説の存在に気づきませんように!!」


両手を胸の前で組んだわたしは、微かな希望にかけることしかできなかった。



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