春風のワンピース

第10節 「私らしく、ふたりで歩む未来へ」

　春のやわらかな風が窓から吹き込む朝、僕は目覚めとともに今日も女の子としての一日を始める。鏡の前で髪を整え、沙耶さんと並んでメイクをするのが、すっかり日常になった。ふとした瞬間、「これが本当の自分なんだ」と思えるようになったのは、きっと沙耶さんと過ごした日々があったからだ。

　高校生活にもすっかり慣れ、友達もできた。最初は自分のことを隠しながら過ごしていたけれど、今では「女の子らしいね」と言われても素直に笑えるようになった。沙耶さんの存在が、僕に大きな勇気をくれた。ふたりで暮らす毎日は、時に小さなすれ違いや悩みもあるけれど、話し合い、支え合いながら乗り越えてきた。家事の分担や生活リズムの違いも、ふたりで工夫して自分たちらしいルールを作った。

　休日には、ふたりで新しいカフェを探したり、ショッピングに出かけたりする。店員さんに「お似合いですね」と言われると、胸が温かくなる。沙耶さんと一緒にいると、どんな自分も受け入れてもらえる気がして、心から安心できた。ファッションやメイクの話で盛り上がり、時にはお互いの悩みや将来の夢を語り合った。沙耶さんの大学の友人たちとも自然に打ち解け、「蒼真ちゃんって、本当に女の子みたい」と笑い合える自分が、今ではとても誇らしい。

　季節が巡るごとに、僕たちの生活にも少しずつ変化が訪れる。新しい学校のイベントや、沙耶さんの就職活動、僕の進路の話。将来のことを考えると不安もあるけれど、ふたりで話し合いながら、ひとつひとつ乗り越えていく。困難にぶつかっても、沙耶さんは必ず隣で「大丈夫、私たちならできるよ」と励ましてくれる。その言葉に、どれだけ救われたかわからない。

　ある夜、リビングで紅茶を飲みながら沙耶さんがぽつりと言った。

　「蒼真ちゃん、本当に変わったね。最初は不安そうだったのに、今はすごく自然で、キラキラしてる」

　僕は少し照れながらも、心から「ありがとう」と答えた。沙耶さんがいてくれたから、僕は自分らしく生きることができた。これからも、ずっとこのまま、ふたりで歩いていきたいと思った。

　窓の外には桜が咲き始め、街も淡いピンク色に染まっていく。僕たちの生活も、これから新しい章を迎えるのだろう。進学や就職、どんな未来が待っているのかは分からない。でも、沙耶さんとなら、どんな道でもきっと乗り越えていける。自分を大切にしながら、誰かと支え合い、笑い合える幸せを、これからもずっと守っていきたい。

　「これからも、私らしく生きていこうね」

　沙耶さんが微笑みながら言ったその言葉に、僕は力強くうなずいた。ふたりで過ごす日々が、僕の中で一番の宝物だ。春の風に背中を押されながら、僕たちは新しい一歩を踏み出す。私らしく、ふたりで歩む未来へ――物語は、静かに、そして温かく続いていく。