世話焼き幽霊に今日も怒られています。

白水緑

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ワシを子供かなんかだと思っとらんか?

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祐二が無職になってから一週間が過ぎようかというころ、ふと携帯の電池が切れていることに気づいて充電してみると、一通のメールが届いていた。携帯が気になったのは無意識にこの知らせを予見していたからかと納得し、姿を消している徳久に話しかける。
 
 「トク、俺今日飲みに行ってくるわ」
 「珍しい。おぬしを誘う輩がおったとは」
 
 天井から滑り降りるようにして姿を現した徳久。
 
 「前に話しただろ。冬樹先輩だよ。失業者同士飲もうってさ」
 「行ってくると良い。引きこもりに慣れているとはいえ、たまには気晴らしも必要じゃろうて。このところ就職活動も頑張っていたことじゃし」
 「トクは暇じゃないのか? 何か置いていくか? 大したものはないが」
 「いらんいらん。ワシを子供かなんかだと思っとらんか? 変な気は使わんと行ってこい」
 「ああ」
 
 久しぶりに人会うというのにそんな適当な服で出かけるとは何事じゃ! と行く寸前に怒られたせいで、祐二は待ち合わせの場所へ少し走って向かう。相手は既に到着していたようで、冬樹先輩はにこやかな笑顔で祐二を出迎えた。
 
 「よお久しぶりだな。お前がそんなちゃんと服を着てくるとは思ってなかったぞ」
 「口うるさいやつがいて」
 「お? 彼女か? どんまい会はいらなかったか?」
 「違います男です。今日はとことん飲みましょう。このところまともな生活をしているせいでおなかがすいて」
 「お前がちゃんと飯食ってるとは珍しいな。ものぐさなお前にそこまでさせるやつがいたとは」
 「耳元でフライパンとお玉でガンガンですよ。たまったもんじゃないです」
 「その割に楽しそうだぞ、お前」
 「そうですか」
 
 どうやら目的地は決まっていたらしく、祐二は冬樹先輩に続いて串焼き店へと入った。喧騒の中、店の端っこのほうの席に陣取り、まずはビールで乾杯をする。
 
 「お前ちゃんと失業手当申請しろよ? 勝手にお金入ってくるからさ」
 「次の日にやりましたよ。めんどくさかったです」
 「よしよしちゃんと自立してるな。就活は?」
 「してるんですけど、いまいちですね」
 「そうだろうな。もともと不況だしな。俺のほうはいくつか決まりそうでさ、良かったら紹介してやるよ」
 「でも、俺もう営業は無理だと思いますよ」
 「無理とは言わんが、他の職種のほうがいいだろうな。ちゃんと向いてそうな仕事探してみるから、お前も前向きに探せよ。っていっても今のお前なら大丈夫そうか? 真っ当な生活しているようだし、俺が心配することもないかもしれん」
 「そんなことないです。先輩がいないと俺就職できませんよ」
 「こらこらそういうのは良くない。俺に頼るのは自分で頑張ってからな」
 「はい」
 
 冬樹先輩はご機嫌なのか祐二が二杯目のビールを飲んでいる間に、5杯目へと突入している。
 
 「飲みすぎですよ」
 「いいのいいの。久しぶりにお前に会えたから。いつぶり?」
 「俺が休まされる前だから一ヶ月ぶりくらいですか」
 「もうお前がいなくて寂しくてさ。お前売り上げは悪いけど、俺の精神安定剤なところあったから」
 「人を何だと思ってるんですか」
 「癒し系ペット」
 「……」
 
 満面の笑顔で宣言された祐二はグラスに残っていたビールを無言で飲み干した。
 
 それから二時間後、見事に出来上がった冬樹先輩を連れて、祐二は部屋へと帰ることにした。
 
 「先輩ってお化けとか見える人でしたっけ」
 「いんやぁ? ぜんっぜん見えない。見えたら抱き着いてちゅーしちゃう」
 「男だったらどうするんですか……」
 「お化けだろ? 可愛いねーちゃんに決まってるじゃん」
 
 とりあえず徳久に会っても大丈夫そうだとほのかに酔った頭で判断して、部屋の中へ引きずり込む。部屋の中央でやはり寝転がっていた徳久は、連れ帰ってきた相手を見て顔を引きつらせる。
 
 「なんじゃそいつは」
 「冬樹先輩。お酒弱いのにすぐ飲みすぎるんだ」
 「酒癖の悪いやつじゃな。ちゃんと横向けで寝かせるんじゃぞ! 上も下も向けるなよ!」
 
 そういい捨てるとさっさと天井へと消えてしまう。
 
 「ゆーじー、誰としゃべってんだよぉ」
 「独り言ですよ。ほら、靴脱いでください」
 「壁に喋りかけるようになったらダメだからなぁ。ちゃんと俺にはなせよぉ」
 「わかりました。はい、水どうぞ。飲んだら寝てくださいよ」
 「ああーい」
 
 倒れるように寝転がってしまった先輩のネクタイをとると、言われた通り横向きに寝かせる。それから少し悩んでから普段自分が使っている布団を先輩にかけると、祐二は端っこをお腹の上に乗せた。すぐに二人分の寝息が広がり、天井から顔を出した徳久はつけっぱなしだった電気をそっと消す。
 
 「あれだけ使えん奴でも、さらに使えん奴がおればまともに見えるものじゃな」
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