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8月12日 木曜日 『映画館デート』(1/2)
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8月12日 木曜日 天気:晴れ
朝、日課になったマオを迎えに行こうと玄関を出たところに、マオが待っていた。それも、普通の格好をして。ジーパンにTシャツ、腰にパーカーを巻いている。ちょっぴり暑そうだ。
「おはよぉ、依代ちゃん」
私の驚きをよそに、マオはにっこりと笑う。見慣れているはずなのに、格好が違うだけでなんだか別人のようだ。
「黒以外の服持ってたんだね」
「もちろん。今日は依代ちゃんとデートだから張り切っちゃったぁ」
「デート?」
「そ。映画、見に行きたいって言ってたから」
そう言って見せてくれたのは、『冬の女王と夏の王様 Part2』のチケット。あんなに渋っていたのに、とマオを見上げると笑顔が返ってきた。この顔は何か誤魔化している。直感的にそう思って黙って見つめていると、笑顔がへらっとしたものに崩れた。
「依代ちゃんが良い子だからご褒美あげなきゃとおもって」
「意味わからないんだけど」
「いーのいーの。ほら、お出かけの準備してきて!」
疑いの視線を受け流したマオは、私を家の中に追い立てる。出かけるならちゃんとおしゃれしたかったのに、とは言わないが寝巻で出迎えたりしなかったのに、と思いながら服を探す。窓の外を見ると今日も暑そうな太陽が昇り始めている。タンスから引っ張り出したのはひざ下までの白いフレアスカートに紺色のブラウス。着替え終わると鏡の前でくるりと一周回って服装をチェックする。うん、夏っぽくていい感じ。
部屋を出ると、二階までわざわざあがってきたらしいマオがいた。私の格好を見て目を細める。
「よく似合ってるねぇ。可愛いよ」
「あ、ありがと」
だいぶ聞きなれてきたとはいえ、真正面から褒められるのは照れる。嬉しそうなマオの視線から逃げるように一階へと降りて外へと促す。
「行こ」
「うん!」
家を出て鍵をかける。一度ドアノブを引いて鍵がちゃんとかかっていることを確認してから歩き始めた。いつの間にかマオは帽子を目深にかぶっている。
「それ、暑くないの?」
「平気だよぉ。それより、近道知ってるからそっちから行こぉ」
さりげなく私の手を繋ぎ引っ張るマオ。突然の行動に驚いたものの、私の考えすぎだったらしい。マオは当然の顔をして私の前を歩いている。生まれてからずっとこの町に住んでいる私よりマオはこの町に詳しかった。一度も通ったことのない道を抜けて、普段より短い時間で映画館までたどり着いた。
「こんな道があるなんて知らなかった」
「よく散歩してるからねぇ」
「マオってほんと謎だよね」
「そぉ? その辺をふらふらとしてるだけだよぉ」
促され、映画館に入った。夏休みのせいか親子連れが多く、マオも難なくその場に馴染む。入口でポップコーンとジュースを買ってもらい、パンフレットを貰って席に着いた。
「私もお金もってきてたのに」
「子供にお金出させる保護者なんていないでしょぉ。それに、今日は依代ちゃんへのご褒美なんだから、気にしちゃだめだよぉ」
「なんのご褒美かさっぱりだけど」
「じゃあ僕が奢りたいから?」
「何それ」
ころころと言い分の変わるマオは、主張に合わせて表情もくるくる変わり、思わず吹き出した。マイペースすぎて何を言ってるのかさっぱりなことも多いけど、それがマオらしいとも思う。
本編が始まるまでの間、私たちはポップコーンを食べながら宣伝を眺めていた。
「映画館で映画を見るなんて随分と久しぶりだなぁ」
「そうなの?」
「うんうん。ほら、依代ちゃんに拾ってもらうまで文無しだったし」
「別にお金はあげてないけど」
「家があったら稼げるからいいんだぁ。だから依代ちゃんのおかげだよ」
「何それ」
2度目のその言葉と同時に視界が暗くなった。一瞬の静寂の後、音楽が流れ出す。
朝、日課になったマオを迎えに行こうと玄関を出たところに、マオが待っていた。それも、普通の格好をして。ジーパンにTシャツ、腰にパーカーを巻いている。ちょっぴり暑そうだ。
「おはよぉ、依代ちゃん」
私の驚きをよそに、マオはにっこりと笑う。見慣れているはずなのに、格好が違うだけでなんだか別人のようだ。
「黒以外の服持ってたんだね」
「もちろん。今日は依代ちゃんとデートだから張り切っちゃったぁ」
「デート?」
「そ。映画、見に行きたいって言ってたから」
そう言って見せてくれたのは、『冬の女王と夏の王様 Part2』のチケット。あんなに渋っていたのに、とマオを見上げると笑顔が返ってきた。この顔は何か誤魔化している。直感的にそう思って黙って見つめていると、笑顔がへらっとしたものに崩れた。
「依代ちゃんが良い子だからご褒美あげなきゃとおもって」
「意味わからないんだけど」
「いーのいーの。ほら、お出かけの準備してきて!」
疑いの視線を受け流したマオは、私を家の中に追い立てる。出かけるならちゃんとおしゃれしたかったのに、とは言わないが寝巻で出迎えたりしなかったのに、と思いながら服を探す。窓の外を見ると今日も暑そうな太陽が昇り始めている。タンスから引っ張り出したのはひざ下までの白いフレアスカートに紺色のブラウス。着替え終わると鏡の前でくるりと一周回って服装をチェックする。うん、夏っぽくていい感じ。
部屋を出ると、二階までわざわざあがってきたらしいマオがいた。私の格好を見て目を細める。
「よく似合ってるねぇ。可愛いよ」
「あ、ありがと」
だいぶ聞きなれてきたとはいえ、真正面から褒められるのは照れる。嬉しそうなマオの視線から逃げるように一階へと降りて外へと促す。
「行こ」
「うん!」
家を出て鍵をかける。一度ドアノブを引いて鍵がちゃんとかかっていることを確認してから歩き始めた。いつの間にかマオは帽子を目深にかぶっている。
「それ、暑くないの?」
「平気だよぉ。それより、近道知ってるからそっちから行こぉ」
さりげなく私の手を繋ぎ引っ張るマオ。突然の行動に驚いたものの、私の考えすぎだったらしい。マオは当然の顔をして私の前を歩いている。生まれてからずっとこの町に住んでいる私よりマオはこの町に詳しかった。一度も通ったことのない道を抜けて、普段より短い時間で映画館までたどり着いた。
「こんな道があるなんて知らなかった」
「よく散歩してるからねぇ」
「マオってほんと謎だよね」
「そぉ? その辺をふらふらとしてるだけだよぉ」
促され、映画館に入った。夏休みのせいか親子連れが多く、マオも難なくその場に馴染む。入口でポップコーンとジュースを買ってもらい、パンフレットを貰って席に着いた。
「私もお金もってきてたのに」
「子供にお金出させる保護者なんていないでしょぉ。それに、今日は依代ちゃんへのご褒美なんだから、気にしちゃだめだよぉ」
「なんのご褒美かさっぱりだけど」
「じゃあ僕が奢りたいから?」
「何それ」
ころころと言い分の変わるマオは、主張に合わせて表情もくるくる変わり、思わず吹き出した。マイペースすぎて何を言ってるのかさっぱりなことも多いけど、それがマオらしいとも思う。
本編が始まるまでの間、私たちはポップコーンを食べながら宣伝を眺めていた。
「映画館で映画を見るなんて随分と久しぶりだなぁ」
「そうなの?」
「うんうん。ほら、依代ちゃんに拾ってもらうまで文無しだったし」
「別にお金はあげてないけど」
「家があったら稼げるからいいんだぁ。だから依代ちゃんのおかげだよ」
「何それ」
2度目のその言葉と同時に視界が暗くなった。一瞬の静寂の後、音楽が流れ出す。
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