葛城依代の夏休み日記~我が家に野良猫がきました~

白水緑

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8月22日 日曜日 『本人確認』

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8月22日 日曜日 天気:快晴
 
 朝、1階が騒がしくて目が覚めた。お母さんと男の人の声が聞こえる。何があったんだろう。気になったものの、今日はまだマオが来る時間じゃないからと再び目を閉じる。うとうとと、意識を手放そうとした時、ドアがノックされすぐにお母さんが入ってきた。

「依代! 起きなさい」
「どうしたの?」

 あんまり見たことのない、緊張したような表情。お母さんの後ろには、制服を着た警察の人が二人いた。ベッドの横に立ち私を見下ろした警察官は、精一杯の作り笑顔で笑いかけてきた。

「起こしちゃってごめんね。依代さんに聞きたいことがあって来たんだ」

 覚醒しきらない頭で、話を続けるよう頷きを返した。

「この人のこと、知ってるね?」

 問い詰めるような口調しい確信をもって見せられたのは一枚の写真。前に交番に貼ってあった指名手配のポスターで見た顔だろうか。でも、知り合いじゃない。

「知らない」
「本当に? よく見てみて」
「……知らない」

 引っかかりを覚えながらも、覚えがないと答える。その答えに、お母さんがほっとした表情をしたのが見えた。

「昨日のお祭りで一緒にいたと思うんだけど?」
「……こんな人じゃない」
「そっか。ありがとうね」

 何度も否定すれば、警察の人は諦めたのか、帽子をかぶりなおし立ち上がった。

「葛城さん、依代さん。ご協力ありがとうございました。我々はこれで」

 部屋の入り口で私とお母さんに向かって綺麗な敬礼をして、そのまま帰っていったらしい。窓から警察の人が帰っていくのを眺めていると、見送りに行っていたお母さんが戻ってきた。

「依代、本当にあの男の人のことは知らないのね?」
「うん知らない」
「そう。知らない人についていっちゃだめよ」
「大丈夫だよ、お母さん」
「そうよね。依代は良い子だもの。さ、ご飯にするから降りてきなさい」
「はーい」

 お母さんが部屋を出ていき、私はどきどきする心臓を抑えて改めて警察の人が残していったポスターを見た。もしかしてが確信に変わる。最初は全然気づけなかったけど、この写真はマオだ。何をした人なのかは漢字が読めないけど、きっと悪いことをしたのだろう。そう思っても、なぜかマオがそんな悪い人には思えなかった。
 


 それからリビングに降りた私は、お母さんからマオが何をしたかを聞いた。そして最近近所で頻発していた空き巣事件の容疑者であることも。その疑いは日記を確認して間違いないと結論に達した。どの事件も、マオが私の家に泊まっていないときの話。マオが仕事で外泊だといって帰ってこなかったとき、旅行に出ていた今井さんの家が荒らされ結構なものが盗まれたという。カメラには少し姿が映っているものの決定打になるようなものはなく、警察が警戒を強めていたところ、昨日のお祭りで似たような背格好の男性を見つけて尾行した結果うちにたどり着いたのだとか。 
 でもそんなことどうでもいい。マオは私のことを見てくれる唯一の人。今、どうしてるんだろう。近くにいて捕まったりしてないだろうか。なぜかそんなことばかりが気になった。
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