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12月22日 水曜日 『再会』
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12月22日 水曜日 天気:雪
学校を出ると、この季節にしてはまだ早い雪が降っていた。クラスメイトが喜ぶ中を抜けて学校を出る。お母さんはもう仕事に行ってしまっただろうから、帰ったらご飯を作らなきゃ。慣れた道を足早に帰る。あと少しでマオを拾った場所だ。それを思い出すと未だに、出会ったときのことを思い出し胸が苦しくなる。早く通り過ぎようとぎゅっと手を握りしめ足を速めた。
「にゃおー」
「え……?」
足元から聞こえた声に、思わず足を止めた。道路の端に丸まる黒い塊。見たことのある姿だ。
「マオ?」
「やぁ、久しぶり」
その声を聞いて、慌てて周りを見回す。誰にも見られていないことを確かめてから勢いをつけて抱き着いた。
「会いたかった!」
「僕もだよぉ。元気だった?」
「馬鹿。元気なわけないでしょ」
「そうなの? それは困ったなぁ」
「そんなこと思ってないくせに。マオのせいだよ」
よしよしと頭を撫でられて涙が溢れる。ずっと会いたかった。捕まっていないか、元気にしているかと気になって、心配で心配で堪らなかった。
「ごめんねぇ」
「誤魔化されないんだから……」
「うんうん。ごめんねぇ」
慰められていると次第に落ち着いてくる。マオの顔を見上げると、困った表情をしていてほんの少し嬉しかった。
「僕のことはもう知ってるよね? 怒らないのぉ?」
「マオはマオだよ。それに、私はマオの飼い主だから」
マオが犯罪者だと知っても、一度も怒りなど感じなかった。ただただ不安だっただけ。無事を確認できた今、もうこれ以上の望みはない。
私が泣き止んだことを知って、マオもほっとした様子を見せる。もたれかかっていた体を起こすと、マオの膝の上でその後、別れてからの話をする。マオは前と変わらない態度で耳を傾けてくれたけど、マオがどうしていたかは言おうとはしなかった。
「僕、そろそろ行くねぇ」
夕日が沈み始めたのを見て、マオは私を立ち上がらせると、乱れた制服を整えてくれる。最後に私の頭にぽんと手を乗せてから、立ち去ろうとする。その裾を慌てて捕まえる。そしてだいぶ上にある顔を覗き込み、念を押した。
「約束、忘れないでね?」
「約束?」
ぽかーんとした顔。これは完全に忘れていた表情。でも、マオとの関係を失くしたくない。
「大きくなったら夜の散歩に連れて行ってくれるって、言ったでしょ?」
「だーめ。依代ちゃんは良い子でいてくれなきゃねぇ」
「約束はどうしてくれるの?」
「うーん」
困った表情のマオは、頬を膨らませて、首を傾げる。そして思いついた、と手を打った。
「良い子にしてたらまた会いに来てあげるよぉ」
「……本当に? また来てくれる?」
「もっちろん。約束するよぉ」
差し出された小指をじっと見つめてから、おそるおそる手を差し出した。ぎゅっと強く指が絡まり、すぐに解かれる。
「待ってるから」
「うん。それじゃ元気でねぇ。依代ちゃん」
次会えるのはいつだろう。わからないけど、きちんと別れを言えて少しすっきりとした気持ち。寂しさはなくならなかったけど、頑張って笑顔を作り、手を振った。
「マオも。元気でね」
学校を出ると、この季節にしてはまだ早い雪が降っていた。クラスメイトが喜ぶ中を抜けて学校を出る。お母さんはもう仕事に行ってしまっただろうから、帰ったらご飯を作らなきゃ。慣れた道を足早に帰る。あと少しでマオを拾った場所だ。それを思い出すと未だに、出会ったときのことを思い出し胸が苦しくなる。早く通り過ぎようとぎゅっと手を握りしめ足を速めた。
「にゃおー」
「え……?」
足元から聞こえた声に、思わず足を止めた。道路の端に丸まる黒い塊。見たことのある姿だ。
「マオ?」
「やぁ、久しぶり」
その声を聞いて、慌てて周りを見回す。誰にも見られていないことを確かめてから勢いをつけて抱き着いた。
「会いたかった!」
「僕もだよぉ。元気だった?」
「馬鹿。元気なわけないでしょ」
「そうなの? それは困ったなぁ」
「そんなこと思ってないくせに。マオのせいだよ」
よしよしと頭を撫でられて涙が溢れる。ずっと会いたかった。捕まっていないか、元気にしているかと気になって、心配で心配で堪らなかった。
「ごめんねぇ」
「誤魔化されないんだから……」
「うんうん。ごめんねぇ」
慰められていると次第に落ち着いてくる。マオの顔を見上げると、困った表情をしていてほんの少し嬉しかった。
「僕のことはもう知ってるよね? 怒らないのぉ?」
「マオはマオだよ。それに、私はマオの飼い主だから」
マオが犯罪者だと知っても、一度も怒りなど感じなかった。ただただ不安だっただけ。無事を確認できた今、もうこれ以上の望みはない。
私が泣き止んだことを知って、マオもほっとした様子を見せる。もたれかかっていた体を起こすと、マオの膝の上でその後、別れてからの話をする。マオは前と変わらない態度で耳を傾けてくれたけど、マオがどうしていたかは言おうとはしなかった。
「僕、そろそろ行くねぇ」
夕日が沈み始めたのを見て、マオは私を立ち上がらせると、乱れた制服を整えてくれる。最後に私の頭にぽんと手を乗せてから、立ち去ろうとする。その裾を慌てて捕まえる。そしてだいぶ上にある顔を覗き込み、念を押した。
「約束、忘れないでね?」
「約束?」
ぽかーんとした顔。これは完全に忘れていた表情。でも、マオとの関係を失くしたくない。
「大きくなったら夜の散歩に連れて行ってくれるって、言ったでしょ?」
「だーめ。依代ちゃんは良い子でいてくれなきゃねぇ」
「約束はどうしてくれるの?」
「うーん」
困った表情のマオは、頬を膨らませて、首を傾げる。そして思いついた、と手を打った。
「良い子にしてたらまた会いに来てあげるよぉ」
「……本当に? また来てくれる?」
「もっちろん。約束するよぉ」
差し出された小指をじっと見つめてから、おそるおそる手を差し出した。ぎゅっと強く指が絡まり、すぐに解かれる。
「待ってるから」
「うん。それじゃ元気でねぇ。依代ちゃん」
次会えるのはいつだろう。わからないけど、きちんと別れを言えて少しすっきりとした気持ち。寂しさはなくならなかったけど、頑張って笑顔を作り、手を振った。
「マオも。元気でね」
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