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ギルド『夢の国』の可憐な一日
42 裏切られる行程
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澄み切った空気に少しずつその勢いを弱め始めた虫の声。
背の高い木々から差し込む僅かな灯りは、今が絶好の機であることを静かに告げていた。
そろそろか……。
男は背を預けていた大木からそっと離れては、緩やかに歩き出す。
合わせるように周囲から立ち上がった人影がそれを追従しては、更にその外側へと位置する多数の気配も呼応するように動き出す。
それだけで連携を確認するには十分だった。
お互いに一定の距離を保っては、暗闇から暗闇へと縫うようにして進む無音の集団。
まるで群れでありながら、一つの生命体のようだと男は思った。
徐々に速度を上げては、やがて視界の先へと見えてくる木々の切れ目。
この調子なら、日が昇る頃には片が付いているだろう。
――男はそう心の中で今後の段取りを気にし始めては、残された暗闇を一気に駆け抜けていく。
そして遮るもののなくなった灯りの下。
男を待ち受けていたのは、次なる暗闇だった。
何だ……?
明らかな異変を前に自然と足を止める無音の集団。
未だに沈黙を保ち続けているのは、ひとえに各々の練度の高さによるところが大きいだろう。
しかしそれだけ実力者揃いでありながら、誰一人としてその原因にたどり着けていないでいるというのがかえって現状の不気味さに拍車をかけている。
危険を承知で声を上げるべきか――。
男は一瞬悩むが、周囲の状況の変化はそれよりも早い。
羽音……?
反射的に辺りを見回しては、上空を見上げる輪郭のはっきりとしない人影に釣られて自ずとその答えにたどり着く。
男は上空を見上げたまま、今度は躊躇なく沈黙を破った。
「対空戦闘用意――」
息をするように鞘から引き抜かれる刃。
次第に大きくなる耳障りな羽音。
頭上を覆いつくす一面の黒はその濃度を高め続けている。
「術者を探せ。包囲を抜けた者は王都へ向かえ」
そして男が言い終えるのと同時――。
それはその場の全員を裏切るようにして、上空から落ちてきた。
背の高い木々から差し込む僅かな灯りは、今が絶好の機であることを静かに告げていた。
そろそろか……。
男は背を預けていた大木からそっと離れては、緩やかに歩き出す。
合わせるように周囲から立ち上がった人影がそれを追従しては、更にその外側へと位置する多数の気配も呼応するように動き出す。
それだけで連携を確認するには十分だった。
お互いに一定の距離を保っては、暗闇から暗闇へと縫うようにして進む無音の集団。
まるで群れでありながら、一つの生命体のようだと男は思った。
徐々に速度を上げては、やがて視界の先へと見えてくる木々の切れ目。
この調子なら、日が昇る頃には片が付いているだろう。
――男はそう心の中で今後の段取りを気にし始めては、残された暗闇を一気に駆け抜けていく。
そして遮るもののなくなった灯りの下。
男を待ち受けていたのは、次なる暗闇だった。
何だ……?
明らかな異変を前に自然と足を止める無音の集団。
未だに沈黙を保ち続けているのは、ひとえに各々の練度の高さによるところが大きいだろう。
しかしそれだけ実力者揃いでありながら、誰一人としてその原因にたどり着けていないでいるというのがかえって現状の不気味さに拍車をかけている。
危険を承知で声を上げるべきか――。
男は一瞬悩むが、周囲の状況の変化はそれよりも早い。
羽音……?
反射的に辺りを見回しては、上空を見上げる輪郭のはっきりとしない人影に釣られて自ずとその答えにたどり着く。
男は上空を見上げたまま、今度は躊躇なく沈黙を破った。
「対空戦闘用意――」
息をするように鞘から引き抜かれる刃。
次第に大きくなる耳障りな羽音。
頭上を覆いつくす一面の黒はその濃度を高め続けている。
「術者を探せ。包囲を抜けた者は王都へ向かえ」
そして男が言い終えるのと同時――。
それはその場の全員を裏切るようにして、上空から落ちてきた。
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