誓いは今も

ASOBIVA

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今も君を

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その国には
並び立つ巨大な風車と灯台がありました。
 
いつ建てられたものか、人々は知りません。
人よりもずっと長く、国を見つめてきた風車と灯台を
彼らは国の象徴として大事にいました。
 
ながい時を経て、ずっと愛されて
いつしか風車と灯台には意志が宿っておりました。
 
愛されたものは、自然と愛を返すもの。
彼らはそれぞれの役割を果たし、国の人々を守っておりました。
 
どんなに風が吹き荒れようと、風車は耐え
羽を回して、人々の家の灯りへと電気を送りました。
 
どんなに暗い夜でも、灯台は耐え
光を灯して、人々の舟を家路へと導きました。
 
ずっとふたりで人々を見守ろう。
風車と灯台が友人となった日、彼らは互いに誓いました。
 
変わらぬ日々がずっと続くものと
国の人々も、彼らも信じておりました。
 
ある日、大きな雷のような激しい光が大地を裂きました。
割れていく地面に、灯台だけが飲み込まれていきます。
 
風車はなにもできませんでした。
ただ、灯台が割れ目に消えていくのを見届けました。
 
幸いなことに、国の人々は誰ひとり被害にあってはいませんでした。
消えたのは、灯台のみ。
 
そうして、温かな灯りが国から消えました。
風車の羽は泣くようにきしみます。
 
さびしい。悲しい。
それでも、友との誓いを守ろう。
 
風車は風に耐え、羽を回し続けます。
 
地割れに飲まれた灯台は、気付けば小さな小島におりました。
落ちたときに壊れた箇所は修復された跡がありました。
 
地の底は暗く、海が黒々と広がっておりました。
海に浮かぶ小さな島には、地上に住むことの出来ない人々が
小さな村を作って暮らしておりました。
 
天から降ってきた贈り物、焦がれた灯り。
彼らは出来る限りの力で壊れた風車を建て直したのです。
 
小さな村の人々は、灯台を愛しました。
愛されて、一度消えた心を取り戻した灯台は、悲しみました。
 
愛してくれた国の人々と、友人の風車には
きっともう会えないでしょう。
 
寂しい。悲しい。
 
けれど灯台もまた誓いを守り、違う国の違う人々のために
光をともし続けました。
 
ふたりで人々を守ろう。
その誓いを、彼らは今も守っています。
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