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ルフトシュロス学院 小等部
入学早々クラス分けテスト~2~
しおりを挟む恙無く生徒達の召喚獣との契約が進んでいく中、事件は起きた。
零以外の人からすれば、Sクラス入り確定の事件であったが、零からすれば、零自身と泉莉に今後害になり得る可能性が高い人物との同クラスになるという事件だった。
「わぁ、グリフォンに青龍に白虎にフェンリルだよ!零、あの子達が同じクラスになるんだね」
「えぇ、そのようね。泉莉、あの方達にはあまり近付かないように致しましょう」
泉莉の契約獣である、フェニックスのリヒトも相当にレアな幻獣なのだが、幼い頃から傍にいたせいか感覚が麻痺しているようで続々と召喚された幻獣達に目を輝かせながら零へと話しかける。
そんな泉莉は可愛らしいが、零のオタ知識が全力で警鐘を鳴らしているので、貴族令嬢としての口調で泉莉に釘をさす。零の貴族令嬢口調の時の忠告などを無視したりすれば、どうなるかはすでに経験済みの泉莉は首を傾げながらも頷いた。
そんな泉莉の頭を撫でながらなんとなく(精神年齢的には余裕で)姉気分になりながら、幻獣を呼び出し契約した生徒達の事を説明する。
「彼らは4大国の王族よ。同年代に王族がいる事は夜会なんかで噂には聞いていたの。そして面倒な事に彼らは幼いながらに随分な美形です。つまり、同じクラスの同級生だからと気軽に話しかけたりすれば、他クラスの女子なんかに嫉妬されて面倒な事になりかねないのよ」
説明した後小さく舌打ちをして締めくくった零に、泉莉は少しだけ彼らの方を見た後、周りの女子生徒の様子を見て納得した。
「つまり、私達の害になるかもしれないんだね。わかったよ、自分からは関わらないようにする!」
(うん、今確実にフラグが立った気がするけど。まぁ回避できないのであればその都度対処すればいいだけの話だし。それに、私達なら大丈夫よね)
「えぇ、そうしてちょうだい。一応、彼らの名前は教えておくわね。名前も知らない世間知らずだなどと泉莉が馬鹿にされるのは気に食わないし。まず、グリフォンを契約獣にしたのがヒュムネ国の第三皇子に当たる逢坂蓮(おうさかれん)、青龍を契約獣にしたのがヴォール国の第一皇子にあたる東條悠馬(とうじょうゆうま)、白虎を契約獣にしたのがハイレン国の第二皇子に当たる雲雀駿(ひばりしゅん)、フェンリルを契約獣にしたのがタオフェ国の第一皇子の桐生蒼真(きりゅうそうま)ね。やっぱり彼らもSクラスになるのね」
一応説明し終わり、今後の事を考えて面倒事がないなどありえないだろうと予測が確信に変わり、溜息を禁じえない零は自分の名が呼ばれた事で、自分の番が来た事に気づき、泉莉の頭をもう一度撫でて召喚獣と契約を結ぶために術式の中心へ向かった。
なんとなくではあるが、零の中には嫌な予感が渦巻いていた。それもそうだろう、自身のチート具合は既に自覚しているのだ。無属性魔力保持者な上に、フェニックスを呼び出せるほどの魔力量を持つ泉莉よりも多い魔力量を持っている。そんなの、伝説級の幻獣おいでませと言っているようなものだ。零の心情を少しだけ読者の皆様にお伝えしよう。
正直、幻獣なんて勘弁してください。って感じなのよね。というか、貴族令嬢に転生して姫巫女の再来と呼ばれてる絶世の美少女の泉莉が幼馴染兼親友な時点である程度のチート能力は許容するどころか大歓迎ってなもんだけど、この全校生徒の目の前でのチート暴露はご遠慮したいってのよ!
貴族令嬢として生きて7年が経とうが、彼女は春香として生きていた頃と人格や性格自体はさほど変わっていないので、口調に関しては深く突っ込まないでいただければ幸いだ。
零が術式の中心に立った時、辺りに目を開けていられないほどの光が溢れた。
(あー、予想通りですね、わかります。わかりたくなかったなー)
ただ1人、零だけは光の中心にいながらも光に目を焼かれる事も無く光の中から此方に現れた存在達を眺めていた。
「「我らを呼び出したるは貴様か?」」
「そうね、まさか二体来るとは思っていなかったけれど」
「我は八咫烏、貴様は我との契約を求めるか?」
「我は白大蛇、貴様は我との契約を求めるか?」
「私は神月零、前世の記憶を持ち産まれし異端。貴方達との契約を望むわ」
光の中から現れたのは2体の幻獣だった。まっすぐに零の瞳を見つめながら問うその瞳は、理由はわからないが不安に揺れているのが見て取れた。
自らの種族を名乗った彼らに、零も偽り無く自分自身の事を語り、その不安に揺れる瞳を見つめながら答えた。
「「ならば、名を」」
再び異口同音に告げる二体に、零は躊躇うことなくその姿を目にした瞬間に頭に浮かんだ名を告げる。
「八咫烏、貴方には皇紀(こうき)と。白き大蛇、貴方には白雪(しらゆき)という名を与える。どうか、私と共にこの生を生きてくださいな」
二体、否、皇紀と白雪へ向かって手を差し伸べる零の表情は、泉莉へと向ける微笑みを湛えていた。
皇紀と白雪は、揃って頭を垂れ契約完了の言葉を紡ぐ。
「「我らに名を与えし我らが主、我らは主の願い、意志に従い契約する。我らは主と共に生き、主に忠誠を誓う。どうか、我らの誓いを許してほしい」」
「許す、私と共に生き、私と共に歩め。皇紀、白雪、これからよろしく頼む」
契約完了し、辺りを覆っていた光がゆっくりと消えていく。契約獣が二体もいる事に、周りの人々は驚くだろう。だが、きっと泉莉は零に対する態度を変えはしない。そう確信できるだけの時を、共に歩んできている。
零にとって大切な存在は、今のところは家族と泉莉と、泉莉の家族、そしてフェルタリアの領民だけである。大切な存在に否定されたりしなければ、他の人間が零に対してどのような感情を持とうと関係ないと言い切れるくらいには、零は捻くれていた。
「ぇっ?!」
「二体の幻獣?!」
「嘘、そんなの聞いたことないですわ!」
光が完全に晴れ、恐々と目を開けた視界に入り込んできたのは二体の幻獣と契約したであろう零の姿。周りの者は口々にあれこれと囁いているが、零にとってはどうでもいい。
泉莉の方へ歩み寄ろうとしたが、その前に泉莉がリヒトを再び呼び出して此方に駆け寄ってきた。
「はじめまして、私は泉莉と言います。零とは幼馴染兼親友だよ。この子は私の契約獣のリヒト、仲良くしてね」
「我は八咫烏の皇紀だ、我が主の親友殿、そしてリヒト殿。此方こそ人間界には不慣れでな、色々と教えてくれ」
「妾は白大蛇の白雪じゃ、我が主の親友様にリヒト様。皇紀共々、よしなにしておくれ」
「俺はフェニックスのリヒトだ。俺でわかることであれば何でも教えよう、我が主共々これからよろしく頼む」
そんな風に和やかに2人と三体で話していると、呆然としていた絢瑪が気を取り直して零にSクラス入りを告げた。
契約獣二体との契約は少しばかり想定外だったものの、まぁ概ねは想定内だったため零はその言葉に軽く頷いて皇紀と白雪に精霊界に戻っているか、別の姿を取り傍にいるかを聞く。
「では、我は普通の烏の姿で主の傍にいよう」
「妾は小さき白蛇の姿を取り傍にいようかの」
「え?契約獣って姿を変えられるの?」
白雪達は宣言通りの姿になり、白雪は零の首元に、皇紀は零の肩に留まった。その姿を見て驚いたのは泉莉だ。
泉莉の今更すぎる疑問に、白雪達は目を丸くし、零は頭痛を感じて手で押さえた。そのままの状態で、リヒトに目をやるとあからさまに目を逸らしているのが目に入り大きな溜息を吐いて説明する。
「一般的な契約獣は姿を変える事は出来ないけれど、幻獣クラスになれば自身の眷属の姿ならある程度自由に姿を変えれる筈よ。他の生徒が知らないのは別にいいけれど、4歳の頃から幻獣クラスの契約獣を持つ泉莉が何故知らないのかしらね?」
「い、いや、説明するのを忘れてました。というか、姿を変えれる事を俺自身忘れてました、ゴメンナサイ」
「それなら、もっと一緒にいればよかったね」
零のジト目に耐えきれなくなったリヒトは片言になりながら謝るが、そんなの関係ないと言わんばかりにマイペースにのほほんと泉莉が言うので、脱力してそうね、とだけ返した。
クラス分けの試験はこれにて終了。
零達は、Sクラス入りを果たした。
だが、問題も山積み。
はてさて、今後はどうなる事やら
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