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春

６．

告白して付き合って、それで何をすればいいのだろう。シンプルにそういう事が良く分からなかった。お手本になるような、恋愛のドラマとか漫画とかはあるけど、そういうのが自分たちに当てはまるとは私には思えなかった。

友達の中にはそういう恋愛をしている人たちもいる、本人たちが言っているからそうなんだろう、みたいだけど、私には無理だなと思っていた。少し憧れはあったけど。週末ごとにデートするなんてのを想像しなかったと言えば嘘になるけど、微妙に私と彼の予定が合わずに、日々、下校が一緒だけと言うので過ごしていた。

それが自分が思っていたよりも、ずっと楽しかった。話の中身は他愛も無く、友達に喋っているような内容だったんだけど、彼に話すと、それだけで特別に思えてしまった。何となく、そういうので、やっぱり、自分が彼の事を好きなんだなと思ってしまう。

残念なのが、放課後に一緒に勉強をしているのに、教えあえない事だった。私は割と英語が得意で、彼は苦手なので、教えてあげたいと思うのだけど、彼は私に教えられるのは嫌みたいだ。英語が苦手だからなのか、教えられるのが嫌いなのか、それとも私だからなのか、分からないけど、こうやると良いよと言うと、理屈を言って拒否する。それは単なる屁理屈で、理屈になっていないと思うけど、それを言うと、少し不機嫌になってしまう。

ふてくされている小学生の男の子みたいで、可愛いと少し思ったりするけど、あんまり駄々をこねられると今度は私が困ってしまう。そういう表情になると、急に彼がごめんと言って気まずくなる。だから、無理に教える事は止めた。もしかしたら、もっと上手に教える方法があるのかもしれない。そういうのを見つける事が出来たら、教えてあげようと思ったりした。

私は物理が苦手なので、教わりたいなと思ったけど、彼の説明は教科書に書いてあるよと言う一言で終わってしまう事がほとんどだった。頭の中の具体的な構造までは分からないけど、直感的に問題を解くタイプみたいだ。それが私には理解できない。

結局、それぞれ自分で勉強を進めた方が手っ取り早いという結論になった。こういうところ、割と割り切れるのは、お互いに理系だからなのかもしれないと少しだけ思った。一緒の空間にいるというだけで、少し緊張して、それが私には良い方向に影響したようだ。時間も集中して一時間とかだったから、良かったのかもしれない。この勉強の習慣が受験に役立ったことは間違いないと思う。