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春

８．

英語と言うのがどうにも苦手で好きになれなかった。何でと言われると分からないんだけど、理屈を理解できないからなのかなと思ったりする。言語だから、そういうものだと割り切って覚えるしかないところなんだけど、それが頭の中にスッと入って来ないのだ。主語によってｂｅ動詞が変わる理由と言うのから始まり、過去形、現在進行形、三人称、過去分詞、いろいろある。それを理屈で考えようとしている自分が嫌になる。日本語だって、そうじゃんと言われると、確かにその通りだと思う。だから、理屈じゃなくて、そういうものだと覚えないといけないし、それを感覚として理解する事が必要なんだと思う。それは分かる。でも、それが出来なかった。だから苦手だった。

でも、試験で出る以上、勉強として割り切って考えないといけないと思ったりする。そんな僕が一学期の英語の試験はそこそこ良い点を取る事が出来て驚いた。彼女との毎日の勉強の成果だろう。単純にそれだけしっかりと勉強した事もあるけど、彼女と一緒にと言うのが何だかんだで大きかった気がする。自信を持てるほど、出来た訳では無いのだけど、勉強すれば出来ないわけではないんだなと当たり前の事を感じられた事が嬉しかった。何より、僕の点数が上がった事を彼女が喜んでくれた事も嬉しかった。彼女には遠く及ばなかったけど、自分の事のように喜んでくれた。何となく分かるようになってくると、変な理屈を考える事が減った気がする。要は苦手な事を正当化するための理由を勝手に作っていただけなんだなと思う。

彼女の方はと言うと、僕のおかげで苦手な物理を克服と言う訳にはいかなかったようだ。点数を見せられて、言葉を失ってしまった。僕のせいで余計に苦手になってしまったのではと不安に思う。

ただ、彼女は割と冷静にその結果を受け止めていて、物理に関してはもう諦めると宣言していた。前からそうしようと考えていたみたいだけど、今回の結果を受けて決断する事にしたそうだ。赤点取ると、卒業に関わるのでまずいので、テスト前に最低限の勉強はするけど、それ以上はしないと決めたみたいだった。

僕も英語でそれをやりたかったけど、英語だと、そうはいかないし、そういう決断が僕に出来るとも思わなかった。実は凄い人なんじゃないかなと、割と真面目に彼女の事を思って、感心してしまった。その思い切りの良さは見習いたいと本気で思う。少しずつ彼女の事が気になっていくのを感じていた。