11 / 38
幕間1.
1.
しおりを挟む
運転席に座り、ふーっと息を吐く。まだ、運転に慣れているとは言えない、教習所で言われた手順で運転前の確認。こういうのをしないといけないと思ってしまうのが、いかにも初心者と言う感じだと思った。
「大丈夫。落ち着いて、ゆっくりやれば良い」
わざわざ、言葉にしてみる。それで少し落ち着いた。免許を取ってから、何度か運転はしたけど、本格的な遠出と言うのは初めてだった。道は確認した。ナビもあるから大丈夫なはずだ。とりあえず、彼の家までたどり着けるかが少し不安だ。
彼の家までは一人で行く。それが不安な理由のひとつだった。これまでは助手席に誰かを乗せていた。免許持っている父親が一緒の時は安心だったし、運転しない母親でも隣にいれば安心は出来た。でも、今回は一人だ。
その不安は、必ずしも運転の事だけでは無い。それも分かっている。でも、今はそれを考えない。考える余裕はなかった。その方が安心するというのも変な感じがした。
「良し」
そう気合をいれて言う。カギをさしてエンジンを掛ける。エンジンが掛かるとちょっと落ち着いた気分になる。もう一度、大きく息を吐いてアクセルに足を掛ける。
「良し」
もう一度そう言う。ゆっくりとアクセルを踏んで、車が動き出した。
待ち合わせの場所が僕の家と聞いて、最初は意味が良く分からなかった。迎えに行くからという話を聞いて、車と言うのがすぐに浮かんだ。受験が終わったら、免許を取りたいと言っていたのを思い出す。無事に取れたんだと思う。
もしかして、内緒にして驚かせたいという事なんだろうけど、バレバレな気もした。気が付かないふりをした方が良いんだろうか。だから、あまり深い事を尋ねる事はしなかった。道分かるのかなと思ったけど、運転するぐらいだから、大丈夫なんだろうと思う事にした。聞いたら、それこそ僕が気が付いている事がすぐに分かってしまうだろう。
でも、待ち合わせの時間になっても彼女は来ない。少し、心配になったら、電話が掛かってきた。
「近くのコンビニにいるんだけど…」
そう彼女は言う。ちょっとがっかりしたような、どこか不安そうな声に聞こえた。僕は短く
「分かった」
と言うと、そのコンビニに向かった。コンビニの駐車場には水色の小さな車が止まっていた。運転席に彼女の姿が見えた。
「驚かせようと思ったんだけどな」
上手くたどり着けなかった事が悔しそうに、でも、僕の顔を見て、少し安心したような表情をして彼女が言った。
「大丈夫。落ち着いて、ゆっくりやれば良い」
わざわざ、言葉にしてみる。それで少し落ち着いた。免許を取ってから、何度か運転はしたけど、本格的な遠出と言うのは初めてだった。道は確認した。ナビもあるから大丈夫なはずだ。とりあえず、彼の家までたどり着けるかが少し不安だ。
彼の家までは一人で行く。それが不安な理由のひとつだった。これまでは助手席に誰かを乗せていた。免許持っている父親が一緒の時は安心だったし、運転しない母親でも隣にいれば安心は出来た。でも、今回は一人だ。
その不安は、必ずしも運転の事だけでは無い。それも分かっている。でも、今はそれを考えない。考える余裕はなかった。その方が安心するというのも変な感じがした。
「良し」
そう気合をいれて言う。カギをさしてエンジンを掛ける。エンジンが掛かるとちょっと落ち着いた気分になる。もう一度、大きく息を吐いてアクセルに足を掛ける。
「良し」
もう一度そう言う。ゆっくりとアクセルを踏んで、車が動き出した。
待ち合わせの場所が僕の家と聞いて、最初は意味が良く分からなかった。迎えに行くからという話を聞いて、車と言うのがすぐに浮かんだ。受験が終わったら、免許を取りたいと言っていたのを思い出す。無事に取れたんだと思う。
もしかして、内緒にして驚かせたいという事なんだろうけど、バレバレな気もした。気が付かないふりをした方が良いんだろうか。だから、あまり深い事を尋ねる事はしなかった。道分かるのかなと思ったけど、運転するぐらいだから、大丈夫なんだろうと思う事にした。聞いたら、それこそ僕が気が付いている事がすぐに分かってしまうだろう。
でも、待ち合わせの時間になっても彼女は来ない。少し、心配になったら、電話が掛かってきた。
「近くのコンビニにいるんだけど…」
そう彼女は言う。ちょっとがっかりしたような、どこか不安そうな声に聞こえた。僕は短く
「分かった」
と言うと、そのコンビニに向かった。コンビニの駐車場には水色の小さな車が止まっていた。運転席に彼女の姿が見えた。
「驚かせようと思ったんだけどな」
上手くたどり着けなかった事が悔しそうに、でも、僕の顔を見て、少し安心したような表情をして彼女が言った。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる