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秋

２．

準備をしない学園祭と言うのは楽だけど、とても退屈だと思った。去年、一昨年の学園祭はひたすらに忙しかった記憶しかない。準備もそうだったけど、当日もだ。一応、時間で交代してという事にはなっていたけど、結局、ずっと教室にいた気がする。だから、他のクラスが何をやっていたのか、ほとんど記憶にない。

今年は全く逆になりそうだ。教室でやる事はない。カラオケ大会となっているけど、具体的に何をやるのかは決まっていない。飾りつけとかもしないので、準備の必要も無かった。しかも、歌うのは歌いたい人が勝手に歌うという事になった。誰が上手かったという順位付けなんてのもしないみたいだ。そうなると、カラオケ大会でも何でもない気がするけど、題目としてはカラオケ大会だった。

ちなみに僕は歌う事自体は嫌いではないけど、人前では遠慮したいタイプだ。カラオケボックスなんてのにも一回か二回ぐらい、しかも、嫌々でしか行ったことがない。

準備の日は、業者の人が機材を持って来た時に、ちょっと興味があって見てたけど、慣れた手つきで手際よくセットするのを見るのは大して面白くも無かった。一応、マイクテストなんてやってたけど、それだけだ。準備の日なので、余り大っぴらに歌う事も出来なかった。歌いたくてうずうずしているような人もいなくもなかったが、どちらかと言うと、冷めた感じだった。

他の三年生のクラスはどうなんだろうと思ったら、僕たちと同じ様な手抜きのところが半分、規模は小さいけど一応何かをやっているのが四分の一、そして、残りの四分の一が去年までと同じ様にがっつりと準備しているという感じだった。

がっつりとやろうとしているところは、三年間の集大成と言う事で、去年より張り切っている感じだったけど、傍目で見ている分には楽しそうだなと思ってしまった。きっと、自分たちがやっていたら不平不満の嵐だろう。そういうのはきっとあるんだと思うけど、外からはあまり見られない。

去年のうちのクラスも最後の方は大変過ぎて、バラバラだったなと少し思う。今年がこんな感じになっている理由のひとつでもある。そう言えば、その時、彼女がいたという事に今更ながら気が付いた。そうか、そういう楽しみ方をしていたのかもしれないと、今思った。今年は出来ない事だなと思う。せっかくなら、他のクラスのを一緒に周ってみるのも良いかもしれない。彼女がＯＫしてくれるかは分からないけど、今年の学園祭を楽しむにはそれしかないような気がしてきた。思いついてみると、なかなか良い思い付きかもしれないと思った。