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秋

１．

二学期になると学園祭がすぐに始まる。一年生、二年生の時は、その準備のために夏休みに高校に行ったりしていたけど、三年生では受験勉強で忙しいだろうという事で、あんまり張り切って準備と言う事にはならなかった。私は忙しかったので、それが正しかったと思うけど、みんながみんな受験勉強で忙しかった訳でも無いようで、中には準備していた方が良かったという人もいた。

今年の学園祭は、カラオケ大会をやるみたいだ。何でみたいかと、他人行儀な事を言うかと言うと、私はほとんど関わっていないからだ。と言うか、実行委員の何人か以外は詳細も把握していないのではと思う。カラオケ大会と銘打っても、大したことはしない。大々的に参加者を募集してとか、仮装して盛り上げてとかそういう事は全く予定していない。ただ機材を借りてきてやるだけだ。

クラス内でのイベントにして、好きな人が勝手に歌うだけだ。最初は全員参加でと盛り上がりを見せていた瞬間もあったけど、徐々にトーンダウンしている。誰も歌わないのでは何て心配もしたくなる。私は全く歌う気はないのでホッとするけど。

前年の事を考えると、呆れるほど手抜きだと思うけど、そう決まってしまっては仕方ない。寂しく感じる部分が無いとは言えないけど、私も積極的に今年の学園祭に挑もうと思っていた訳でもないので、決定には納得はしていた。実際、夏期講習があったので、多分、準備で学校に来てくれと言われても無理だったと思う。

でも、準備期間に充てられた日をただ何となく暇な時間として過ごしているのを思うと、とても勿体ない気もしていた。こういうのを出来るのは高校生ぐらいだよな。来年は卒業していないんだなんて事も思ってしまった。

そう言えば、彼の事が気になったきっかけが学園祭の準備だったなと思うと、何となく切なく感じてしまう。もし、去年、今年の学園祭と同じ様な感じだったら、彼の事が気にはならなかったかもしれない。そうなると、今の私と彼の関係も無くなる事になる。想像も出来ないけど、想像すると、ちょっと怖くなる。実際は、無ければ無いで、それなりの日々を過ごしていたのだとは思うけど、あんまり考えたくない状況だ。

そんな風に思うと、去年はそれなりに大変で良かったなと思ったりもする。大変さを誤魔化して思い出を美化している気もしたけど、そう思ったのは事実だ。そう考えると、彼との思い出として、今年の学園祭の事が残らないのは、寂しいような気もしていた。