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秋

４．

学園祭は土曜日と日曜日の二日間で行われる。まず、一番最初に体育館で開会式が行われる。校長先生のありがたいお話を聞き、実行委員会の会長が張り切って挨拶してから始まる。

土曜日の午前中は一般には開放されない。生徒だけが自由に見る事が出来る時間帯になっている。ただし、準備が間に合っていないクラスや当日の準備をしないといけないクラスもあり、そういうクラスはその時間帯を利用して準備をする。万全の準備をしているはずでも、この時間帯はドタバタするというのが、去年、一昨年の経験だったけど、今年はそういう事はない。

一般の人が来る前に見に行った方が良いのかなと友達と話していたけど、バタバタしている様子を見ると、控えた方が良い気になる。

午後になると、一般の人が入ってくる。ただし、そこまで大勢の人が来るわけではない。大体が生徒の家族で、後は近所に住む小学生とか中学生とかがメインだ。この時間帯に回るのが丁度良いと思った。まだ、お客さんに慣れていないところもあって、手間取っているところもあるけど、お客さんがそんなにはいないので、やたらと親切にしてもらえた。

二日目に入ると、外からのお客さんは一気に増える。来るのはやっぱり生徒の家族が多いけど、そうなると、そのお客さんが優先で、扱いがちょっと雑になる。知っている子がいれば、融通してもらえる事もあるけど、そうじゃないと、同じ学校の生徒には構ってられないという雰囲気を感じてしまう。

体育館は開会式の後は、文化部の発表や生徒のバンド演奏などがある。友達が行きたいと言っていたバンドは、二日目のお昼と言う時間帯だった。他のクラスを回るのも少し飽きてきたので、丁度、良かった。学校で一番格好良いと評判の男子がいるバンドでお客さんは多いのかなと思っていたけど、全然人はいなかった。どうやら、学校で一番格好良いと言っているのは、友達の評価だったらしい。

タイトルは分からなかったけど、どっかで聞いた事のある曲だった。確か、ＣＭかなんかで流れていたはずだ。友達は一緒に口ずさんでいた。歌は下手では無いのかもしれないけど、ただ大きな声だったという印象しか残らなかった。

一生懸命頑張って格好つけている姿は何となく微笑ましく感じてしまう。多分、本人とかその周りにいる人、例えば、友達とかに言ったら怒られそうな感想だけど、そう感じてしまった。あまり集中できなかったのは、バンドの演奏の質だけが理由では無かった。午後になったら、彼と一緒に学園祭を回る約束をしているからだった。