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秋

５．

日曜の午後なら、一緒に回れると彼女に言われた。どこを回るのかは彼女次第だけど、バンドを一緒に見に行こうと言われたらどうしようかなと思ったりした。変に冷静なふりして見るのも格好悪い気がするし、かと言って、盛り上がれるかと言われると自信は無かった。

彼女と違い僕は他のクラスの出し物を見学する事は無かった。他のクラスの知り合いに、暇だからサクラとして来てくれなんて頼まれたけど、丁重にお断りした。クラスのカラオケ大会と言うのは全く盛り上がりに欠けていて、最初に誰かが一曲、二曲歌った後は、誰も歌っていなかった。

普段、クラスの盛り上げ役を演じているクラスメイトは、他のクラスの出し物に興味が向いたらしく、そちらで忙しく、そういうことを好まない僕のような生徒だけが教室にいて、そういう人たちはカラオケを積極的にやるという雰囲気は無かった。

そんな退屈な時間を過ごして、ようやく彼女と学園祭を回る時間になった。何か変にそわそわした気分になる。待ち合わせは図書室。それが僕と彼女には自然な待ち合わせ場所だった気がする。丁度、時間になるように向かうと、途中で彼女と会った。どうやら、体育館の方から来たみたいだった。

バンドを見に行ってたのと聞くと、うんと答える。格好良かった？と聞きたかったけど、ストレートには聞けず、どうだったと聞く。何か一生懸命だったよと彼女が言う。その言い方を聞いて、何か安心する。勝手に気になっていた自分が馬鹿みたいだなと思う。どこ行く？と聞くと、うーんと言う。一応、全てでは無いけど、一通り回ったみたいだった。僕自身は興味があるところは無かったので、どうでも良かったけど、彼女がもう一回、回ると言ってきた。僕に異論はなかった。

どこか興味があるところがあったら言ってねと言われたので、分かったと返事したけど、そういうのがあるのかは疑問だった。でも、わざわざ反論する事はない。学校を彼女と二人で堂々と歩くというのが、意外と新鮮な気がした。学園祭と言う雰囲気が許してくれる事なのかもしれない。彼女はクラス以外にも知り合いが多いようで、廊下ですれ違う人に声を掛けられたりしていた。そういう時、どういう態度を取って良いのか、少し迷う。他人行儀なふりをするのも変だし、変にべたべたは出来ない。

何となくチラッと見られている気がして、この人が彼氏かと値踏みされている気もした。そこら辺は多分、気にしすぎているところだと思うけど、やっぱり、気にはなってしまう。