syn...

秋

６．

元々、時間は少なかったんだけど、時間はあっという間に過ぎてしまった。ダラダラとしゃべりながら、回っていたら、それだけで楽しかった。結局、お化け屋敷をやっているところにひとつ入っただけだった。教室に作られたそのお化け屋敷は中が暗くて、ちょっと怖いかなと思ったけど、それは入り口だけだった。何となく人がいる気配と言うのは、まるわかりで、しかも、人が来ているよとか、タイミング考えてとか、裏側の声も聞こえてきてしまって興ざめだった。

何でお化け屋敷だったのか、目に入ったからというのが一番分かりやすい理由だったけど、後で考えれば、夏休みの遊園地のお化け屋敷を思い出したのかもしれない。でも、怖くないお化け屋敷はその再現にはならず、私と彼はずっと苦笑いのまま進んで行った。最後に出てきたお化けには少し驚いたけど、びっくりしたというよりは声が大きかったので無理矢理驚かされたという感じだった。

気が付くとクラスの集合時間だった。基本的に片づけは翌日になっていたけど、今日中に片づけてしまえば、明日はやる事が無くなるので、学校に来なくて良くなる。だから、学園祭が終わるまでに片づけてしまおうというのが、今年のうちのクラスだった。その片づけの時間になったのだ。

私と彼が教室に戻ると、人はほとんどいなかった。実行委員の子はいたけど、後は二、三人と言う感じだった。一応、全員集まるはずになっていたのだけど、きっとやる事が無いだろうという事で、集まりが悪くなっているようだった。実行委員の子がぶつぶつと文句を言っている中、とっとと片付けようと言ったのが彼だった。なんだろう。なんか、懐かしい姿を見た気がする。その声をきっかけにその場にいた人たちが動き始める。私も手伝う。

みんなでやれば、すぐに終わる事でも、これだけの人数だとそれなりに時間は掛かる。業者の人が取りに来たら、すぐに持っていってもらえるように機材を片づけて、机を元に並べる。作業としてはそれだけなんだけど、人数分の机を移動させるのは大変だ。

その間、彼は黙々と作業する。でも、無理にやらされているとか、そんな感じを受けないというのが不思議なところだ。それにみんな、とは言っても、人数は少ないけど、引っ張られる。去年の学園祭の準備のときみたいだなと思った。

時間が経つと、一人二人と、戻って来て、片づけのペースが上がる。そうなると、実行委員の子が張り切って指示を与える。たぶん、彼がきっかけでこんなに順調に片づけが出来ているという事に、誰も気が付いていないんだろうなと思う。そういう姿を見て、彼の事が気になった事を思い出す。そして、それを自分だけが知っているのが嬉しくなる。そして、それが、今年の学園祭の私の一番の思い出になった。