夢ノコリ

hachijam

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旅行の前の日の夢

13.

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「…。一応、聞くけど、それって本当の話だよな?」

三ヶ嶋君が僕も言いたかった事を、直接、充に聞いた。

「そう、そこなんだよ」

と何だか自信満々に答える。

「俺も最初は夢かと思ったよ。ほっぺたをつねってみたくなったよ」

「つねったの?」

一応、聞いてみる。

「いや、つねらなかった。だって、夢だとは思わなかったし、夢だったら目が覚めて悲しいだろ、だからつねらなかった」

「じゃあ、夢だったんじゃないの?」

と三ヶ嶋君は半信半疑だった。

「いやいやいや、さすがにそれは無いよ。あれが夢だったら、今も夢の中という事だよ。分かるかね、三ヶ嶋君」

少しふざけた口調で充が言う。何て返してやろうと思ったけど、

「で、どうなったの?」

と三ヶ嶋君が言った。さすがにそこまで充が言うからには夢ではないのだろう。勘違いの可能性もあるのではと思いたかったけど、自信満々の充の姿を見ると、強く否定するのも負け惜しみみたいで嫌だった。

「いや、何かどう答えていいのか分からなくて…」

とニヤニヤしながらも何だか歯切れが悪かった。特別にどうこうという訳ではなく、昨日はおしまいになったらしい。だから、付き合う事になるかもしれないというちょっと曖昧な感じの返事だったという事のようだ。

「本当だと思う?」

「さすがに夢とか作り話とかではないと思うけど」

充の前だけど構わず、三ヶ嶋君と僕とで、その話を吟味する。

「一応、もう一回だけ確認するけど、妄想とか、冗談とかではないよな?」

「今だったら、まだそれで許してあげるよ」

ちょっと強めに言ってみるけど、充はびくともしない。むしろ、ちょっと憐みの表情になっていた。

「羨ましいのは分かるけど、そこまで疑われてもさ…」

「…」

「…」

これ以上、言うと分かりやすく負け惜しみになってしまうとじっと我慢した。

「でさ、こういう場合、改めて俺の方から告白した方が良いの?」

「知らん」

三ヶ嶋君が冷たく即答する。

「そうか、相談する相手が違うか。どうしたら良いんだろうな」

勝ち誇ったように充は続けた。

「…」

「…」

僕と三ヶ嶋君は何も答えられず。充の方を見ていた。何だろう、この悔しい感じ。単に充の態度にイラッと来ていただけなんだろうか。それも当然あったと思ったけど、やっぱり、羨ましいとか、そういう気持ちもあったのかなと思ったりする。

その後も話は続いたけど、なんか同じことの繰り返しみたいな感じだった。何度聞いても現実感がある話ではない気がする。そう思い込もうとしただけかもしれないが…。結局、その日、充から聞きたいと思った事は聞けたけど、何だかモヤモヤした気分と言うのは残り続けてしまった。
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