夢ノコリ

hachijam

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カギを失くした夢

5.

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おはようと挨拶されて、おはようと挨拶を返した。

「なんだか眠そうな顔しているね」

赤岡さんに言われる。

「そう?」

思ってもいなかったことを言われてちょっとたじろぐ。

「不機嫌そうな顔してるもん」

「…」

その指摘は当たっている気がして、苦笑いしてしまった。

(言うべきか、言わざるべきか…)

そう考えていて、次の言葉が出て来なかった。

「何か言いたそうな顔してる」

僕の頭のどっかから声が漏れているじゃないかと思ってしまった。

「そうかな…」

否定も肯定も出来なかった。

「分かんないけど、そんな風に見えるよ」

と言われる。何か全て見透かされているようで、変に誤魔化さない方が良いかもしれないと思った。何だろう。赤岡さんなら、変な誤解もしないだろうとも思った。僕は迷いつつも、話をした方が良いのかなと思い始めていた。どう話すか、少し考えて、ようやく言葉を発した。

「あのさ。充って覚えてる?」

「ええっと…。確か、一番、しゃべっていた人だよね。確か、小浜君だっけ」

「そうそう。水族館にはいなくて、カレーの時にいた奴」

「はいはい。分かる分かる」

話し始めると何だかんだで会話が続いていく。

「その充がさ。確か、沢島さんって言ったよね。カレーの時にいて、水族館の時にはいなかった子」

「うんうん」

「その子と付き合うかもしれないみたいな話をしていてさ…」

「へぇー。そうなんだー」

知らなかったのか、そんな風に言う。でも、特別に驚いているような感じだった。

「あれ知らなかった?」

「うーん。どうだろう。知ってるような知らないような」

何とも曖昧な答えだった。何か、からかわれている気がして、ちょっと不機嫌になってしまった。ふと朝見た夢の事を思い出して、思わずため息をついてしまった。

「あれ、どうしたの?大丈夫?」

突然のため息に驚いたみたいで、心配したように尋ねてきた。

「ううん。何でも無い。大丈夫、大丈夫」

そう言いながら、自分の気持ちを落ち着かせた。そんなにムキになる事では無い。落ち着けば、すぐにそう思える。夢のような態度はしたくないと思う。

「どう言ったら良いのか、良く分からないんだけど、突然の展開で驚いて、頭が混乱しっ放しです」

表現として伝わったのか、分からないけど、今の自分の心境を正直に告げてみた。

「あーなるほど。分かんないけど、分かる気がする」

赤岡さんの言葉も意味不明だったけど、何となく伝わったのかなとは思った。

「そうか。告白したんだ。やっぱり、行動が早い。侮れないね」

赤岡さんはそう言うと、一人で頷いた。
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