夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
125 / 275
カギを失くした夢

7.

しおりを挟む
「やっぱり、友達の事は心配?」

僕のちょっとホッとした気持ちに気づいたのか、赤岡さんにそう言われた。言われてみて、僕は心配していたのだろうかと少し思う。あんまり大声で言うような事ではない気もするけど、どちらかと言うと、羨ましいとか、嫉妬している気持ちの方が大きいと思っていたので、そう言われて、自分の気持ちがどうだったんだろうと思った。

「うーん。どうなんだろう。心配なのかな?」

誰に聞こうとしているのか分からず、そう言う。

「私が言うのも何なんだけど、良く分からない子だからね」

「そんなことないでしょ」

と、一応、言っておく。赤岡さんの友達だから、悪い人ではないだろうという気持ちはあったけど、どういう人なのか詳しくは分からなかったというのは正直なところだ。充が妄想しているという可能性の他に、充が騙されているのではと思っていた部分があったのだろうか。そんな事を言われてみて思った。

「でも、悪い子じゃないよ。自分の気持ちに素直な子だから」

そう言われると、確かに行動としては分かりやすいのかもしれないと思う。自分だったらどうするだろう。ひとめぼれした相手がいたとして、その気持ちをすぐに伝えるだろうか。そもそもひとめぼれするのだろうか。見た目で可愛いとか、綺麗だとか思う事は確かにあるけど、それがイコール好きになるという事に、僕の中では結びつかない気もしていた。でも、ひとめぼれしたら、そういうことを全てぶち壊して行動したくなるのかもしれないと思った。そういう相手に出会っていないだけだろうか。そんな事を少し思った。

「で、小浜君はなんて言っているの?」

「なんか、浮かれている感じです」

僕の言い方にちょっと笑う。

「そうなんだ。想像できる気もするけど」

「確かに、充も分かりやすいから、多分、想像通りだよ」

僕もちょっとおかしそうに笑った。

「大丈夫なんじゃない。そういう二人なら」

少し真面目な顔して赤岡さんが言った。

「そうなのかな」

「そうそう。周りがちょっかい出さないで成り行きを見守っていた方が良いタイプだと思うよ」

「そんなものかな」

「熱しやすく冷めやすいという言い方したら、怒られるかもしれないけど、ちょっと落ち着いたら大丈夫なんじゃない?」

確かにそうかもしれない。周囲が騒ぐと喜んで騒ぎそうなタイプだ。

「それに…」

「それに?」

赤岡さんは、少し意地悪そうに笑って言った。

「人の恋愛話してるだけじゃ面白くないでしょ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...